用心のための観察
一般に危機に強い人は、その思考や行動が慎重だ。念には念を入れるというか、石橋を叩いて渡ることが徹底している。普通の人は、危機が迫っていても、案外、暢気に構えている。そうかと言って、石橋を叩いて、なお渡らないのは行き過ぎかもしれない。
危機に強い人は、観察力が鋭く、細かい事象に対しても、何かを感じて、手を打っていく。そうすることが、被害を最小限に抑える。『徒然草』第百八十五段と第百八十六段にも、それが記されている。
まず、第百八十五段では、城陸奥守安泰盛は、類稀なる馬乗りだったようで、馬の動作を細かく観察することにより、危険を察し、危ない馬には乗らなかったと伝えている。
馬の世話をしておれば、馬のちょっとした動きから、その馬が、どのような行動をするのか予測できるであろうが、彼もそのようだったのだろうか。
更に、第百八十六段では、吉田某という馬乗りは、人は馬と争ってはいけないと諭し、まず馬の強い所と弱い所を把握する。その上で、轡と鞍の具に気にかかることがないか注意することが肝心と言っている。
全ての道において、達人といわれる方は、馬乗りに限らず、用心のための観察がしっかりしておられる。現代でも、その道の達人から学ぶことは多い。
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