« 百貨店の行方 | トップページ | 夏バテ予防と夏野菜 »

2008年7月 9日 (水)

医療ドラマから考える

基本的に、日本のドラマはあまり見ないのだが、『Tomorrow』(*参考参照)は番組宣伝を見て、珍しく視聴したくなった。医療関係のドラマは、医療内部の問題を扱ったものが多いが、このドラマは、もう少し、話題を広げているのではないかと思われたのだ。

それは、現在問題になっている地域医療を取り上げているからだ。地域医療は大変深刻で、いろいろな制度変更が混乱を惹き起こしているようだ。そういうことにスポットを当てたドラマのようなのだ。題名の『Tomorrow』がなぜ英題なのか不明な点もあるが、制作者は「明日への希望」とか「明日への光」をこのドラマで暗示したいのかもしれない。

それにしても、医は仁術であるとは、昔よく言われたことだが、今では死語に近いのだろうか。韓国のドラマで、宮廷医への道を描いた『ホジュン』でも、主人公が「心医」を目指すのだが、その困難は壮絶なものだったと描いている。医療の原点は何なのか。確かに、このように使命感だけで医療行為をするには限界があるだろう。しかし、使命感なき医療では、多くの人の共感を得られないのも事実だろう。

さて、このドラマの設定は次のようになっている。地域の漁村、西山室市では、総合病院は一つしかなく、そして、ここでも医師不足である。そのため休診が多く、その結果、患者は減り、悪循環に陥り、実質機能していない。患者が来ないのだから、当然赤字は膨らむばかり。役所はやり手の医師を招いて改革を図ろうとするが、それは結局患者の切捨てにつながる。それに対して、どのように役所・医療者・地域住民が対応していくのか、という重いテーマだ。

このドラマでは、一回目を視聴した限りでは、そのようなものをできるだけコミカルに重くならないように描いている。しかし、ドラマ制作の問題意識は高いように感じられる。実際、政治の場で、侃々諤々論じられても、関係のない都市市民にとっては、わかりにく問題でもある。それを具体的に表現しているのは評価できる。都市は地域によって支えられていると考えれば、都市住民も無視できない問題だろう。

主人公森山航平(竹野内豊)は、かつて病院勤めの時、人を救えなかった。それが心の重荷になって医師を辞め、西山室市に一般職員として流れてきた(*注)。凡そ、名医と言われる方々も、多くの患者を殺している(助けることに失敗している)。医療技術は、教育で伝えられる部分と経験しないとわからない部分がある。

真面目な医師ほど、患者の死に遭遇して、悩むことになる。しかし、それで医師を辞めてしまっては何もならない。患者の死を通じて、次の段階にステップアップすることが求めれる。しかし、現代は、医療訴訟なるものがあるため、医師が最大限努力しても、訴えられる可能性がある。そうすると、医師は萎縮してしまい、安全策しかとらない。

それでは、医療は進歩しない。患者やその家族は、患者を任せた医師や医療機関にどう接するのか、難しい課題が横たわっているのだ。基本的に、これはと思った医師に任せれば、後は天となれ、地となれという気持ちが大切ではないか。それも患者の運命だ。患者側が、生死をどう考えるかという死生観、その上で医療機関といかに接していくか、ということを日々考えていくことが大事なのだろう。

そして、もう一人の主人公田中愛子(菅野美穂)は、人間的な優しさに溢れる看護師だが、病院経営のことは頭にない。なんとか患者を救いたい一心で、関係者に激しくぶつかっていくので、いろいろ物議をかもす。しかし、彼女の医療に対する心掛けは大切だ。彼女の熱意は、周辺をも変えていく。医師を辞めた森山航平さえも。

実際の医療の現場は、このドラマより、もちろん、もっと厳しい状況だろう。ただ根本的な問題は、このドラマで示されることと類似しているかもしれない。私達は、いつでも利用できると思っている医療機関の危機に対して、無関心ではいけないだろう。

また医療機関は、地域住民と分離された孤独な状態で、被害者意識を持ちやすい。そういうことが医療機関も地域住民であることを忘れがちにさせている。地域に溶け込み、地域に応援を依頼できるような、地域と共に歩む姿勢が求められる。

他方、地域住民は、地域医療といかに付き合っていくか、各人が考えなければならないのだろう。あるべき医療システムは、結局、住民の意思が反映されるのは間違いない。地域住民は、医療機関と共にあるべき姿を目指すことが求められる。

いずれにしろ、このドラマを通じて、医療機関と患者と地域住民の関係性を再度考える機会にしてみたい。今後のこのドラマがどういう課題を取り上げていくのか、その展開が楽しみだ。

*注

その後の話しの展開では、担当教授の医療ミスのようだ。森山航平は、そのことを指摘したが、逆に、疎まれ、大学病院を放り出される。

*追記

なお、このドラマ『Tomorrow』は放送終了したが、全10回のため、どうも表現が荒っぽいものになってしまっていた。取り上げているテーマは、時事的で関心の深いものだが、この問題をたった10回で表現するのは無理がある。政治家が絡んでいるシーンもあり、選挙のことを意識して、早めに打ち切ったニュアンスが感じられた。この手のドラマは、視聴率も大切だろうが、最低30回ぐらいのストーリーを描いてもらいたいものだ。

*追記

それにしても、菅野美穂さんは、オパQ顔だなあ(笑)。それだから、女性にも人気があるのかもしれない。ちなみに彼女は、8月30日公開の『パンダフルライフ』でナレーションを担当するようだ。オパQじゃなくて、パンダ。そういうと似ているかもしれない。なお、この映画については、また別の機会に触れてみたい。

|

« 百貨店の行方 | トップページ | 夏バテ予防と夏野菜 »

医・食・健・康」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 百貨店の行方 | トップページ | 夏バテ予防と夏野菜 »