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2005年10月15日 (土)

ハテナ~落語『茶金』と微生物の名

有名な落語に『茶金』がある。大抵の方が知っておられる品の良い作品である。念のために軽く触れておくと、次のようなお話である。

京の綾小路に、茶屋金兵衛という道具の鑑定には目の利いた骨董屋があった。彼が目をつけたり、「はてな」と首をかしげたりした品物だったら、たちまち百両の値打ちがついた。

ある日、彼が清水の茶店で休んでお茶をすすっていると、この茶碗をひねりまわして、「はてな」を6回繰り返して言った。これを近くで見ていた、道楽で失敗した借金のある江戸から流れてきた行商の油屋が、目をつけて、茶店のおやじと一悶着しながら、十両でせしめ、茶屋金兵衛に売りつけようとするところから物語りは始まる。

結局、金兵衛は値打ちがないと知りながら、油屋に誤解させたことを考慮して、十両貸す。油屋はものを置いていく。実は、この茶碗はどこにも傷一つがないのに、水を注げば水が漏れるので、「はてな」と言ったのだった。折角だから、歌を詠んでおいた。

 『清水の音羽の滝のおとしてや 

    茶碗のひびにもりの下露』

その後、この話が近衛公、さらには帝まで伝わり、それぞれ歌が詠まれ(下記参考参照)、品物に箔がついていく。帝に「波天奈」と箱書きされ、由緒あるものになった。それを聞きつけた天王寺屋が一千両で買い求めた。茶屋金兵衛は品物を持ち込んだ油屋に儲けの中から百両与える。それで調子に乗った油屋は更に欲を出して、水の漏れる水がめを持ち込んでくるというお話。

骨董品は持つ人によって価値が出るということでしょうか。それに、作品を包むもの、箱、箱書き、風呂敷などに加えて、特別な人の「命名」や「歌」が付加価値をつけるんでしょうね。

ところで、日本の学者が半分動物、半分植物の不思議な微生物を発見し、仮に「ハテナ」と命名されたそうだ。他の微生物を食べる動物の一種だが、藻類の葉緑体を取り込むと捕食装置が退化し、植物として生き、最終的には植物になる。米科学誌サイエンスに発表されたようだが、このことは南方熊楠が既に指摘していたことではないか。発表内容を確認していないので何とも言えないが、彼の研究を更に進めたものかもしれない。

そして、人間もある物質を摂り続けると植物になることがあるのだろうか。学問の骨董品(熊楠の研究は安物の骨董品ではないが)にも、更なる「ハテナ」の箔付を期待したいものである。ただし、学者の方々には、もっと文化の匂いのある研究をお願いしたいものである。いや、そんなことを期待するのは無理なのだろうか。

ちなみに、和歌の素養のない流風には骨董屋はできそうにない。

(参考) 記載順は詠まれた順です。

近衛公の歌

『音なくて滴り落つる清水焼、はて名の高き茶碗なりけり』

帝の歌

『森いでし岩間の清水流れきて、世に伝はりて涯なかるらん』

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