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2008年11月 5日 (水)

映画『Red Cliff(レッド・クリフ)』~赤壁を考える

あの『三国志演義』を題材に取った、映画『Red Cliff(レッド・クリフ)』(*  参考1参照)が現在、上映されている。題名の『Red Cliff』は、ずばり「赤壁」の直訳。つまり、赤壁の争いのこと。あらすじは大体知っているので、今更という感じもしないわけではないが、あれだけ広告を打っていると、さすがに、ちょっと観てみようかなと思わせる。絶世の美人の小喬を演じる台湾女優リン・チーリンも見てみたい。ミーハーの流風には刺激的な場面もありそうだし(笑)。

でも、やはり、その中で、圧巻は、この映画の題名通り、魏の曹操と、呉と蜀の連合軍の争い。圧倒的な戦力の曹操軍に、諸葛孔明の奇策で望む呉・蜀連合軍。この赤壁の争いで雌雄を決する。

映画では、呉の司令官である周瑜の妻で、絶世の美人の小喬を得るために、魏の曹操が戦争を起こしたというが、実際はそうではないだろう。曹操は、そういう人物ではないと思う。中国では伝統的に、曹操を悪役と設定しがちだが、必ずしもそうではないと思う。彼は高い教養を身につけた理想主義者だったはずだ。多分、女性に対しても、そのようであったと思う。

まあ、物語を面白くするには、そのようにするのも仕方ない。大体、『三国志演義』そのものが、小説だから、日本の時代小説と変わらない。日本の大河ドラマも、大枠の歴史的事実は確かとしても、細部は実際は、かなり、かけ離れているだろう。それらは著者や制作者の思いの世界だろう。

さて、この争いに関しては、漢詩でも、蘇軾の『赤壁賦(前・後)』(* 参考2参照)が有名だが、長いので、ここでは省略する。彼は、自分のような軽い存在の人の営みは、あっという間のことだが、彼らの行動も、大きな時の流れの中では、これらさえも夢の如しと断じている。織田信長や晩年の秀吉が、感じたことと通ずる。

さらに、この蘇軾の詩を基にしながら、歌った『赤壁』という漢詩もある。清の時代の袁枚によるものだ。これを以下に取り上げておこう。

  一面東風百万の軍

  当年此の処三分を定む

  漢家火徳終に賊を焼き

  池上の蛟竜竟に雲を得たり

  江水自ら流れて秋渺渺

  漁燈猶照して荻紛紛

  我来って蕭を吹く客と共にせず

  烏鵲寒声静夜に聞く

内容は、蘇軾の詩をベースにしているから、当然同様な内容だ。意味は次のようであろうか。

「赤壁は、諸葛孔明が、百万の魏軍を破るためには、東南の風が吹く必要があり、それを祈った。天はそれを許し、魏軍を破ることができ、孔明の「天下三分の計」が成った。火の徳のあった呉・蜀軍が魏の不慣れな兵船を混乱に陥れ、登り竜はついに雲を得て、その名を天下に轟かせた(*注)。

しかしながら、秋の揚子江の大河は、そんなことは関係なく、滔々と流れて、漁火は荻の花をきらきら照らしている。かつて曹操は「烏鵲南へ飛ぶ」という詩を詠ったが、私はそれに同調して、笙を吹くような人とは同席したくない。今、烏鵲の寒そうな声は随分と寂しそうではないか」と。

それでも、人は闘争本能を失くすことはできないのだろう。人生は戦いでもある。そのエネルギーをどのように使うかが、問われている。どういう哲学を持ち、いかに正しい世界観を持つか。それには、心身を強くし、人生の持ち時間をいかに有効に使うか。人生は自分に対する問の連続であると言えるのかもしれない。

*  参考1

    映画『Red Cliff(レッド・クリフ)』        http://redcliff.jp/index.html

* 参考2

    蘇軾の『赤壁賦(前・後)』ついては、下記が参考になる。

              http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/seki1.htm

                               http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/seki2.htm

*注

詩の中で、「池上の蛟竜竟に雲を得たり」は、暗に、登りつめた竜は、既に上がなく、下に下らならければならない、と言っているようにも感じる。魏は、赤壁の戦いで敗れた後、衰退していくが、呉・蜀も、その後、魏と同様、滅んでいるのだ。

*平成21年3月24日追記

ついに、映画『Red Cliff(レッド・クリフ)』後編が4月10日に公開される。なお前編を観ることができなかった人は、4月10日にテレビで放送される(テレビ朝日系)。

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