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2011年10月18日 (火)

柿と狂言『柿山伏』

今年は小さい柿の木に比較的多くの実がなった。父が植えたものだ。但し、木自体は、あまり大きくならない。それは父が盆栽のように、刈り込んだからだ。本来、果樹は、そのように育てるものではないだろうに、余計なことをしたものだ。もしかしたら、大きくなるのを嫌がったのかもしれない。

今年は、実は、比較的たくさん出来たが、結局食べきれないので、放置して、鳥の餌になっている。甘く熟した頃を狙ってやって来て、食べられてしまっている。果物は、完熟したものを食するのが健康にいいそうだが、鳥は、それをよく知っていて、人間様の上前をはねる。それでも、結構食したので、問題はない。

ところで仏教の宗派に修験道というものがあるが、そのお坊さんを山伏という。山伏と言うと、天狗が山伏に化けて、登場すると云われる。あるいは、鳶の姿になるとも云われる。なぜ、天狗が山伏や鳶に化けるのだろうか。今回は、そのことには触れずに置く。

山伏を扱った狂言で、『柿山伏』というものがある。登場するのは未熟な山伏だ。やっと修行を終えた山伏が、帰る途中で、空腹になる。いくら修業したとはいえ、山伏も人間。山を下りれば、空腹には耐えがたい。

そこで、巡り合ったのが、美味しそうな、たくさんの実をつけている柿の木。辛抱堪らず、柿の木に登って、柿を盗み食い。小さい頃、父には、「柿の木には決して登るなよ。あの木はさくい(折れやすい)からな」と、よく注意を受けた。父は登ったことがあるのだろうか。

後で、聞いたところでは、子供の時分、父の友だちが、柿の木から落ちて大けがをしたそうだ。でも、この山伏は、空腹には耐えられず、そんな心配もせず、思わず登ってしまったのだろう。

話を戻そう。この山伏は、一応、所望するため、畑主がいないかどうか確かめたのだが返事が無い。それで妙に安心したのか、今度は勝手に取って食べようとする。そこで、石を投げてみるが、なかなか当たらない。それで、止む無く、登ったのであった。ところが、運悪く、そこに百姓の畑主が現れる。足跡を見つけて、山伏発見。

山伏も気づいて、慌てて、すぐ隠れる。これはこれはと思った畑主は、知らない振りして、ふふん、ちょっとからかってやれと、「そこにいるのは人ではなくて犬だ」とか、「人かと思ったら鳥か」とか、「鳥かと思ったら猿か」と、次々言うので、山伏は、その度に、鳴きまねをして誤魔化そうとする。

そして、遂に、「鳶だった」というものだから、鳶の鳴き声をするが、今度は「飛べ」と言う。そんなことはできないと思いつつ、しつこく「飛ぼうぞ、飛ぼうぞ」というものだから、ついついその気になって、柿の木から飛び降りた。結果は一目瞭然。腰を強く打って、「ギャー」。

笑って去ろうとする畑主に対して、家に連れ帰り看病しろという始末。取りあわないでいると、山伏の説伏で、体がすくんでしまうので、止む無く背負うが、隙を見て、振り落とし逃げてしまう(*注)という筋。

お腹が空くと、人間のやる事は、変わりしませんなあ。でも、最近の大量に果物を盗む人間と比べたら、可愛いものだ。どっちみち、余るものであれば、カラスにあげても、人間様に与えても同じこと。不思議だけれど、世の中、そういうものもあるにはある。

でも、悪いことはできまへん。流風も、子供の頃、悪ガキの友だちと、遊び疲れて、お腹が減って、畑で、日頃、苦手で嫌いなトマトやキュウリを黙って頂戴したことが一度か二度ある。普段は嫌いな野菜なのに、そういう時は、おいしく頂ける(笑)。スリルと空腹には、人間勝てません。

ところが、家に帰ると、母に随分叱られた。実は、その農家の人は、食べているのを見て、母に連絡したらしい。「言ってくれたら、いくらでも上げるのに」と。そのことは、母から父に伝えられ、お尻をぶたれ、散々な思い。嘘をつくのと、他人の物を盗むのは家の恥、と言った父の顔を今でも、時々思い出す。4歳か5歳の時の話なのに。この狂言は、子供向けに作られたものかもしれない。

*注

但し、別の話では、未熟な山伏のため、説伏は効かず、畑主に背負われて、終わりというのもあるようだ。

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