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2006年12月23日 (土)

漢詩『偶成』について その三

西郷南洲(隆盛)も多くの漢詩を残しているが、その中に、『偶成』がある。但し南洲は、『偶成』と題するものをいくつか残しており、今回取り上げるのは、本によっては、『偶感』となっているものである。

 『偶成』       西郷南洲

幾たびか辛酸を歴(へ)て志始めて堅し

丈夫玉砕すとも甎全(せんぜん)を愧(は)ず

我が家の遺法知るや否や

児孫の為に美田を残さず

まず、「幾たびか辛酸を歴(へ)て志始めて堅し」は、人間は、多くの辛酸を舐めて、はじめて、志操堅固になる。苦労なしで、大成することはない。病気、汚職等の投獄、事業の失敗などで、人間は強くなるという。ただ現在の日本は、それらの人々の再起を許さない環境にある。

次の、「丈夫玉砕(ぎょくさい)すとも甎全(せんぜん)を愧(は)ず」は、丈夫=男子たるもの、やるべき時には、玉砕(玉と砕ける)しても、甎全=敷き瓦のような恥をかかない。すなわち、敷き瓦のような値打ちのない人間になってはいけない。自分の志を曲げて生きてはいけない。

「我が家の遺法知るや否や」は、後々まで伝えたい我が家憲としては、として次の句に続く。ただ、『西郷南洲遺訓』では、「我が家の」は「一家の」となっている。本来はこれが正しいのだろう。詩吟とか詠むのに、調子が悪いから、後世の人が変えたのだろう。

「児孫の為に美田を残さず」は、大変有名な言葉で誰も知っているだろうが、子孫に財産を残さないということだ、と言っている。これは、かのユダヤ人も、基本的には、そうだそうである。彼らは、子供に教育を残す。事業でも、二代目は創業者の苦労を知っているから、継いでも、そんなに無茶はしない。しかし、三代目になると、創業者の苦労を知らないから、贅沢に走ったりして、身代を潰してしまう。そんなことなら、子供に財産など残さない方がいいのかもしれない。但し、財産のある方にのみ言えることだが。

*追記

漢詩『偶成』と題するものは、他にもいろんな方々(例えば、松平春獄、藤田東湖など)が詠っている。だが、後世の者に参考になりそうなものは、以上に取り上げた三篇だと思う。

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