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2008年11月14日 (金)

菊の霊水

        心あてに 折らばや折らむ 初霜の

            置きまどはせる 白菊の花

                (古今和歌集、百人一首第二十九番、凡河内躬恒)

白菊は、霜と区別できないくらいに白い。白色にもいろいろあるが、この両者は似ているかもしれない。このような描写をするのは、日本人の感性のような気がする。ただ、この歌が、額面通りの意味なのかは、わからない。何か別の意味を含んでいるように思うのだが、不勉強で、ここでは詳しくは触れないことにしよう。

さて、昔から、長生きしたい気持ちは多くの人が持っていたようだ。もちろん、苦しい生活が続いた時代は、人生を厭う気持ちが強かったかもしれない。しかし、それでも、病気にもならず、食べ物にも不自由しない夢を見たことは確かだろう。

それが高じて、神仙思想などというものまでに発展する。すなわち、長生きする人たちを観察して、一部の知識人は、何が身体によければ長生きできるのかを考えたようだ。だから、いろんな食物を試して、その効用を知り、経験的に医学のようなものに高めていった。

そういったことを最初に試したのは、残念ながら日本人ではなくて、中国人である。日本へは、結果的に、中国への留学僧や来日した僧たちから、それらがもたらされた。例えば、お茶や菊などは当初、医薬品として入ってきている。

ところが、彼らが日本に来て、唯一感心したものがある。それは水である。地勢的な自然環境に加えて、豊かな森林があったので、水が美味しい。その水は、明らかに中国のものとは異なる。彼の国では、よい水が身体にいいことは経験的にわかっていても、美味しい水は、入手は困難であった。だが、この国ではいとも簡単に入手できる。

そして、そのような水が、菊の花から、零れていたら、人はどう感じるだろうか。それはまさに、菊の霊水、すなわち、お神酒と考えたようだ。そういう言い伝えを、現代でも、一部の清酒会社は受け継いで、菊を社名や商品名に冠している。

また、謡曲『菊慈童』(別名『枕慈童』。参考参照)でも、主として扱うのは菊だが、水が重要な役割を果たしている。その中に、上歌として、次のように示されている。

  この妙文を菊の葉に置く滴りや、

  露の身の不老不死の薬となって、七百歳を送りぬる。

  汲む人も汲まざるも、延ぶるや千歳なるらん。

  面白の遊舞やな。

まあ、菊水酒を飲んで、不老長寿になるかは、疑わしいが、菊には、高血圧や心臓病や、肩こりに薬効があるとされてきた。少なくとも、健康維持のためには役立ったようである。現代の菊の霊水はどこにあるのだろうか。

そういうと、菊の薬効としては、以前、南京町のある中国茶店で、菊茶を勧められて買ったことがあるが、かなり癖のあるものだった。まあ、良薬は口に苦し、とまでは行かなかったが、進んで飲みたい代物ではない。

ということで、菊茶は御免だが、ネットの『3分間クッキング』で紹介されていた「菊菜御飯」を作ってみた。菊菜のいい匂いと、味も意外と美味しくて、豚汁と刺身で、ご馳走様(笑)。ただ、菊の花はなかったので、長寿になるには、効果半減?。まっ、いいか。菊の名のついた清酒で補うとする(笑)。

*謡曲『菊慈童』について

謡曲『菊慈童』についての解釈は、例によって、記してみようと思ったが、小山昌宏氏が、覚書としながらも、見事なものがあるので、参考までに紹介しておく。

            http://www2u.biglobe.ne.jp/~kym_noh/kikujido.htm

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