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2006年11月 4日 (土)

谷崎潤一郎の居宅保存問題

谷崎潤一郎と言えば、『細雪』が有名だが、中学生の頃、『春琴抄』を読んで、変った作風だと思ったことがある。そして、父が持っていた『卍』を内容を知らず、読んで、子供が読んだらまずいだろうな、と子供心に思った。ちょっと刺激的な内容で、大人の世界を垣間見たような気がした。その後も、ちらちら隠れて読んでいた。厳格な父は、少しでも、物を動かすと、変化を察知していたから、薄々知っていたと思う。

ところで、彼は、作家活動のためというか、恋愛と結婚のたびに、当然といえば当然だが、引越し魔と言われるほど、住まいを変えている。もちろん作家活動のためには、家の他に、旅館なども使っている。その居宅や作品の舞台になった旅館などの保存が危機に面している。

まず、彼の初めての持ち家で彼自身の設計である旧邸・鎖瀾閣(さらんかく、神戸市東灘区岡本7丁目)は、震災後、崩れ落ちたこともあり、取り壊されることになっていた。しかし、谷崎研究家の、たつみ都志氏を中心に保存を訴えていた。幸いにも、震災前に、詳細な図面や写真を撮っていたことが判明し、伊丹市の建設業者、則岡工業が移築保存を提案した。そこで、神戸市も岡本梅林公園内に土地を提供し、そこに移築することになったようだ。

建設費は約5600万円必要だが、則岡工業が半額で工事を請け負ったようだ。だが、復元を目指すNPO法人「谷崎文学友の会」(たつみ都志理事長)への募金は、遅々として集まらず、現在、1600万円程度しか集まっていない。そのため、再建は延び延びになっているようだ。

こういった建築遺産は、街づくりのためには、残した方がいいとは思うが、理解を得るには、なかなか難しいようである。募金をすると、それなりにメリットがあるようなので、関心の向きは、下記参考のホームページ、谷崎旧邸「鎖瀾閣」の「谷崎ひまわりファンド」を参考にして欲しい。

次に、明治12年創業で、昭和2年に西宮市甲陽園に開業した、あの「細雪」ゆかりの西宮の料理旅館「播半」後に高層マンションを建てる計画があるらしい。播半は老舗旅館だったが、長引く不況で、経営が悪化し、昨年の九月に廃業している。それを大阪市内の不動産会社が持っているらしい。それを東京の不動産会社が高層マンションを計画しているようだ。

何と言っても、あの播半の敷地は大きかった。約33,000㎡の敷地に、本館や別館、庭園などがあった。昭和天皇も宿泊されたという。そのような施設が、簡単にマンションにされるらしい。とても高層マンションを建てるような地区とは思えないが、西宮市は高層マンションを建てられる地区としているようだ。

何か作為が感じられるが、経済の流れからしたら、仕方ないのかもしれない。しかし、惜しまれる。なんとか残すことはできないものか。日本の文化を残す発想は不動産会社にはないのだろうか。ベッジファンドでもなんでもいいから買い取って保存してくれないものか。

谷崎も、日本の風情がなくなるのを地下で嘆いているかもしれない。でも、彼を嘆かさないように、私達もできることから、しないといけないのかもしれない。そして民間不動産会社・建設業者も、日本文化を残すような方面にもっと関心を持ってもらいたいものだ。そういう活動が長い目で見れば、営業活動につながると思うのだが。

 

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