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2009年10月11日 (日)

嘘の報告~狂言『清水』

小さな嘘も、時間が経つにつれて、ばれてしまうことが多い。嘘の上塗りなどすれば、ますます辻褄が合わなくなってくる。世の中、よくできたもので、矛盾は、いつか露呈する。例えば、新人営業が、上司から得意先の新規開発して来いと言われて、活動するが、なかなか成果が上がらない。まあ、そんなに簡単に成果が上がる方がおかしい。

ところが、ある新人は、親戚にねじ込んで、成果を上げたとする。しかし、それは長続きはしない。一時的には、よい顔ができたとしても、本当の営業をやっているわけではないから、その後は、さっぱりと言う例が多い。

まだ、この新人営業の場合は、実数として成果になっているから、まだいいが、ベテラン営業が上司の厳しい追及逃れに、得意先に無理やりねじ込んで、架空の成果報告を上げるようになれば、もう終わりだ。まあ、上司も、部下に合理的な根拠のある数字の成果を求めさせないといけないけれど。

やはり営業は、ターゲットを絞って、地道にやるしかない。営業は派手なようで、極めて地味な仕事だ。人間関係の積み重ねには時間がかかる。成果は、それからだ。もちろん、人間関係ができていても、無理な押し込み販売は、いつか災難を抱えることになる。営業管理職は、各営業の数値から、それらを各種“信号”を察知して、誤りないように指導しなければならない。

さて、狂言にも、嘘を言ってばれる話がある。それは『清水(しみず)』だ。一応、名曲と言われるもので、主従の関係を皮肉った作品だ。そのあらすじを見ながら、感想を述べよう。

そこに出てくる主人は、どうも人使いが荒いようだ。計画性もなく、思いつきで事を進めたりして、部下への配慮も足らない。今でも、そういう社長がいますよね。他社の動きに幻惑されて、うろたえる。そして、とんでもない指示をする。あなたの会社には、いませんか。

ある日、流行りの茶の湯の会を明日催すから、茶の湯に使う、名水と言われる野中の清水を汲んで来いと太郎冠者に命ずる。こういう急な命令は、部下にとって、大いに迷惑。部下の事情にはお構いなし。

ところで、この野中の清水は、印南野にあったと言われる。現在の兵庫県の明石から西、加古川から東、北は美嚢川、南は海に囲まれた地域らしい。でも、大体この地区は、水が得られにくかったから、多分海岸線にあった名水と考えられる。現在でも、日本酒の醸造が確か、されているはずだ。

これら主従がどこに住んでいたかは明確ではないが、舞台は、多分、京都だから遠かったという設定だろう。太郎冠者は、こんな命令をいつも受けていたら、堪らんと思い、嘘を思いつく。

どういう交通手段をとるのか、わからないが、太郎冠者にとっては大変なこと。嘘をつきたくなる気持ちもよくわかる。どうせ、気まぐれな主人だから、気が変わるかもしれない。気が変わってくれたら、超ラッキー(笑)。

そこで、それは清水に恐ろしい鬼が出たということにする。この頃、印南野には、鬼が出るといって有名だったらしい。一体、鬼とは何だったのだろうか。ここでは、そのことについてはパス。以前にも、少し触れたが、いずれまた記してみたい。

それにしても、太郎冠者は、一応、清水まで行ったのだろうか。どこかで油を売って、行ったことにしたのだろうか。いずれにせよ、そういうことで、主人が大事にしていて、持って行った手桶は、恐ろしくて忘れてきましたと告げる。

ところが、これが逆効果。主人は、手桶が惜しいから、血相を変えて取りに行くと言う。こういう時は、鬼さえも、恐ろしくないんだ。大事なものは、恐ろしさを超える(笑)。一体、どんな桶だったのだろうか。塗りものの高級品かな。まあ、誰でも、自分の大事にしているものには、そういう風になるという作者の皮肉かな。

止むなく、太郎冠者は先回りして、鬼になり済まして、主人を脅かす。そして、ひれ伏す主人に、太郎冠者にとって、有難い都合のよいことばかり、命じる。まあ、人使いの荒い主人に、意趣返し。そういうことをやってみたい従業員は、今でもいるだろう。

不審に思いながら帰った主人は、もしやと思いながら、太郎冠者を試すと、鬼と同じ言葉を発し、その声が鬼の声と同じだった。更に疑念を抱いた主人は、もう一度清水に行こうと言い、太郎冠者は先回りするが、見破られてしまう。これは、ある意味、最初から、見破られることを覚悟して、太郎冠者が振るまっていると思われる。

嘘はいけないが、すぐ見破られる嘘で、コミュニケーションを図るのは、少し許されるのかな。上司に、すぐ直言するのもいいが、受け入れられないことも多い。こういうやり方も、一つの方法と言えなくもない。でも、そう度々は許されない。

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