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2011年12月30日 (金)

2012年動向予測 国内編(三) 税制

2012年動向予測 国内編(二)の続き

⑨税制について

基本的に、自民党政権が悪化させた財政の立て直しには、民主党政権は苦労するだろう。ただオーソドックスな政策は、現在野党の自民党も反対はできない。彼らがどのように対応するか、国民は静かに見守っている。

財政は依然厳しい状態で、個人金融資産をあてにした国債等増発は極めて危険な発想だ。やはり残高を減らしていくことが必要だ。それには国民の理解も必要だ。このままの状態が続けば、将来の世代の生活にどう響くか、広報していくことが求められる。

まず、企業、個人事業に対する各種補助金は全面的に廃止が望ましい。補助金は、あまり費用対効果がよくない。補助金は基本的に天下り団体のためのものであろう。これは国だけでなく、地方財政においても同様のことが指摘できる。

そして、産業界や国民には辛いところだが、増税は避けられない。ただ言えることは、ここ十数年、減税をしすぎた。それを戻すしかない。今は、たびたび増税と報道されるが、バブル前の税制に戻すと考えた方がいい。

まず所得税は、累進課税の強化が望ましい。かつて昭和63年頃には税率区分が15段階もあったのに、今はたったの6段階。やはり高所得者に減税しすぎだろう。そのしわ寄せが中間層に税負担が重くなっているのは、政策的に矛盾している。中間層に厚みを持たせて国に活力を蘇らせるには、累進課税の強化は必要だ。

所得税の最高税率は昭和63年ごろは70%だったが、現在はは800万円超の所得に40%。明らかに低すぎる。また逆に、ほとんどの人(80%程度)が低い税率でしか、税を納めていない。これでは、税収が増えるわけがない。

多くの人は適正な税を納めず、公共施設等をタダ乗りしているのが実態だ。とても無理で矛盾した歳入・歳出構造になっている。早く、昭和63年代の税率構造に戻すべきだ。政府は、累進課税について腰が引けているが、早くやるべきだ。海外に金持ちが逃げるというのなら、そうすればいい(そのためには国籍を捨てる必要がある)。

法人税の減税についても、必要はないだろう。5%も減税してしまったが、ほとんど意味をなさないだろう。なぜなら主張していた多くの大企業は海外に進出していく。国内需要がせいぜい横ばいか微減なので、海外市場を開発するしかない。それは途上国中心なので、国内で生産していてはコスト競争力に限界がある。

すなわち、スピード展開を考えれば、市場に近いところで、生産するしかないという選択を迫られる。最早、国内空洞化などと言っておれない。ということは、法人税減税は、あまり意味を持たなくなる。うるさく言う財界は、どうかしている。法人税が高いから競争に勝てないというのは詭弁だ。法人税減税など本来不要だ。いろんな助成で、実効税率は業界によっては非常に低いことを一般国民は知るべきだろう。

また、中小企業に対する減税も見送られるべきだ。各種税の穴を見つけて、納税逃れをしている企業が圧倒的に多い。欠損法人は、公的なものをタダ乗りしている。あるいは利益を捻りだす出す努力が不足している。納税意識が低すぎるのだ。それは経営者に問題がある場合が多い。むしろ整理すべき企業が多い。

むしろ全体としては、企業活動の質による法人税の多様な税率も求められる。つまり、政策的には、頑張っている担税力のある企業に対して、多くの支援をするべきだろう。納税意識の低い中小企業は社会の悪と考えて、整理すべきだろう。

そんなところに支援する国の政策は疑問が多い。特に、金融庁の政策は、延命策を講じるだけで、全く意味がない。明らかに誤っている。企業のスクラップ・アンド・ビルド政策に立ち戻るべきだ。そうしないと国全体に活力が漲ることはない。

財産税についても、政府の政策は明らかに混乱が見られる。贈与税の控除幅を大きくして、高齢者から若い世代への移転を望んでいるようだが、あまり大きな成果は望めない。それに住宅に限定しているのだから、ほとんど意味はない。贈与税控除をあまり拡大するのは望ましくない。

財産税も、基本的には、そんなまどろっこしいやり方をしなくても、所得税同様、昭和63年ごろの税制に戻せばいい。例えば、相続税は、現在、税率区分は6段階で、3億円超に対して、最高税率50%だが、昭和63年代は、税率区分が14段階で、5億円超は最高税率75%だった。早く、その水準に戻すべきだろう。

また基礎控除も、かつては、2000万円プラス400万円に法定相続人をかけたもの(3200万円)だったが、現在は、5000万円プラス1000万円に法定相続人をかけたもの(8000万円)になって、ほとんどの人が、税を納めていない。この控除自体も、元に戻すべきだろう。

それ以外では、新税の検討が急がれる。情報化・国際化時代に対応した税制を確立しないと、歳入を増やすことは、ますます難しくなる。それに加えて税外収入を増やす工夫も必要だろう。

最後に、消費税は上げざるを得ない。これは本来、他の税目と性格が異なる。ピラミッド型人口構成から、逆ピラミッド型人口構成になっている現在、従来の社会保障体制を維持するなら、現役の将来を考えれば、当然のことであろう。

上げるのは、早ければ早いほどいい。政府は、2段階で上げる素案を出し、14年に4月(*注)に8%にし、15年10月に10%にするようだが、遅すぎる。党内の無知な議員が反対しているようだが、いくら政治が妥協の産物としても、あまりよくない。消費税問題は、自民党政権時代から延々と先延ばしして、財政危機を招いている。まさに、ゆでガエル状態だ。

