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2006年9月 3日 (日)

幼馴染の恋

流風の幼馴染には、女の子は、あまりいなかったので、成長して、幼馴染の恋に陥ることはなかった。大体は、周囲は野郎ばかりだったのだ。だから淡い恋心を持ったのは、学校に行きだしてからである。また、一般に幼馴染の恋は成立しにくいと言われている。

さて、日本の古典で、幼馴染の恋の典型といえば、矢張り、あの物語だろうか。遠い昔、確か、中学校で習った気がする。すなわち、能にも題材となっている『伊勢物語』の「筒井筒」の話である。ちなみに、能の題は『井筒』。

 筒井筒 いづつにかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに (業平)

 くらべこし 振分髪も 肩すぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき  (有常の娘、通称 井筒姫)

在原業平と紀有常の娘の相聞歌である。彼らは幼馴染で、今でもそうだろうが、子供の頃は普通にじゃれあっても、それなりの年齢になれば、異性として意識しだす。そして距離を置くようになる。だが、ある日、気づいて、気持ちは変っていないよという、この歌を交わして結婚している。つまり業平のプロポーズに対して、それを待っていた井筒姫はそれを受けているのだ。

しかしながら、結婚生活は順調ではなく、井筒姫は、プレイボーイの業平の浮気に苦しみながらも、彼を信じ続け、彼も彼女の純情な心情にほだされ、一旦、よりを戻す。彼が彼女と、よりを戻そうとしたのが、井筒姫の次の歌だ。落語のネタ (大阪では『口合小町』、東京では『洒落小町』)にもなっている。

 風吹けば 沖つ白波 たつた山 夜半にや君が ひとりこゆらん

しかし、業平の浮気の病気は治らず、井筒姫に寂しい思いをさせ続け、さすがに、彼女は辛抱できなくなって、他の男との結婚を考える。しかし、業平が、言い寄ってくると、忘れられない。女性にとって、最初の男が大事なのかもしれない。拒みながらも、好きな感情は抑えられず、追いかけるが、追いつかず、息絶える。

だが業平が、浮気をしながらも、真に好きだったのは、井筒姫だけかもしれない。彼は浮気相手を捨て、結果的に彼女等も苦しめている。業平の所業は男の性だが、男女の想いの中には隔たりがある。男女の関係は、感情面では、大きな溝が有り、基本的に今もあまり変わらないということかもしれない。

ただ別の角度から見ると、井筒姫にずっと思い続けられるのは、男の本望かもしれないが、能の『井筒』となり、死後何百年も慕い続けられたら、少し怨念がこもっており怖ろしい。男の遊びも、程ほどにしないとね。

今回は、古い記憶をたどりながら、復習の意味で整理してみた(笑)。う~ん、それにしても考えさせられるね。流風には、そんな経験ないけど。『伊勢物語』は何回読み返しても面白い。渡辺淳一も参考にしているのかな。現代の恋愛小説の原点があるように思う。

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