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2011年3月24日 (木)

東日本大震災の復興費用

東日本大震災の被害状況が具体的になりつつある。政府は、官民で直接被害額を最大25兆円(~16兆円。3年)と言い出した(*注1)。しかし、今回は地方の地震であり、都市型の地震ではない。その積算根拠は、一体何なのか、不明な点も多い。官庁の予算分捕り合戦の匂いがする。

これは阪神淡路大震災の時と同じだ。あの時も過大な見積もりになり、余った予算が、箱ものに投じられた。今回は、誰が見積もりしたのだろうか。更に、その積算は、都市型災害の典型の阪神淡路大震災のデータをベースにしており、おかしな点も多い(注意:以下の数字内容はデータが十分でないこともあり、推定の範囲に拠るものが多いので、新しいデータが入手できれば、随時、変更・修正していきます)。

つまり、今回の地震や津波による倒壊等の住宅は推定約38万戸(5月13日警察庁発表。全壊8万8873戸、半壊3万5495戸、一部損壊25万6242戸)、避難者約18万人弱。これは、死者・行方不明者約2万5千人を除けば、当初の被害予測を大きく下回っている。津波で家屋が流され、多くの死者・行方不明が出たから、過大な報道になった面がある。

すなわち、今回の特徴は、太平洋海岸線沿いに非常に広域であること、阪神淡路大震災にはなかった津波のため、死者・行方不明者が、非常に多く、阪神淡路大震災の4倍強である。

しかしながら、建物被害は、現在知りうるデータでは、地方のため、かなり少なく、阪神淡路大震災(一部損壊含め約85万戸。但し約64万戸というデータもある)の44%程度。避難者も阪神淡路大震災(31万人)の60%程度。

また総生産額(GDP)では、今回の東日本大震災では、岩手、宮城、福島、茨城合計で、阪神淡路大震災の約50%程度である(一部経済誌は同等とするが、そもそも兵庫県のみの総生産額との比較に誤りがある。それに神戸は、世界の物流の拠点であり、かつ東西の陸路物流の要衝で、その影響は甚大であった)。

確かに、東日本大地震は、企業の工場や下請けが被災しているが、経済被害の観点で見ると、阪神淡路と比べると、意外と被害は小さいのだ。ただ、東日本大震災は、インフラ・ライフラインの被害は、広域であることから、その修復にはコストが、阪神淡路大震災より、かかるのは間違いない。

だが、阪神淡路の場合、高速道の崩壊、高層ビル等の崩壊もあったが、今回は、そのような厄介な物はなく、地方の海外線の崩壊であり、農地等もあり、資材は余分にかかるが、ほとんど破壊されているため、処分権を国が持てば、動産の所有権処理は手間取るかもしれないが、流された家等を処理すれば、更地になるので、工事は、はかどる考えられる。平方メートル当たりのコストも、安くつく。

また、津波で破壊された地域は、元々地盤が低く、今回の地震で、更に地盤沈下しており、今後、住宅地として使うのは不適切となる。被災地における住宅地として再建が難しいと判断される。となれば、国か県が買い取って、公共地として活用するしかない(その費用負担がある(*注2))。

ということは、阪神淡路より、処理面積は広大だが、農地等も多く、案外処理はしやすいのだ。それに、都市型と違って地価は安いので、それほどの負担にはならない。国が買い取れば、失業者を雇用して、月日をかけて処理すれば、地元に金が落ち、経済の復興の足掛かりにもなる。

また避難者は、阪神淡路の大震災の60%程度であるが、仮設住宅に適切な建設地がないことなどが挙げられる。ただ仮設住宅の建設・解体には400万円程度かかると言われている。あの阪神淡路の時は、ばたばた仮設住宅を作ったが、仮設住宅があるため、次の手が遅れ、トータルとしての復興は遅れた。今回も、中途半端に丘に仮設住宅を建てれば、それだけ、本建設も遅れることになる(全ての人が残れないだろうが)。

だから、民間賃貸住宅を借り上げ住宅にして、家賃6,7万円としても、3年間借りて、半分程度に収まる。それを国が負担しても、阪神淡路大震災と比べ、被災戸数がかなり少ないので、負担は更に小さくなる。ただ、避難者の生活支援・生活再建のため、引き受けた地方財政への支援コストがかかることになる。

次に防災再構築のための新しいコストはかかると思われるが、それは数年で処理する性格のものではなく、長期に解決するものと考えれば、復興費用とは別物だろう。せいぜい土木調査と今後の対策費検討に費用がかかる程度だろう。グランドデザインに基づき、時間をかけて、じっくり取り組むべき性格のものだ。それに、そのほうが地元に金が落ちる度合いも高い。

問題は、福島原発の事故だ。福島原発の事故の処理費用は、東電が負担するとしても、国が原発を推進してきた事情があるから、政策に関与してきた国が、ある程度負担せざるを得ない。

一次処理には、水蒸気爆発による放射能の拡散する半年あるいは1年かかり、継続的な二次処理(3年程度かかると言われる)を含めると、その費用は大きくなる。つまり今回の震災に余分なのは、福島原発の事故処理コストと言うことになる。政府が戸惑っているのは、そういう事情が大きい。

更に処理コスト以外の大きな問題は、事故により、原発は、今後使い物にならないし、廃炉にせざるを得ない。そうなると、電力供給が30%カットされるため、火力発電で若干補うことができても、全てをカバーできない。

また水蒸気爆発による放射能の拡散が続くため(米国の調査では、80キロ圏内の汚染は5月になっても続いている)、周辺住民を避難させるコストは発生する。それは本来、東京電力が負担すべきものだ。

