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2007年1月20日 (土)

偕老同穴のいきさつ

偕老同穴(かいろうどうけつ)という言葉とその意味は知っていたが、不勉強で、その原典は読んでいなかった。偕老同穴の意味を、念のために記しておくと、夫婦が共に生きて老い、死んでも同じ穴に葬られようと誓うことだ。

原典は、中国の『詩経』である。学生時代、文学青年でなかったので、あらためて読むと、なかなかいいものだと感じさせる。『詩経』は日本の『万葉集』にあたるという。この部分は、中国・河南省の民謡だと云う。最近、読んでみると、その背景は辛いものがある。

そして、この偕老同穴は、「偕老」と「同穴」という別々の単語が合わさったものだと初めて確認した。流風の不勉強をわざわざブログに記すこともないのだが、一応知識の整理として記しておく。

最初の「偕老」は、詩「邶風・撃鼓」から出ている。これは出征した兵士の嘆きである。いつ故郷に帰れるかもわからず、馬とも死に別れ、自分にも死が寸前に迫り、田舎の女とのことを次のように思い出したが、全ては泡にになってしまったことを絶望的に詠んだものらしい。

     死生契闊(けいかつ)

           子(し)ともに説(ちかい)をなす

     子が手に執って

     子と偕(とも)に老いん

「死生契闊」は、どんなことがあっても、死んでも生きていても一緒という意。「子」は、「お前」の意。かつて戦場に出た人に話を聞くと、死の直前には、母親が浮かぶらしい。その点、この兵士は故郷の女を思い出している。

後の「同穴」は、詩「王風・大車」から出ている。戦争に敗れた国の君主が捕らえられ、夫人が、相手国の王から所望され、宮廷に入れられた。彼女が、捕虜になっている夫の元君主にたまたま出会い、次のように詠んだと云う。

     生きては すなわち 室を異にすれど

     死しては すなわち 穴を同じゅうせん

     予を 信ならずといわば

     皦(こう)日のごときことあらん

「皦(こう)日のごときことあらん」というのは、太陽の如く明らかだ、という意。『詩経』を読もうとしたら、難しい漢字が出てきて大変。漢和辞典が必携だ。

さて、この歌を詠って、彼女は夫の止めるのも聞かず自殺する。そして夫も後追い自殺したと云う。それにしても、彼女の強い意志が感じられる。差し迫る状況になると、人間、本心が出てくる。それに対して、後追い自殺しているが、夫はそれほど強い意志は感じられない。夫人ほどの愛の強さはなかったかもしれない。多分、生前の夫婦関係もそうであったのでしょう。

諺も、こうして原典を読んでいくと、深い意味が感じ取れる。ただ流布している意味だけでは、いけないなあと感じる流風です。

*注

「偕老」については、「鄘(よう)風・君子偕老」、「衛風・氓(ぼう)」という詩にも見える。

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