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2009年3月30日 (月)

虚業と実業~福沢桃介の『互戒十則』から考える

経営者は、自ら社是や経営理念により、企業の目的を明示して、その方向性を明確にして、組織活動が円滑にいくようにする。そして、次に、その行動原理を明確にして、その運営がうまく運ぶように配慮する。

戦前の経営者、福沢桃介も、電燈会社の経営に関わった時、『互戒十則』を定めている。それは次のようなものだ。一応、現代的な解釈も付記しておく。

 ①吾々の享くる幸福は、十万需要家の賜物なり。

顧客の満足を得て、モノやサービスの提供者は役割を果たしたことになり、初めて供給者としての満足感を得られる。

 ②吾々は寸時も、需要家の恩恵を忘却すべからず。

顧客の存在なくして、モノやサービスの提供者の存在はあり得ない。常に感謝の気持ちが大切だ。

 ③需要家の主張は常に正当なり。懇ろに応接すべし。

顧客の要望に応えることは大切だ。彼らの希望を無視して、長期的なビジネスはあり得ない。期待に沿えるように努力すべきだ。

 ④故障を絶対に予防し、需要家に満足を与うべし。

品質・性能を確実なものにして、顧客に提供することが大切だ。また仮に、事故になっても、機敏に対応できるサービスシステムと品質保証が求められる。そして、それが、次のモノやサービスの開発に十分配慮されたものでなくてはならない。

 ⑤時間と労力は貴重なり。最も有効に使用すべし。

ムダ・ムリ・ムラのないように、各人が努力しなければならない。そのためには、組織システムが効率性と効果性に十分配慮されたものでなくてはならない。

 ⑥其日になすべき仕事は、明日に延ばすべからず。

今日の時間は今日しかない。今日できるものを明日に延ばせば、明日に負荷が大きくなって、結局、積み残すことになる。それは成果を上げるのに非効率だ。

 ⑦細事もおろそかにするなかれ。一物も損なうなかれ。

小さい穴も、時間をかければ大きくなる。これくらいはいいだろうという判断が、将来に禍根を残す。それは単にビジネスに対してだけではない。人に対しても、そういう配慮が大切だ。

 ⑧議論と形式は末なり。実益を挙ぐるを目的とせよ。

決められたルール通りに、いつも事を進めていては、企業環境が変われば、非効率になる。時が変わればやり方を変えて、実績が上がるように努力すべきだ。常に実績を上げるための組織運営でなければならない。

 ⑨不平と怠慢は健康を害す。職務を愉快に勉めよ。

組織にいれば、完全な人事はあり得ない。自分に合わない仕事と思っても、真正面から真剣に取り組めば、それなりに面白さが出てくる。自分目線で、新たに仕事を作るつもりで臨めば、すべてが自分ペースになる。これほど楽しいことはない。

 ⑩会社の盛衰は吾々の双肩にあり。協力奮闘せよ。

全社員が、全力で仕事をすれば、企業の業績は必ず良くなる。皆が力を発揮できるような環境を作って、全力で仕事をしよう。

福沢桃介は、本来、虚業の人だが、実業の世界に飛び込んで、その大変さを理解したのだろう。彼と同様に、虚業(金融関係、士業、コンサルタントなど)が、実業の世界に飛び込んで成功した例は少ない。

実業は、地道な努力を積み重ねて、利益を出すように努力するが、虚業は、他人の利益の上前をはねる仕事だからだ。実業で利益を出す苦しみを味わっていないので、利益を出すことを安易に考えがちなのだ。

だから、彼が、実業で成功したか疑問だが、上記の訓戒は、それなりの意味があるものだろう。彼も実業の世界で、その大変さを味わったに違いないと思われる。虚業の人々が幅を利かす時代をなくしたいものだ(*追記)。

*追記

最近、米国クリントン元大統領も、今回の金融恐慌に際して、そのような発言をしているようだ。彼も金融という虚業中心の時代が終わったと感じているのだろう。

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