国民には、消費税は、高齢者が増える時代には、相互扶助的な社会保障体制充実のため、上げることを説得すべきだ。政府は、やっと、そういう広報をしているが、今からでも遅くないので、国民の同意を得るべきだろう。大半の国民は、消費税増税を止むなしと見ているのだから、その使い方をしっかり仕組むべきだろう。

現役世代の社会保険料を負担軽減のため、皆で負担する消費税しかない。今般の状況から、消費税を上げることに抵抗する議員たちは、早く辞めていただきたい。危機感の足りない議員は、いらない。国の将来を何も考えていないことが明らかだ。

なお、これらの一連の税制改革が実現するのなら、主たる現役世代対象(18歳から50歳まで)の貯蓄優遇税制の確立も望まれる。

*注

その後の首相の発言によると、2014年10月に延期されている。

2012年動向予測 国内編了。

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2011年12月29日 (木)

2012年動向予測 国内編(二) 政治

2012年動向予測 国内編(一)の続き

⑥日本の政治動向

日本の政治は、長い混沌の時期を過ごしている。長期、自民党政権のマンネリ政治が続いた結果、保守勢力が大きくなりすぎて、国家の勢いが停滞した。それに飽きた国民が民主党政権を選択したが、何分、政権に不慣れ。それでごだごたしている。

選挙でマニュフェストを乱発したが、国にお金がないから、夢物語になって崩壊。でも、こんなことで国民は怒らないかもしれない。民主党のマニュフェストは半信半疑で受け取っていたから、ある程度、予測していた。未経験の政権運営は、確かに困難だろう。

鳩山政権では自らの気負いから、足元をすくわれ、同盟国の米国に不信感を与え、沖縄問題を複雑にした。それに代わった菅政権では、東日本大震災と福島原発事故と、前代未聞の災害処理対応に追われ、本来の政治は何もできなかった。

菅前首相の場合は、原発事故対応でいろいろ批判されているが、基本的に胆力が不足していたようだ。財務大臣とか外務大臣等、主要の大臣や党の主要な役職の経験もなく、首相になった、その苦労は分かる気がする。ただ現実は待ってくれない。確かに、民主党政権は、ついていないかもしれない。だが運を引き寄せるトップでもなかったのだろう。

それに、国会は、衆議院では民主党が大勢を握るものの、参議院では、野党が多くを握るため、いわゆる、ねじれ現象が生じている。これは国民の選択で、そうすることで、与野党の政策がより練られると思ったが、大きな勘違いであった。国民も、大いに反省しなければならない。

国会のねじれは、国民にもメリットが小さいと分った。日本の政治は、そこまで熟成していない。結果的に、与野党で足の引っ張り合い。国民は、ねじれの選択は、今更、誤ったと判断するが、どうしようもない。せいぜい次の選挙から改めるだけだ。

さらに民主党では、政争のための内部抗争。そういうところで、野田首相が選ばれた。彼は言葉を選び、慎重な政権運営を心掛けている。そういう政権運営は、どうしても官僚重視のやり方になる。もちろん官僚の出す提案がすべて悪いとは言えない。優先順序を決めるのは政治家だ。問題は、それができるかにかかっている。

例によって、マスコミは、重箱の隅を突っつくようなことをして、足を引っ張るが、海外のメディアは、自国の国益を考えない日本のマスコミの後進性を笑っている。いい加減、大人の報道をしてほしいものだ。政治家を調子に乗らない程度に褒めて使うことも必要だ。

基本的に野田政権は続くだろう。続けざるを得ない。慎重な政策運営をすれば、彼を辞めさせる理由は見つからない。それに国民は短期政権はメリットが国民にもないということを自民党政権から続いた過去の短期政権で嫌というほど味わった。

経済政策は停滞し、外交も、短期だと成果は全く出ない。海外から相手にされない状況が続き、官僚が、ちまちました外交を続けると、日本にとって、マイナスだ。

消去法で選ばれた野田首相だが、地味ではあるが、彼の話していることはわかりやすいし、論理的にも誤りが少ない言い回しをしており評価できる。多分、海外も評価しているのは、そういうところにある。

ただ、民主党の広報の弱さは未だ解消していない。何をやりたいのかを十分、国民に広報すれば、マスコミも、おいそれと、いい加減な批判はできなくなる(もちろん、完全な政策などはありえないので、批判しようとすればできる)。

アキレス腱があるとすれば、民主党の支持母体の労働組合だろう。特に官公労は問題が大きい抵抗勢力だ。国家公務員の人件費削減に対しても抵抗しているが、これを許すことはできない。彼らに対する交渉力が、どのように発揮されるか。

国の予算は、社会保障と国と地方の公務員の直接・間接の人件費より成り立っているのが実態だろう。赤字国債を出して、公務員の俸給を支払っている。公務員の人件費の7.8%の削減をしなければ、いずれ30%、40%のカットが待ち受けているのに呑気すぎる。財政のことが理解できたら、本来、抵抗できないはずだ。

もちろん、公務員と言ってもピンからキリまである。比較的高給を取っている上級職公務員に、まず切り込む必要があるかもしれない。そんなことを言えば、やる気に影響すると言われるかもしれない。でも、このような状況を作ったのは上級職公務員だ。

