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2006年12月16日 (土)

「九尾の狐」という女性

歌舞伎や能の題材になったり、最近では、漫画やゲームの題材になっている「九尾の狐」というものがある。

ご存知の方も多いと思うが、これは、もともと紀元前に書かれた中国の書物『山海経』で取り上げられたものである。『山海経』とは、へんてこりんな想像上の動物?が描かれたもので、説明より絵が面白い。絵を見ると、九尾の狐とは、狐に九本の尾という感じである。

その説明内容は、青丘の山に「獣がいる。その状は狐の如くで九つの尾、その声は嬰児のよう、よく人を食う。これを食ったものは邪気に襲われぬ」とある。本来は、瑞獣だった。

ところが、その後の取り扱いは、これに見込まれると、災いがくると考えられている。そして、全て、女性の姿で男を迷わす。中国、インド(天竺)、日本と伝承されて、日本で更に話が広げられて伝わっている。

もちろん、これらは全て創作の可能性がある。国を滅ぼした権力者が、史書を度々書換えるように、作為があるかもしれない。話としては、面白いが、実際そういうことがあったかどうかはわからない。一つの教訓話ではあるだろうが。

例えば、殷王朝の皇帝・紂王に取りいった妲己は、紂王の寵愛を一身に受けるが、莫大な浪費をさせた結果、紀元前11世紀に、殷を滅亡に導いたと云われる。ただ紂王のやったことを過大に表現しているように感じる。

太公望が、妲己を九尾の狐と見破ったとあるが、実際は、彼女が邪魔であったのかもしれない。ただ紂王の政治に問題があったことは、他の書籍で総合的に見ても、事実であろう。それが妲己に起因しているとも考えられる。要するに女性に溺れた可能性は高い。

次に、古代のインド(天竺)、紀元前6世紀頃に勃興したマガダ国では、斑足王子は後に華陽夫人となる女性を愛した。王子は妃・華陽夫人の勧めるままに、暴虐の限りを尽くして、国を滅ぼそうとしたと云われる。

王子は、庭にいた一匹の狐が寝ているのを見つけ、矢で射ると、華陽夫人が寝込んでしまった。それで医者の耆婆が診て、彼女が人間でないと見破り、夫人を打ち据えると、狐の正体を現し、飛び去ったと云われる。これだって、事実はわからない。医者の耆婆だって、怪しいものだ。多分、架空の存在だろう。要するに、王子と夫人の関係が悪くなって、追い出したということだろう。王子は夫人に責任転嫁した可能性もある。

次に、褒姒は、紀元前780年ごろ、12代幽王の寵妃となっている。現在の后を廃し、皇太子も廃し、褒姒を正妃にする。彼女は、周に滅ぼされた国の女性。決して笑おうとしないため、幽王はあらゆる方法で、笑わそうとしたのは有名。

後、元の皇后一派に攻められて、滅亡してはいないが、紀元前770年頃、周は分裂している。褒姒は、ある意味、復讐を果たしたわけだ。こういうのと似た話では、豊臣秀吉が思い浮かぶ。女性に迷って、後日いろんな災いを招くのは、日本の歴史でも同じ。そういうのを九尾の狐と言うんですかねえ。

そして、日本へは、753年になって、吉備真備が若藻という一人の美しい少女を連れ帰ったという。それが、380年も経ってから、「玉藻の前」として、約1130年ごろ、鳥羽上皇に取り立てられ、寵愛を一身に受けたという。380年も経ってからというのが、よくわからん。後付講釈で、どこかの学者か研究者のようだ。まっ、創作だから仕方ないか。

彼女は才色兼備な上に優しかったという。う~ん、こんな女性が現実にいるのかな。大抵の男は、イチコロだろう(笑)。だが、天皇は次第にやつれていき、病を発する。無理もない。

陰陽師の阿部泰成が占うと、これは「九尾の狐」の仕業だと発覚する。そして、彼女は宮中から逃亡する。鳥羽上皇の死後、国は混乱しているから、やはり九尾の狐は国難を招いていることになる。また彼は、死の直前、不吉な歌を残している(*参考参照)。

これらに共通するのは、権力者が暴君になった時、女性に溺れやすいということだろうか。そして、女性に夢中になると、ガードはしっかりしていると思っていても、つけ込まれ易いということだろう。結局、政治が疎かになり、人心が不安定になり、外部からの侵略者に攻撃されて滅ぶというパターンである。為政者は、否、経営者と言われる方々も、これらから何を学ぶのだろう。

*参考

   鳥羽上皇 

           心あらば 匂ひを添へよ 桜花

                のちの春をぱ いつか見るべき

           つねよりも むつましきかな 時鳥

                しでの山路の 友とおもへば

                           『千載和歌集』より

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