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2011年6月 5日 (日)

宗雅と抱一

今回は、宗雅と抱一について、少し触れてみよう。彼らは、江戸時代の中期から後期にかけて、花開いた文化の魁だ。

まず宗雅とは、酒井雅楽頭(うたのかみ)家二代目姫路城城主、酒井忠以(ただざね、1755~1790)の号である。彼は、兄と慕う、松江藩主、松平不昧(ふまい)に刺激されて、茶の湯を愛するようになる。不昧については、いずれ詳しく触れてみたいと思うか、当時、かなりの文化人であったようだ。

その不昧に対して、茶道具について、いろいろ問いあわせして、教えを乞うている。その往復書簡が残っているのだが、不昧が朱書して回答しているのは、まるでテストの結果をチェックする先生のようだ。そして、その朱書に対して宗雅は喜んでいる風にも取れる。それほどに心酔して、自らを小天狗と呼び、不昧に対しては、大天狗と呼んでいた。仲のよい先輩、後輩の関係が彷彿とさせられる。

こういうことに熱中したのは、藩政や、幕閣としての重責に対する気分転換の手段であったかもしれない。現代であれば、経営者が、そのストレスを発散させる趣味ということになる。ただ、彼の場合は、かなり質の高い遊びだったようだ。

また祖父、忠恭(ただずみ)は、新しい文化には関心を示し、明楽の楽器の取り入れにも関与しているから、そういう家風が影響していることもある。明楽の楽器は、以前、聞いたことがあるが、少し変わった感じの音色だった。

そういう家風の影響か、宗雅自身も、多くの茶会を催し、そのため、多くの道具を蒐集したり、自ら製作もしたりしている。更に、絵画については、独自の手法を編み出すなどの工夫(中国の写実的画法を踏襲しながらも、西洋的画風の取り入れ)もしている。

絵以外には、大名仲間や家臣たちと、俳句や和歌を楽しんでいる。ここら辺になると、少し道楽が過ぎるのではないかと思えてくる。今でも、若手経営者が集まり、いろんな遊びをしているのと似ている。でも、経営に役立つ遊びでないことが多い。趣味とは、そういうものだと言うかもしれないが、業趣一体でなければ、意味はない。

ただ、彼の下で、11歳から教えを受け、酒井家四代(忠以、忠道、忠実、忠学)に仕えることになる河合道信(後家老になり、寸翁と称する。姫路藩の財政改革に力を発揮した)にも、数寄者としての見識を鍛えたという。ただ、宗雅は、文人大名と呼ばれたが、あり余る才能も開花せず、36歳で亡くなっているのは惜しいことだ。

しかしながら、彼の弟、酒井抱一(1761~1828)にも、大きな影響を与えている。弟故、その気楽さから、より書画、文芸に嵌り、37歳で出家している。彼は、武家文化に捉われず、多くの庶民文化に触れ、当時の多くの文化人に接する。そういう意味では、抱一の方が、より文化を道楽的に楽しんだと言えるだろう。

すなわち、狩野派の技法を学ぶかと思えば、浮世絵も学んだりしている。その結果、描くものは、風俗画も描けば、仏画も描いた。更に貪欲に、応挙や若冲の手法も取り入れようとする。若干、だぼはぜの感も無きにしも非ずだが、いろんなものに関心を持ったということだろう。

その後、100年前の画人、光琳に心酔し、「江戸琳派」なるものを創始までしている。光琳に、つけ加わったものは、いわゆる教養という遊びであろう。絵画に、自分の哲学を持ち込み、より洗練されたものにしている。彼の哲学的見方を付加して、楽しんでいるのだ。それは確かに、外見は似ていても、琳派のものとは似ても似つかないものかもしれない。

それは、いつの時代も、後世の者が楽しむ、その時代の解釈という楽しみ方であろう。そして、彼の優れている所は、更に、それを商業ベースにしたことだろう。絵画から派生して、櫛、盃、印篭等、各種調度品まで、広げて、文化から文明に発展させた。つまり商品開発の名手とも言える。これらは、当時のヒット商品になっているということだ。

そういう意味では、彼は、兄からの薫陶を受けたものを、より発展させた功労者と言うことにもなる。これらを見ていくと、文化も文明というものは、人から人に受け継がれるものが、人によって、新しく解釈され、再構築され続けるものと言うことだろう。

*追記

なお、下記美術館で、酒井抱一生誕250年記念として、展覧会が開催される。

『酒井抱一と江戸琳派の全貌』 粋と雅の競演、待望の酒井抱一大回顧展

姫路市立美術館 平成23年8月30日より10月2日まで。

千葉市立美術館 平成23年10月10日より11月13日まで。

細見美術館    平成24年4月10日より5月13日まで。

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