消費税を上げて財政再建に取り組むのなら、公務員の人件費カットにも協力すべきだろう。民間企業では、すでに倒産しているのだから、俸給がもらえるだけありがたいのだ。

しかしながら、もっと大切なことがある。それは公務員の役職を大幅になくすことである。国や地方は、国民に奉仕する公共サービスであるのだから、本来、国民満足のためには、いち早く国民の意見を吸収して、それを活かす組織でなければならない。

そのためには、ピラミッド組織では駄目で、フラットな組織にする必要がある。組織を簡素化して、役職を整理する必要がある。そうすれば、副次的効果として、人件費は大幅に圧縮できる。先進的な地方自治体では、すでに成果を上げている。俸給カットにも工夫がいるのだ。

人件費カットの問題点は、カット分は、国債残高を減らすことに使われるべきということ。その他の予算に振り替えるのなら、カットの効果は薄い。民主党政権は、そのことを理解していないことを危惧する。

⑦政界再編は起こるか

民主党の人たちは、やっと政権のうまみを多くの人が感じ始めている。政権にいなければ、やりたいこともできないと。ただ、一部の議員たちが、消費税アップをマニュフェスト違反として、離党するらしいが、選挙目当ての離党は、あまり宜しくない。私利私欲の人たちだろう。

多分、その他の非主流勢力は、政権を手放すデメリットを感じて、政権を何とか維持しようとする力が働くかもしれない。その場合は、政界再編の可能性は薄くなる。今の流れだと、多分、そのようになる。政界再編は、当面ないと見る。

ただ、民主党の代表は2年任期と短い。野田氏は、管首相辞任を受けて、代表選を勝ったので任期は、2012年9月までだ。次回の代表選から3年程度に伸ばすようだが、それでも短いだろう。政権党は、首相が代わる時だけ、代表選をやればいいのだ。

未だに、野党の時の仕組みを継続するのは全く理解できない。また選挙をするのだ。政治日程は詰まっているのに、呑気に選挙する。代表選の仕組みを変え、民主党は、代表の任期を4年にすべきだろう。そうしないと、いつも政権が、党内権力闘争のため、浮き足だち、ごたごたしているイメージはぬぐえない。早く党規を改正すべきだろう。

他方、野党の自民党も、若返りを図りつつあるが、政治理念的には保守系、自由主義系、リベラル系の三つがあり、政策的に、ぼやけてしまう。それに、党の改革派を潰している。改革派には、比較的優秀な議員がおり、彼らが腐ってしまえば、自民党の将来はない。

さらに野党としての資金繰りも悪化し、早く政権に戻りたいから、その辺で、齟齬が生じる可能性が高い。貧すれば鈍する典型であろう。よって早く解党した方が自民党にとってよいだろう。自民党よ、さようならというフレーズがいずれ流れてくるだろう。新党を作って、新しい理念の下に、集結させれば、一大勢力を作るのに、そんなに時間はかからないだろう。

その場合は、政界再編の機運が起こる。自民党が解党せず、何もやらなければ、ただただ衰退して、万年野党になるだろう。それは公明党も同じだ。公明党には、政策提言できる人材がおらず、存在価値は薄く、賞味期限が終わっている。同じく解党して、現在の支持母体にとらわれない新党を作って、人材を広く集めるべきだろう。

みんなの党は、今後の政局の要になる可能性が高い。大阪では、大阪維新の会が勢力を伸ばしており、その主張は通じるものがある。極論も多いが、政策の練り直しがなされて、実際的なものにバージョンアップがされれば、勢力は伸長するだろう。

⑧財政再建のための歳出削減

自民党政権は、減税で歳入を減らしておきながら、歳出を逆に膨らまして、財政を極端に悪化させてしまった。基本的に、国際経済の動きを十分に理解していなかったためで、財界に突き上げられて、政治家の経済音痴が招いたと言えるだろう。最近の財界と言うのは、どちらかというと、目先しか見ていない。政治献金がらみで、彼らの言葉を信じたのが、大きな間違いであった。

民主党政権は、税収構造をかつての仕組みに戻して税収が増えるようにしておくとともに、歳出削減に踏み込む必要がある。それは政策の整理であろう。優先順序を明確にして、事業を整理するしかない。

残念ながら、2012年度の予算では、それができていない。東日本大震災や福島原発事故処理に追われて、それどころでなかったことは分るが、政治的妥協もしくは官僚との交渉負けの感じは拭えない。

また、民主党政権は、折角、事業を整理・効率化して財源を見つけても、また新しい政策に投じており、これでは財政再建はいつまで経っても達成されることはない。やるべきことは、まず見つけてきた余剰財源で国債残高を減らすことが求められる。

昔、発行したものが利率が低いとか高いとか、みみっちいことは言わずに、早期償還も辞さない覚悟で臨むべきだろう。そして、その減り方の状況を国民に示すべきだ。そうすれば国民に国の努力が認められる。国債残高が積み上がる限り、国は何もできないと国も国民も知るべきだ。

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2011年12月28日 (水)

2012年動向予測 国内編(一) 経済

今回から、2012年動向予測 国内編。

③日本経済の動向(2011年と基本的に同じ)

2011年は、ユーロの崩壊前兆の動き、米国債の格付け下落、東日本大震災等、色々あったわけだが、2012年も、その流れの影響を国内も受ける。ただ、貿易面では、欧米中心からアジア中心に転換が成功しつつあり、改善の方向にある。

