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2008年6月11日 (水)

元田永孚の漢詩『中庸』

今回取り上げる、漢詩『中庸』は、元田永孚(もとだえいふ。ながざね、とも言う)によるものだ。元田永孚は朱子学者であり、強烈な保守主義者で、儒教主義者だった。明治天皇の信頼が厚かったという。最終的には明治政府の枢密顧問官になり、後に教育勅語の起草に参加している。

以下に示す詩の内容は、若い人に対する指針を示し、以前ブログで取り上げた、木戸孝允『偶成』と重なるものがある。いつものように、現代的に解釈してみよう。

  勇力の男兒(だんじ)は勇力に斃(たお)れ

  文明の才子は文明に酔う

  君に勧む須く中庸を択んで去(ゆく)べし

    天下の萬機(ばんき)は一誠に帰す

まず、「勇力の男兒(だんじ)は勇力に斃(たお)れ」は、武勇に優れ、腕力に頼る者は、それがために、命を落とす。今でも、病気一つしたことない頑健な人が、過信して、ぽっくり逝くことがある。また戦いでも同様のことが言える。強すぎると、却って、敗れたりする。孫子でも、勝ちすぎは戒めている。

次に、「文明の才子は文明に酔う」は、同様に、他者に先んじて文明の才を誇る者も、才に酔ってしまって、世の中に貢献しないで、むしろ害になったりする。新しい知識を十分自分のものとせず、世の中に無理やり取り入れようとすれば、齟齬をきたして、世の中を混乱させる。世の中の仕組みをよく知って、新しい知識を活用すべきで、新しい知識があるからと言って、人々を見下げて、何が何でも、導入しようとするのは、驕りそのもので、社会に毒になる。

「君に勧む須く中庸を択んで去(ゆく)べし」は、君たちには、そういうことがないように、バランスの取れた中庸の道を進むことを勧めたい。

最後の「天下の萬機(ばんき)は一誠に帰す」は、天下、すなわち世の中の全ての事柄は、人柄を誠実に、他者には親切にして、欺かないことが大切なのだ。人間社会は、人と人が関わっているということを忘れてはならない。

全体を通して見ると、次のように言っているのかもしれない。この世の中は、普通の人が大半なのだ。そういう人たちが社会を形成している限り、極端な発想や行動は慎みたい。つまり自分に対する信頼と自信は必要だが、過信せずに、多くの人に支えられていることを忘れず、対話と協調の精神に基づき、誠実で謙虚に生きなさい、と。

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