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2010年11月10日 (水)

狂言『延命袋』を考える

料理で、油揚げの中に、根菜類を詰め込んで、煮込んだものを延命袋という。これからの季節、根菜類は美味しいが、健康に良いことは昔から知られていた。根菜類を食べることは、長生きの秘訣とされる。

最近は、同じ名前の料理でも、揚げ豆腐の中をくり抜いて、それをひき肉とか、シイタケと炒め合わせたものも、そのように呼んでいるようだ。確かに、それも美味しそうだが、本来の延命袋とは大きく異なる。

さて、延命袋には、もう一つの意味があり、福の神を持つ袋を指す。そういう袋欲しいなあ。そんなことを言うと、誰でも、すでに持っているなんて、言われるのだろうか。狂言にも『延命袋』というものがある。別名『引括(ひっくくり)』だ。話の内容は、流派によって多少異なるようだ。

大まかな筋は、いつも口うるさい妻に嫌になった夫が、実家に帰ったので、これ幸いと離縁状を太郎冠者に届けさせることから始まる。まあ、どこの家庭でもあるような(笑)。口うるさい妻に閉口している夫たちは、たくさんいることだろう。

妻というものは昔のように恋人ではないし、長く夫婦関係が続くと、妻は夫の母親のような口ぶりで、いろいろ詰ったり、小言を繰り返す。それは安心感から発するものとも言えるし、愛情の裏返しとも言われるが、言われる方の夫は辛いものだ。そして、そのことに妻は案外気づいていない。

夫のタイプにもいろいろあって、妻の繰り言を音楽のように聞いて、聞き流す人もいれば(笑)、すべて受け止め、ナイーブに心を傷つけられるタイプもいる。ところが、どこの妻も、相手の性格を見ず、同じように接するから、この男のように、遂に離縁状を送るまで追い込まれる場合もある。

前口上が長くなったが、この狂言では、離縁状を送られた妻は立腹し、離縁の印を要求する。男は、そんな適当なものはないので、袋一つを渡すと、そんなものだけではと、文句を言われ、男は、それなら袋に入るものを適当に持ち去れと言う。

ここで、妻が取った行動が面白い。妻は、夫に袋を被せ、これが欲しいと引っ張っていくというもの。これは日頃、妻は男に、口うるさくしていたが、それは大変夫を愛していたということだろう。

男は、残念ながら、妻の小言が、愛情表現の一つとは取らない。そこに夫婦の齟齬が生じる。夫婦とは、そんなものだろう。これはお互い短気を起こしてはならないという教訓であり、妻に夫は所詮、勝てないという含みもある。

でも、妻は夫を福の神と考えて、袋を被せて、延命袋とすることもできる。夫婦関係は結局、妻次第。夫の取り扱い次第で、夫婦関係は大きく変わる。女性の皆さん、それには、まず、袋が何なのか考えてみて。

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