しかしながら、円高の影響を受けるため、輸出産業は、従来の発想の延長では苦境につながる。経団連トップをはじめ、鉄鋼界、自動車業界、家電業界には、まだ輸出志向が強いが、アジアで競争に勝つには、市場に近いところに、工場を展開するしかない。

企業戦略としては、海外で競争に打ち勝つ戦略商品は海外で生産し、付加価値の高い商品は国内で生産ということになる。確かに、自動車とか家電商品は、国内市場では飽和状態にあるが、開発の余地がなわけではない。それは各社の知恵の出しどころであろう。

内需の方は、団塊の世代の退職による縮小再生産の流れは止まらず、不況感は止まらない流れは変わらない。ただ、国内消費が消滅したわけではない。これを不況と考えず、新たな変化と捉えればいい。すなわち、国内の需要構造が変わっただけなのだ。

残念ながら、主たる消費者が変わり、消費のスタイルが変わっているのに、企業がそれについていっていないと言うこともできる。今まで、惰性でやっていたマーケティングを根本的に見直すことで新しい需要の創造は可能であろう。ただ、目の肥えた中高年を相手にするのだから、中途半端な付加価値では、共感は得られないと覚悟すべきだ。

よって企画開発する人材の年齢構成も見直しが必要だ。まとめて具体化する作業は若い人に任せてもいいが、感覚価値については、対象とする市場と同年代か、少し上の意見を取り入れた方がいい。若い人は、それに現代的な価値を付加するか、ミックスする思考が求められる。

最終的には、比較的耐久性がよく、国内で作られた品質の良さを求めるようになるだろう。基本的に、全産業で、長く使えて、付加価値の高いモノづくりが求められる。いかに手間暇かけて、大袈裟に言えば、子孫に残せるようなモノづくりするかが、再度問われるようになる。

以上のことを整理すれば、アジア諸国には、市場に近いところで戦略商品を作り、一部富裕層には、日本から輸出する。そして、国内市場に対しては、顧客層を見直し、新たなマーケティングにより、市場を再度捉え直して、付加価値のある商品・サービスづくりをする。そうすれば、産業の空洞化は防げる。

また、貿易面では、関税で、他国からの輸入を減らすことは段々難しくなる。ただ市場開放しても、選択するのは消費者だ。国内の生産者は過度に不安を持つことのないようにしたい。もちろん、国内産業を保護しつつ国際競争力をつける必要がある。

TTPの議論が騒がしいが、基本的に市場をアジア、広くは環太平洋に広げる発想が求められる。こういう考え方は、既得権をもった古い産業は抵抗しがちだが、やる気のある企業にとっては、新しいチャンスだ。

もちろん、TTPのような多国間自由貿易の仕組みは、一挙には難しい。しかし、いつ国が市場を開放しても対応できるように準備しておくことは、企業力を強めることは間違いない。

懸念されることは、TTPは米国の無条件自由貿易の要求に近い。ところが、彼らは国内産業に多額の補助金を投じて、海外にダンピングしている。それは交易において、フェアではない。TTPへの取り組みは慎重な交渉が求められる。

いずれにせよ、市場を広げる発想は求められる。TTPに参加するまでに、多くの二国間で、FTAを成立させ、その中で、国内調整を図りながら、自由貿易(ここで言う自由貿易とは、限られた範囲内での自由貿易である。それをブロック経済と批判する人たちがいるが、戦前のブロック経済と状況は大きく異なる。また完全に理想的な自由貿易は存在しない)の有難味を享受しつつ、最終的に、多国間自由貿易に切り替えるのがベストと考える。

なお、東日本大震災に対する復興需要は、一定程度経済を押し上げるが、全体に及ぼす影響度は、小さいと見る。なぜなら、復興需要は、ほとんどが復旧事業であり、マイナスをゼロに戻す作業に過ぎない。

④原油価格の動向

原油は、毎度のことだが、予測しがたい。ユーロの崩壊の影響を受けて、アジア市場が縮小する可能性もある。その場合は、原油市場は下落する。

日本としては、資源リスクがあるため、脱原油政策を推進すべきなのだが、福島原発の事故により、日本では原発を今後、推進することは難しくなる。電力会社は、再度、火力発電に取り組んでいるが、今後も原油を使っての火力発電がいいか問われる。

それで、最近注目されているのが、天然ガスだ。シェールガスと言われるものだが、最近の技術で採掘が可能になった。米国は、シェールガスの宝庫であるので、今後、期待されるが、米国としては、資源戦略として、国内の資源は、できるだけ海外に売り渡したくないようだ。

だが、シェールガスは、別に米国だけにあるものではない。オーストラリアでも試掘されて、その権利を日本の商社が持つようだから、ある程度は輸入可能になるだろう。米国も、今後の国内経済を考えると、輸出した方が、経済の立て直しに貢献すると考えれば、狭い了見で考えてほしくない。

日米同盟と言うのなら、日本にだけは供給してほしいものだ。ただ、いずれにせよ実現までには、後数年かかるようだ。そうなれば、原油の価格に少なからず影響を及ぼすだろう。