ただ、東京電力に、それができないとなると、国が肩代わりすることになるが、国民の理解を得られるだろうか。東京電力は、一応、民間企業なのだ。それゆえ、税金や料金の値上げは認めないだろう。

そして、結果的に、原子力発電の事故は、首都圏・関東圏のスケールダウンに迫られるということにつながる。むしろ直接的被害より、東京圏・関東圏に対する影響が大きく、経済活動の停滞を招きかねない。

以上を総合的にに考えると、被害総額を、どのように考えて計算するかで、数字が大きく異なってくる。つまり直接被害だけの場合と、間接被害を含めるかということになる。25兆円というのは、そういうものを含んでの計算と考えれば納得できないこともないが、国の説明はそうではなく、直接被害としているのはおかしいと感じる。

それも、福島原発関係を計算外としているのは腑に落ちない。困ったことだが、過大な数字に見せたい人々がいるのだろう。今回は東京圏に近いこともあり、政府関係者は、阪神淡路大震災の時より危機感がより強い。そういうことが過大な見積もりになっているのだろう。

つまり、国や県のやることは、インフラ・ライフラインの再整備、瓦礫の処理、防災・減災のための基本整備と調査、被災地の買い取り、避難者のために仮設住宅の建設は不要だが、民間賃貸住宅の借り上げ負担及び協力地方に対する負担金及び避難者の生活再建費用が必要になる。更に被災地の地域経済の再生のための支援も大切だ。ただ生活再建には、義援金も使われるから、その分、国の負担は小さくなる。

これだけなら、そんなに膨大な予算を組む必要はない。福島原発関連の問題を国が一部負担処理しても、復興予算全体で合計で6~7兆円程度(3年間合計)になる可能性がある。また仮に原発の処理費用等や、その他の補償関連費用も、東京電力で処理しきれない場合、国が面倒を見るというような場合(その場合は、東京電力は準国有化)、復興予算は最大9~10兆円程度(3年間合計。準国有化コスト含む)になる可能性はある(*注3)。

それでも、これらの費用は、財政の厳しい日本は、政策の見直し、リストラをしなければ、更に悪化させる要因になりうることは間違いない。世界は、日本の財政の出方を注視している。国は、シビアーな積算を公開しなけば、世界からも、国民からも理解は得られないだろう。

また、災害時に、何でもかんでも、国に頼る考え方は間違っている。昔は、自然災害は自助と共助がほとんどだった。国の役割は、本来、制限されるべきものだ。そのため、損害保険制度、各種災害共済制度の確立が望まれる。国の税金から、被災者支援金が支払われる仕組みは、あまり拡大してはいけないだろう。

*注1

但し、被害金額が、そのまま復興費用ではないとも言っている。

*注2

国土交通省は、震災前の時価で買うべきだとしているが、それはおかしい(福島の原発関係除く)。経済価値の無い物を価値あるものとして買い上げるのは問題がある。支援は、買い上げた土地で展開する事業における優先雇用とかでやるべきだ。

*注3

避難範囲としているのは、原発から20㎞範囲内(8万件)。避難範囲を拡大すれば、補償金額は拡大する。また不動産の買い取りは、原発関連は、事故前の不動産価格で引き取る必要があるだろう。避難範囲が拡大すれば、更なる処理費用が上積みされるが、ここには含まれていない。

*追記

問題は、風評被害等、間接被害が大きいことだろう。そこに予算を投じる余裕は国にない。それは民間企業や国民の負担になる。経営が苦しくなったところも出れば、失業者も出るだろう。つまり、長期的に電力供給が十分でなければ、産業の縮小も検討されねばならない。水質汚染の問題もある。生活できなければ、産業は成り立たない。東京圏・関東圏エリアの再生の方をどうするという国家的課題は残る。

結果的に、西日本へ民族大移動の可能性もある。橋下大阪府知事の主張する「大阪都構想」が夢物語でなく、現実化するかもしれない。その場合には、経済の立て直しを図り、財政とのバランスを考えながら、どうしていくか難しい問題だと思う。政府は、正直に苦境を語り、国民の納得を得られないと、国の建て直しは難しい。いずれにせよ、国にとっても、国民にとっても正念場だ。

*平成23年4月17日追記

政府は、東日本大震災の復興のために、一次補正予算を組んだ。これ自体は理解できるが、二次、三次で、更なる膨大な予算が必要と言っている。果たして、そうだろうか。震災後、どのようなプランに基づくのだろうか。それが確定するには時間がかかる。

多分、瓦礫の処理と仮設住宅の建設で、本年は終わる。何も決まっていない段階で、増税とか、復興国債とか言うのはどうかしている。もちろん、国民に対して予告という点では、復興債とか増税は、アナウンスメントとして意味があるのかもしれないが、そのためには、復興プランに基づく、見積もりの公表が求められる。

また復興の内容は、基本的に人への支援は必要だが、それも行き過ぎてはいけない。あくまでも自立を助けるのが国や県の役割だ。国や県は、まず現実的で、夢のある未来像のプランを提供することに価値がある。

更に言えば、自民党等が狙っているという公共投資だけが、被災地を豊かにするとは限らない。お金をかけたから、必ずしも復興するのではないことを押さえておく必要がある。金のかかるプランばかりが、復興にいいとは限らないのは、阪神淡路大震災で実証済みだ。

つまりハードを立派にしても、運営コストにお金がかかり、無駄が発生するのは、他の公共投資と同じだからだ。結果的に、被災自治体のその後の財政が厳しくなる。今回は、そのようなことが起こらないようにする必要がある。

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