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2010年10月13日 (水)

天寿を全うするということ

寿命というものは誰にもわからないものらしい。業平も、辞世の歌として、次のように詠んでいる。

  ついにゆく 道とはかねて 聞きしかど

         昨日今日とは 思はざりしを

                 (『古今集』八六一より)

ところが、余命を宣告されて、愕然とする人も多いが、それ以上に生きる人も多い。寿命は、ある程度、個人の意識で延長されるようだ。

さて、昔から、寿命について、その不思議さを記した書物は多いが、今回は、『呂氏春秋』の中から、少し取り上げてみよう。

まず、「長ずるとは、短くして之を続ぐに非ず、その数を畢(つ)くすなり」と記してある。

「数を畢(つ)くす」とは、天寿を全うするの意。よって、命とは、短いものを継ぎ足して長くするのではなく、天寿を全うさせることである、という意味。しかし、その天寿がわからないから、困るのだ。あらかじめ、命の長さがわかっておれば、それなりの過ごし方もできよう。では、わからないのであれば、どうするべきか。

続けて、「数を畢(つ)くすの務めは、害を去るに在り」とある。

すなわち、天寿がわからないのだから、全うするためには、害を取り除くしかない、と。確かに、健康を害するようなことを、まず避ける必要はある。

そして、「何をか害を去ると謂う。大甘・大酸・大苦・大辛・大鹹(かん)、五者形に充つれば則ち生に害あり」と。

これは、甘さの強い物、酸っぱさの強い物、強い苦さの物、強い辛さの物、あまりにも塩辛い物を摂取し続け、身体に満ちれば、生命は害されると説いている。当然のことと思うが、現代人は、興味本位で、刺激を求めて、これらの物を食したりしている。そして、知らず知らず身体を蝕んでいる。そういう認識がないことが怖い。

次に、「大喜・大怒・大憂・大恐・大哀、五者神に接すれば、則ち生に害あり」と説く。

これによると、喜び過ぎるのもいけないようだ。後は、わかりますね。大きな怒りは、毒を発生して命を縮めると言われている。大きな心配事も、大きな恐怖心も、大きな哀しみも身体にはよくない。何事もほどほどが宜しい。あまり情に流されないようにしないと、身体にはよくない。ケセラセラが大切。

同様に、「大寒・大熱・大燥・大●(*注)・大風・大霖・大霧、七者精を動かせば、則ち生に害あり」と、続く。

すなわち、ひどい寒さ、酷暑、乾燥しすぎ、湿度が高すぎ、強い風、長雨、長い霧は、人の精気をかき回せば、寿命に影響する。どれに於いても、適度が求められる。そうなると、どこに住むかも大切な要素だ。

そして、結論として、「故に凡そ養生は、本を知るに若くはなく、本を知らば、則ち、疾由りて至るなし」と言う。

養生は、このように、その本質を弁えることが大切で、本質を押さえておけば、病気になることを防げると言っている。まあ、当たり前のことを当たり前に、身体を異常に刺激しないことがいいようだ。やはり適度とか、適切という言葉が生きてくる。

*注 

さんずい偏に、一に糸の上の部分二つ並べて、土。意味は高い湿度を指すらしい。

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