⑤金利の動向、為替の動向、株価の動向

基本的に、これらは予測は難しい。本年から、具体的数字による予測を止める。プロのエコノミストでも、その予測は当たらないのに、流風ごとき素人では、具体的数値を当てることは不可能に近い。それは思惑の世界だからだ。もちろん、長期としては傾向があるが、単年度で予測することは不可能に近い。流風が考える傾向について、以下に少し記す。

金利の動向は、ユーロの崩壊の可能性、米国の不況、アジアの停滞などで、金利は低く抑えられる傾向が続くだろう。

為替の動向は誰も予測できない。ただ、2012年は、大きく振れるかもしれない。それはユーロの動き次第だ。円高は、ある時点で一服するかもしれない(底を打つ時期は不明)。

株価の動向も、振れ幅の大きい相場になるかもしれない。ただ、日本の株式市場は、短期的には、底を打つかもしれない。

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2011年12月27日 (火)

2012年動向予測 国際編(五) 日本外交

2012年動向予測 国際編(四)の続き

②日本の外交(概ね2011年の見方と変えていない)

21世紀は、基本的には、基本的には、アジアを中心として、環太平洋に経済のウエイトが高まる。当面、中国、インドを中心として、その周辺国家の成長に期待がかかる。今後の外交は、やはり発展途上国、後進国の人口ボーナス期の見極めが大切と思う(*注)。

全体としては、先進国の財政破綻の波の影響を受けながらも、数十年は、成長していくだろう。すなわち、ASEANプラス3(日中韓)、ASEANプラス6(日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランド)、APEC、そして最近、騒がしいTPPへと拡大していくイメージだ。

その中で、TTP(環太平洋戦略的経済連携協定)の名が表すように、環太平洋地域が世界経済の中心になっていく。そこで、米国と中国が綱引きしているのが実情だ。日本としては、両方に参加して、世界がうまく回るように仕組めばいい。それぞれの国には国益があり、その調整を合理的にやればいい。

米国は合理的かと言えば、必ずしもそうでないだろう。本音(功利)のためには、柔軟に、ある意味、ご都合主義で建前(理想論)を簡単に捨てる。日本は、彼らの表向きの発言をまともに受けすぎて、振り回されてきた。米国は、基本的に、理想より功利(ビジネス)が優先する国だと考えておいた方がいい。理想は駆け引きの手段に過ぎない。ただ、そればかりだと、多くの国はついて来ない。

その点、日本は両方の気持ちが分かるので、両者の妥協点を引き出しやすい。日本は、従来、アジアで、そのように活動してきたから、日本があらゆる地域経済統合グループに参加することによって、前進が可能と判断する。以上のことを、一般国民も頭に入れて、外交を考えるべきだろう。

さて、次に世界の政治動向を見てみると、以下のことがわかる。すなわち、2012年は国際的に選挙の多い年だ。すなわち、中国の国家主席が交代する。韓国(12月)、ロシア(5月)、フランス(5月)、インド(7月)の大統領選挙もある。そして、2012年11月には、米国の大統領選挙だ。

国際情勢は流動的だが、大きな枠組みが変化するわけではない。確かに、中国との関係は難しくなると予測されるが、「戦略的互恵関係」として、淡々と付き合えばいい。隣国故、歴史的には長い付き合いだ。そこでは、各種、いろんな問題が生じるのも致し方ない。

中国との純粋な同盟は無理だが、そうかと言って、敵対関係になることは望ましくない。そのことは中国も理解しているだろう。その上で、多重的かつ多面的な交流を促進する必要がある。ただ、国家主席の交代は、日中関係を難しく複雑になるのは間違いないだろう。

しかしながら、2012年は、日中国交正常化40周年であり、また以前のように政冷経冷とはならないだろう。政治的に、いかなる変化があっても、経済界は、ビジネスを、淡々とやればいい。ただし、総合的にみると、日本にとって、当面、ややメリットが薄くなる傾向は避けられない。後は、中国の出方次第だろう。

次に、米国の大統領選で、指導者が変われば、日本への対応は若干変わってくる可能性もある。米国も財政状況が厳しいので、日米間の諸案件がスムースに進まないことも考えられる。ここは、小さな誤解を招かないように、コミュニケーションを以前にもまして密にすべきだろう。

それに米国は最早、中国を敵対的ではない戦略的パートナーと考えており、競争者と位置付けていることも考え合わせ、日米関係では、外交戦略転換が求められる時期に入っている。日本としては、いろんなケースを想定し、最悪の場合の手も打っておく必要がある。それには、自らの情報入手に基づく世界の情報分析の強化による、あるべき外交戦略の確立だ。

そのためには、日本は、まず民間と協力しつつ、アジア外交を強化すべきだろう。そして、米国は、日本をアジアの窓口として、代理店とする位置づけが望ましい。米国的なアジア・アプローチではなく、日本的なアジア・アプローチを主体として、米国にもビジネスには、参加してもらうやり方が望ましいだろう。それが、政経軍における新しい日米の同盟のあり方だ。

米国は最終的に、ビジネスができて成果が出れば、それでいいはずだ。そういう意味で、彼らはジャパン・アプローチを尊重すべきだ。後は、米国が、どれだけ日本を信用するかということに尽きる。

他方、日本政府は、米国の外交戦略を注視しつつ、現実的な視点で、米国と話し合う必要がある。たとえば、米国の外交姿勢としては、対中国に対して、戦略的パートナーと位置づける一方、中国を牽制することを発想する。TPPも、その一環だ。

