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2010年4月14日 (水)

鹿、鹿、鹿

鹿を殺して肉を売れば、商売になるだろうという浅はかな考えで、奈良公園の鹿をボウガンで射殺した男が逮捕されていたか、愚かなことをしたものだ。江戸時代なら、春日大社の鹿は神獣だから手厚い保護を受けていて、殺せば死罪だった。

落語にも、『鹿政談』という、誤って鹿を殺してしまったことを扱ったものがある。老夫婦の営む豆腐屋の店主六兵衛が、朝から、きらず(卯の花)をむしゃむしゃ食べるのを犬と思い、追い払おうと、薪を投げつけると、それにあたってしまって、不幸にも死んでしまった。

そして、犬と思ったのが、実は鹿で、当たり所が悪かったのだろう。それでてんやわんやとなるが、結局、鹿の守役と興福寺の担当に訴えられる。だが当時、名奉行と言われた奉行の取り計らいで救われる古典落語の名作だ。

自分の立場上、法律通りに取り締まろうとする鹿の守役に対して、奉行は、鹿の守役の不正(鹿に下された禄の横領。当時幕府から鹿に対して、禄として、1万3千石支給されていたのに鹿に餌を与えず人間が横領)を明らかにすると脅し、六兵衛を助けるという大人の話でもある。

ただ六兵衛を助けたのは、この豆腐屋が誠実で正直だったこともある。周囲の評判も良く、支援者もあったのだろう。日頃の行いが大切なのだ。誰でも、奉行が助けたかどうかはわからない。

ところで、鹿は、繁殖力も強いので、いろいろ問題を起こしている地域もある。いわゆる田畑を荒らす害獣なのだ。そこでは、適宜、猟で打ち取り処分されている。それを地域活性のために使っているところもある。鹿肉は、牛肉と比して、脂肪分が少なくヘルシーなため、食材として歓迎されるのだ。これは一石二鳥の例だ。

水害の被害が大きかった兵庫県佐用町では、以前から、鹿肉を利用して、「さようバーガー」とか「しかミンチコロッケ」を販売し、結構人気商品になっている。ハンバーガ類一個300円程度。ミンチコロッケは一個150円。その他にも、町民は、焼き肉、カレー、たたきなどに利用しているらしい。

鹿も、棲むところによって、その価値は変わる。これが人間の都合というものかもしれない。だが、法治社会では、決められたルールを守るしかない。例の犯人は、軽率な行いだったと言える。落語のように、名裁きで助けられるのだろうか。残念ながら、近所の評判はあまりよろしくない。落語の話のネタにもならないようだ。

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