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2009年2月24日 (火)

継子いじめにあった姫~中将姫

昔から、継子いじめはある。子供時代、継母にいじめられている近所の子供さんがいた。流風とあまり歳は変わらなかったと思う。いじめにあっている現場は見たことはないが、母は、子供さんが折檻されているという噂話をよく近所の人としていた。

場合によっては、食事を与えられないこともあったようで、近所の人は、可哀想に思って、食事等を与えていたようだ。その後、引越しされたので、その子供さんがどのようになったかは知らない。普通なら、横道にそれて、ぐれてしまうだろうな。

自分の子供でも、親子は多くの行き違いがあるのに、まして血のつながっていない子供とは、コミュニケーションを取るのはなかなか難しいのは確かだろう。でも、子供がいることを覚悟で、嫁いでいるのだから、子供がなつかなくても、それは耐えるべきだろう。

最近では、継父の継子いじめが目立って報道されている。継母と同様に、難しい問題だ。子供を作りながら、安易に離婚して、また、すぐ再婚しようとするからおかしくなる。再婚する親に、子供はいい迷惑だ。新しい親にすぐ馴染むというのは、安易過ぎる考えだ。

さらに再婚相手との間に子供が生まれれば、余計に事態は複雑になる。どうしても、実子に愛情が行ってしまうからである。時たま、再婚相手との約束で、子供を生まない条件にして、それを貫いている人もいるが、珍しい。

多くのトラブルを防ぐには、それが一番いいのだが、継母の場合は、まだいいが、継父の場合は、血のつながった自分の子供が欲しいものだ。子供のいる場合の再婚は、いずれにせよ慎重さが求められる。

謡曲でも、継子いじめにあった中将姫を扱った『雲雀山』がある。続きの話と考えられる『当麻』と共に、有名だ。雲雀山は、紀伊の国にあったらしいが、大和にもあったとも伝えられている。この謡曲では、紀伊の国にあったとする。地名からすると、ピーチパーチク、雲雀の鳴き声が盛んだったと想像できる。まあ、田舎ということかな。

この話は、『当麻時寺縁起』に材を取っていると云われる。すなわち、藤原豊成の息女が、十歳の時、継母の讒奏にあい、葛城山に捨てられ、更に紀伊国に移設させられて、殺されそうになったことを素材としていると言うのだ。

後妻の言うことを真に受けた豊成も豊成だが、余程巧妙な讒奏だったのかもしれない。まあ、寝物語で、耳元で囁かれれば、嘘も真実に聞こえてくることは、多くの男性諸氏が経験していることだろう(笑)。

そういうことに長けた女性は確かにいる。自分にのみ、愛情を受けたいことが、そういう狭い了見にさせる。結局、中将姫を殺す命を受けた従者は、お経を熱心に唱える姿を見て、助けることを決心する。こういう話は、戦国武将についても、同様なことを読んだ気がする。

この話が、事実かどうかはわからないが、当時でも、似たような話はあっただろう。継母と継子の関係は、いつの時代も複雑だろう。男は、妻なしの生活は大変だし、そこそこの地位にあれば、妻の必要性は求められる。そして、そこでは子供の存在は軽視される。

なお、この謡曲では、中将姫は、後、乳母や従者のお蔭で、豊成の誤解が解け、彼の下に戻るというようになって、一応、めでたし、めでたし、ということになっている。しかしながら、後の話(『当麻』)では、どういう事情かしらないが、彼女は、家を出て、出家している。複雑な彼女の家庭環境が、彼女をそのように仕向けたのなら、実に可哀想なことである。

この謡曲の題材の継子問題は、いつの時代も存在し、子供たちは、皆、苦悩する。そういう問題の投げかけとしては有効だろう。現実、継母になる方も、それなりに苦労はあるだろう。そういうことを乗り越える意思がないのなら、再婚は望んではならないだろう。親のエゴは子供を傷つけるしかないことを忘れてはならない。そういう示唆に富む作品だ。

*追記

ただ、本当の話は、大臣であった豊成の弟が、ある人を讒訴した結果、兄の豊成の身にも及び、筑紫に流され、そこで、豊成の娘である中将姫は、逃れるため、当麻寺に身を隠して尼になったということも伝わっている。

だが、なぜか、先に示したような、まったく違う話になって、現代まで伝えられている。どこからどこまでが創作なのか、残念ながら不明だ。よって、一つの小説として、この謡曲は味わった方がいいのかもしれない。

もちろん、この謡曲に限らず、文学作品のほとんどは、ヒントとなる事件を題材としながらも、多くは創作と考えていいだろう。現代でも、様々な歴史小説があるが、大半は作家による創作だ。テレビドラマになんかなると、史実と錯覚しがちだが、ほとんどが作家の感情移入による創作というのが事実だ。

なお、『当麻』については、未鑑賞だ。いずれ取り上げてみたい。

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