そのためには、インドとは、中国を牽制する意味でも、将来は、米印同盟も視野に入れておかなければならない。日本は、日本で、日印同盟も将来的には描いておく必要がある。それは結果的に、日米印同盟で、膨張する中国を牽制することにつながる。

もちろん、それは中国に敵対するものではないことは確かだ。これは膨張する中国に対して、懸念を示すアセアン、東南アジアの人々の安寧のためだ。それは、アジアの安定と平和を意味する。

また、米国は、いずれ日本駐留部隊を、海外に持っていく。その結果、日本としては、自衛隊など防衛力の再点検と再整備が求められる。国を守るのは外国の軍隊ではなく、自国の軍隊であると再認識する必要がある。もちろん、国民の認識も改める必要がある。以上のことを整えて、同盟をどうするか考えなければならない。

また日本の外交は、米国との同盟は必要だが、米国の外交を補完する役割を担うべきであろう。戦後は、日本外交は何を考えているのか、よく分からないと米国側からクレームが来たようだが、巧みな外交を展開した。

例えば、米国と敵対的な国とも外交ルートを常に確保していくことは大切である。何でもかんでも、米国に追従すればいいというのは、子供の外交である。日本の外交も改めて本格的な脱皮が求められる。

その他では、欧州(ユーロ)が主体となって、作ってきた各種仕組みや世界的な規制は一旦捨て去ることが求められる。欧州による規制事項は、彼らにとってメリットがあっても、他の諸国には、あまりメリットがない。にもかかわらず、日本の官僚たちは、何もかも受け入れてきた経緯がある。

21世紀のアジアの時代には、それに相応しい新しいルールを、日本等アジア(米国はオブザーバーとして参加もしくは主体的に参加)が主体となって、作る必要がある。欧米が作った世界標準が世界に通用すると考えるのは幻想だと気づくべきだろう。これからのアジアに相応しいルール作りに日本の主張を明確にすべきだろう。

*注

これらの国との関係をビジネスだけで考えると、多くの困難がある。それは資本不足であろう。ビジネスは、基本的に金持ちに売れという原則がある。金のないところには物は売れるが回収するのには苦労がいる。

但し、外交は、ビジネスの線路を敷くようなもの。長期的に国家にメリットがあると判断されるのなら、それは望ましいことだろう。多くの経済連携は、短期的には日本にメリットがないことが多いが、将来の「得意先」を育成するつもりで取り組む必要がある。

また、人口が多くても、今後、発展するとは限らない。特に教育の遅れのあるところは、国が発展する可能性は薄い。所詮、一部の権力者による独裁政権が、はびこるだけで、そこにビジネスメリットを長期的に見つけることは困難だ。

以上で、2012年動向予測   国際編 了。

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2011年12月26日 (月)

2012年動向予測 国際編(四) ブラジル・ロシア・中東・アジア諸国

2012年動向予測 国際編(三)の続き

ⅴ ブラジルは、やや変調に

2014年にサッカーワールドカップ、2016年オリンピック開催も、南米で初めて決まっているので、それまでは期待できる。ただ、ここへ来て、主要貿易国である、欧米と中国の変調から影響を受ける。

また、資金が集まり過ぎていることが懸念材料だ。資金が流入し過ぎて、それを止めるのに四苦八苦している。国内市場が形成されて、脱資源国家としては成功しつつあるが、中期的には発展しても、その先が見えない。

事実、課題も発生している。インフレ抑制→金利高→レアル高になっている。レアル高により、製造業が収縮している。日本と同じような課題だ。日本と同様、レアルが過大評価されているのだ。

逆に、レアル安になるとインフレの原因になる。海外市場の悪化で、交易条件が上がっても、輸出は停滞する。ユーロが不安定で、彼らが資金を引き揚げれば、どの新興国同様、危機が迫る。

対応するには、外資に依存する資金調達も脆弱過ぎるので、国内の貯蓄率を高める政策が求められる。現在は、ラテン国家特有の貯蓄率が低すぎる。これは今後のブラジルの発展を占うものだ。

また電力、輸送のインフラ整備も課題だろう。その他に、労働市場整備、社会保障の問題もある。また成長期の一時的な落ち込み期にありがちな不正や汚職の横行の問題もある。

ただ、これらは成長期の国にあるプラスの課題だ。現在、苦しんでいる先進国のマイナスの課題とは、大きく異なる。一つ一つ、課題を解決していけば、案外、明るいブラジルの未来が見える。

それに、資源国から脱皮していることもあり、中間層の厚みもあり、内需が成長する限り、急激な落ち込みはないかもしれない。でも、今の間に国の経済の質を高めることは有効だろう。成長のピークは若干伸びて、かつて2020年頃と見られていたので、ここで若干停滞しても、更に伸びる可能性がある。

ⅵ ロシアは厳しい経済運営迫られる(2011年と見方は変わらず)

ロシアは、ユーロと一体で考えなければならないのは変わらない。資源需要先のユーロが依然厳しい状態が続くので、ロシア経済は停滞するのは変わらない。2012年は、より厳しくなるだろう。ロシア経済はすでにピークアウトしたと捉えるべきだろう。資源以外の産業は育っておらず、資源国としての宿命として、プレの激しい経済は続く。

