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2006年12月24日 (日)

謡曲『葵上』から『野宮』へ

先日取り上げた『葵上』と関係が深い謡曲が、今回取り上げる『野宮』である。ただし、未だに鑑賞したことはない。よって、下読みに近い。源氏物語の『葵上』が上巻とすれば、『野宮』は、下巻に相当するものだろう。こちらの方が、時代が下って、六条御息所も、謡曲『葵上』より、若干落ち着きを取り戻した時の場合といえようか。ただ、『葵上』ほどには人気がないようだ。

『葵上』では触れなかったが、六条御息所は美人で教養ある女性である。ただ少々鼻につく欠点がある。現代でも、エリートの女性にも同様なことが言えますよね。

男としては、一度アプローチしてみたいが、若干怖くて敬遠気味という感じ。それに、いつも自分が自分がという意識があり、疲れるし、男としても主導権が握れないからね。男に主導権を握らせるフリだけでもしてくれたらいいのだが、彼女達は、高いプライドから、そういうことはできないようだ。

そういうことで、こういう女性に、ちょっと、ちょっかいを出すととんでもないことになる(笑)。ちょうど、これが光源氏と六条御息所の関係と見ればわかりやすい。ちょっと流風の偏見が入っているかな。

余談はさて置き、さて、この題名の野宮とは、斎宮の赴任前の精進潔斎の場所のことである。六条御息所の娘は斎宮になる。斎宮は伊勢神宮に仕える未婚の皇女のことで、彼女は後、実際は光源氏の子供である冷泉院の中宮になる。

この謡曲のあらすじを整理すると、今回は、読み込みが足らず、少し自信がないが、次のようになった。例によって、若干茶化しながら記す。

①ある秋も深まった夕暮れ、旅の僧が、嵯峨野の黒木の鳥居に小柴垣の趣き深い野宮を訪れる。ここは、昔、御息所が、光源氏との愛を失い、恋仲を清算すべく、斎宮になる娘に連れ添って野宮に籠ったところだった。

要するに、先程説明したように、光源氏は、素直に愛してくれない御息所を見切った。でも、御息所はなぜ自分が見切られたのかわかっていない。何でそんなことわからへんのや。わがまま放題に育ってるからやで。まあ、わがまましたい放題は光源氏もだけど。その自分のどうしようもない感情との葛藤を整理するため、娘と共に野宮に籠ったんや。

②忽然と、一人の里女が現れ、僧に問いかける。そして、今日は9月7日で、故事を偲び、静かに神事を行う日なので、早く帰るようにと言う。僧が、不思議なことと思って尋ねると、その女は、野宮に籠った日々や、光源氏が世を忍んでいた六条御息所を訪れた日だと言う。そして彼が訪問後、伊勢に下向したことを語る。

そういうと女性は、何かの記念日はよく覚えているんや。男にすれば、どうでもいいのに、それを忘れていたりすると、大変なことになる。なぜ、ああいう事細かなことを覚えられるのかようわからん。未だに不可思議。

③そして、女は、自分こそ、その御息所の亡霊だと名乗り、鳥居の陰に姿を消す。

名乗るんやったら、はよ名乗りや。ややこしい。

④僧は、来合わせた里人に、六条御息所について尋ね、夜もすがら弔っていると、網代車に乗った御息所が高貴な姿で現れ、賀茂の祭りで、葵上との車争いに敗れたことを、激しい調子で嘆き、未だこの世に残す妄執を晴らして欲しいと頼む。

『葵上』と違って、妄執を晴らして欲しいと言っているんやけど、あんたもやっとわかったんかいな。まあ、人間、達観するには、時間が必要ということなんやろね。

⑤しかし、一度、感情が吐き出されると、激しい波も収まると、昔を偲んで、陶酔するように舞を舞い、光源氏の訪れを思い起こして懐かしむ。

感情の波の激しい人はかないまへん。相手にするのが疲れるわ。今でも、朝機嫌がよかったのに、昼を過ぎる頃から機嫌が悪くなったり、その逆パターンの人もいてはる。適当に聞き流せたらええけど、そうもいきまへん。あんたのためにストレスたまるんやで。こういう人とはつきあいにくい。まあ、彼女なりに、光源氏を愛していたことはわかる。

⑥やがて、彼女の霊は、迷いから抜けられない自分を顧みつつ、成仏を願いながら、また車に乗り、野宮から消えていく。

やれやれ。

でも、六条御息所のような性格を直せるかといえば、それは難しい。素から持っている基本的資質に環境から影響されて性格は形成される。一旦、形成された性格を直すことは不可能。

そういう意味では、性格と云うのはこわい。でも、どうすることもできない。大きくなって環境をよくしたところで、性格はそんなに変らない。ある意味、達観が必要かもしれない。自分の性格と上手に付き合うしかないということかもしれない。しかし、第三者は迷惑することもある。

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