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2010年11月17日 (水)

鶴と五絃弾

鶴は夜半に鳴くそうだが、その声は姿と違い、あまり美しいものではない。鶴の種類により、その鳴き方は異なるが、どれも、聞きよいものではない。人によって受け止め方は違うだろうが、甲高くうるさい。ただ、源順(したごう)は、次の詩に、風の音と調和すれば、五絃弾のようだと詠っている。

  漢(そら)に叫んでは 遥かに孤枕の夢を驚かす

  風に和しては 漫(みだ)りがはしく五絃弾に入る

解釈は、「鶴は、夜空に叫び、独り寝ている私の夢を覚ます。声は風の音に和して、あたかも五絃弾を掻きならす音のように聞こえる」と。

この詩とは、直接関係ないが、ついでに記すと、追われている者は、例えば敗残兵や犯罪者などは、少しの風の音や鶴の鳴き声に怯えたりする。であれば、五絃弾にも、彼らを怯えさせる力が備わっているかもしれない。

そう考えれば、音は武器にもなりうる。昔の人々が鉦や太鼓等を戦場に持ち込んだのも頷ける。それだけ、よりよい効果音の選択にもシビアになっている。つまり心に影響する音に敏感だった。

それに比べて、現代は、日常が多くの雑音に取り囲まれており、音の効果が半減している。現代人が静寂を取り戻し、本当の音を鑑賞するにはどのようにしたらいいのだろう。害のある音を寄せ付けず、いい音の選択には、もう少し厳しくなってもいいかもしれない。

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