ロシアはユーロ崩壊後を睨んだ戦略としては、アジアに進出するしかない。新たな南下政策が始まったと見てよいだろう。例えば、中国東北地域との国境線では、すでにロシア内に中国経済が浸食している。経済的には、ロシア極東は、中国に呑み込まれる可能性が強い。もう無視するわけには行かない状況だ。

この他、朝鮮半島、日本、東南アジア諸国にも触手を伸ばすだろう。すでに彼らの行動に見られる諸々の駆け引きは、それを裏付けている。朝鮮半島の横断鉄道へのアプローチ、日本に対する北方領土を餌にしたエネルギー資源の売り込み、ベトナム・ミャンマーへのアプローチなどがそれだ。

また2012年、APECの首脳会議が、ウラジオストクで開かれる。それを理由に活発に行動を起こしている。基本は資源の販売のためだ。日本との関係では、メドベージェフ大統領が北方領土を訪問するなど、一種の焦りも感じられる。

これは日本にロシアに関心を持ってもらいたいという気持ちがあったのかもしれない。つまり、米国が中国を警戒するように、ロシアも中国を警戒している。そのためには、日本を取り込みたい思いがあるかもしれない。

ところが、メドベージェフ大統領の北方領土訪問は、日本との1993年の取り決めを無視したものであり、日本からは当然、反発を食らい、また世界的にも信用を失墜した。やり方が間違っていたと言えるだろう。

ロシアは、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、北方領土を不当に占拠して、現在に至っている。結局、大統領の北方領土訪問は、ますます日本の不信感を高めただけだろう。そして、世界から、何をやるかわからないという疑念の目で見られている。

彼らが北方領土を返還しない限り、日本としては、政治でも、ビジネスでも相手にしないことだ。むしろ、ロシア進出する企業には何らかの制裁が必要だ。いずれにせよ、日本としては、政経共に期待できる相手ではないことは確かだ。

ただ日本にとって、言えることは、この国が苦境に陥った時のみ、交渉相手たりうる。その点は、冷静に対処しなければならない。2012年のロシア大統領選を睨んだ動向は、一応、注視する必要がある。

ⅶ 中東情勢

中東の不安定さは、米国などの外部からの圧力では解決しない。エジプト、リビアを始め、民衆が立ち上がっているが、スムーズに民主化への道を歩むかは疑問視されている。自然環境の厳しい国家は、必ずしも民主主義がいいとも言えない面がある。概して強いリーダーが求められがちだ。

中東のことは、中東に任せればいいのだ。彼らは無知ではない。中東には中東の知恵者がおり、彼らに任せれば、それなりに収まる。先進国は、基本的に、貧困の解消に手を差し伸べればいい。

中東の問題は、人口の増大と貧困の存在だ。それを解決し、落ち着くには、まだしばらく時間がかかる。しかし、いずれ中東(イスラム)市場が形成される。新しい産業を根づかせるため、今から、次世代、次次世代のビジネスを徐々に根付かせていくことが求められる。日本にとって、ビジネスチャンス到来だ。

特に日本に友好的なトルコとのビジネスチャンスは拡大するかもしれない。また日本と同様、震災も多く、それに伴う犠牲も多い。日本としては、震災対応技術の提供と、耐震住宅の促進のため、大いに協力すべきだろう。

原発も輸出する方向で政府は検討しているが、トルコは日本同様、地震が多く、日本の原発システムは十分確立されているとは言い難い。拙速な判断は、両国の関係を悪化させかねない。エネルギー分野で協力するのなら、別の分野もあるはずだ。

その点を除けば、日本にとって、トルコは中東に於いて、アジアにおける「台湾」と同じ役割を果たす可能性がある。すなわち、トルコを通じて、中東、中央アジア、中東欧との関係を強化できる可能性がある。これは先方も望んでいることでもあり、一考に値する。

ⅷ 朝鮮半島情勢(基本的な見方は2011年と変わらず)

韓国は、貿易比率が高く、欧米の低迷は、大きく影響を受ける。またウォン安は、輸出はしやすい環境になるが、国内の物価上昇に拍車をかける。今は自動車、家電関係は、日本の企業より活力があるが、偏っており、それらが傾けば国全体の運営も危うくなる。韓国にとっては、今後、より厳しい経済運営が求められるだろう。

特に、国内農業を説得して、各国とのFTAを推進してきた効果が逆作用する可能性もある。また海外の資金に頼った結果、流出すれば、大きな打撃を受けるだろう。すでに国内は貧富の拡大が大きくなっており、治世の混乱が生じるかもしれない。

彼らは、内政が困難になると、日本を非難して逃げ込むが、そんなやり方では何も解決しない。日本とは竹島領土問題で争っているが、そんなことに時間をかけるべきでないだろう。ましてや、慰安婦問題は論外だ。すでに両国間で解決済みのことで、慰安婦問題は韓国政府の問題だ。ここにも韓国政府の後進性が見て取れる。

裏読みすれば、韓国経済は危機に陥っているともいえる。格差の拡大、若年労働者の失業の多さ(100万人とも)、ユーロ危機に伴う輸出企業の不振が、国家の不安定さを物語る。危機に陥ると、日本の過去を攻撃して、憂さを晴らすパターンだ。

大統領選が12月にあるようだが、状況によっては、女性大統領の出現もあるかもしれない。これはあまりいいことではないだろう。どこの国でもそうだが、女性の国のトップは、大災害を蒙ったり、国の衰退を示す傾向がある。

また5月に万博(1000万人の来場者予測)があるようだが、あまり盛り上がらないだろう。マイナーな万博になる可能性が高い。それは日本国内でも、徐々に韓国ブームが飽きられ、その人気にも陰りが見えることも影響する。

更に、北朝鮮との関係は複雑だ。金総書記が亡くなったので何らかの変化を期待するが、韓国の経済悪化に伴い、統一問題は微妙だ。経済格差がある限り、統一は困難だが、韓国経済も不振になれば、その糸口も消える。

それに北朝鮮の経済は実質崩壊しており、現体制を維持できるか疑問がある。金総書記が亡くなったことで、最早、権力は盤石なものではない。後継体制も含めて、何が起こっても不思議ではない。体制内で不協和音が聞こえてくる。

周辺国家は、崩壊を留めるより、崩壊も止む無しとして、その体勢を整えるべきだろう。その事態は迫ってきたと言えるだろう。継続体制が、どのような方向に進むのかは予測しがたい。状況に応じて、臨機応変に対応するしかないだろう

基本的に、北朝鮮は、自然環境が厳しく、貿易を拡大しないと、生き残るのは難しい。今後、体制がどのようになるかわからないが、開放した方が断然メリットが大きい。日本としても、最悪の事態を想定しつつ、この国が開放体制に移行する場合の付き合い方の研究も必要だろう。

全体としては、朝鮮半島は、不安定になる可能性が高い。周辺諸国は、それを望まないが、何が起こっても仕方ない。ただ、逆に言えば、大きく変わる可能性もある。日本としては、柔軟な態勢で臨むべきだろう。

ⅸ 今後の期待が大きい東南アジア諸国

東南アジア関係は、中国に代わる投資先として、更に注目を集めるだろう。

台湾は、かつてほど中国と対立しておらず、現在、特に経済面では、持ちつ持たれつの関係だ。米国が囃したてるほど関係は悪くない。2012年の中国の主席交代による政治的日中関係の悪化を見越して、日台関係を、より深めようとする企業が出てきても不思議ではない。特に、中小企業は台湾企業との提携により、中国やアジアのビジネスを展開できる可能性を考慮すべきだろう。

タイの水害被害は、進出している日本企業に甚大な影響を与えた。元々、アジアの食糧庫として機能してきたのは、定期的な多くの水害が土地を肥やしてきた歴史がある。そこに工場を立地したことのリスク管理が、どのようであったのかは問われる。

タイは、明らかに国の形を変える上で、必要な対策を怠ったということだろう。日本の企業も、そこまでのリスクが見通せなかったということだ。今後、タイが、工業国として発展するには、自然災害に対する防災体制を整える必要がある。それに着手されないなら、日本企業は撤退も検討すべきだろう。代替国には困らないのだから。

またタイでは、初の女性首相が誕生したが、その政策運営には疑問点が多い。多分にポピュリズムに走る傾向が強く、あまり長続きしない感じもする。大体、政界において女性のトップは成功しないジンクスがある。しばらく、タイへの進出は慎重になるべきだろう。

ベトナムは、人口が8600万人もいるのに、未だ公共交通機関が発達していない。日本政府は新幹線とかの話を持っていくが、まだ早い感じだ。電力不足の解決のために原子力発電を輸出しようとしているが、使用済み核燃料の処理について、まだ何も解決していないのに、輸出は不適当だろう。

ベトナムは、今後、観光政策も睨んで、公共交通網の整備が必要で、日本としても協力できることはすればいい。また社会主義政策として、ガソリン価格を政府が補填するやり方は、国際収支を悪化させる。普通の経済原則にあてはめるべきだ。ベトナムの経済のピークは、後数年で、今後、徐々に落ちていくだろう。

インドネシアは、すでに日本とは輸出入の関係では高い比率だ。天然資源中心の貿易だが、今は過渡期かもしれない。2億2千万人の人口を活かすには、産業の高度化とインフラの整備が必要だろう。まず、日本と同様、海運体制と道路整備をやる必要がある。日本としては、これらのインフラ整備の協力と、更なる商材開発が求められる。国内市場が成長すれば、いずれ大きなマーケットになる。

その他の東南アジア諸国も注目を浴びるだろうが、ここでは割愛する。

次回に続く。

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2011年12月25日 (日)

2012年動向予測 国際編(三) 中国・インド

2012年動向予測 国際編(二)の続き

ⅲ 中国は成長のピークに。成長率低下か。

中国は、インフレ高進(エネルギーコストの上昇、食料品価格の上昇等)、不動産バブル、地方の公社の不良債権問題に悩んでいる。これらに対策を打っているが、やりすぎると反動が怖い。難しいかじ取りに追われている。基本的には、2011年の経済政策を引き継ぎ、穏健な金融政策と積極的な財政政策を続けるだろう。

ただ、国の成長に伴うもので、仕方ないことだが、コントロールのやり方を間違えば、バブル崩壊につながるので、当局も、神経質な運営になっていることだろう。だが、彼らは日本のバブル崩壊を研究しているし、バブルは全国的なものではないので、その程度は騒がれるほどではない。

基本的には、局地的バブル崩壊はあるかもしれない。報道では、2012年にバブル崩壊があると予測する向きもある。確かに大きな調整はあるかもしれないが、大きなバブル崩壊には至らないよう思う。仮にバブル崩壊しても、その規模は小さいだろう。

もちろん、それ以外に、さまざまな課題はある。まず、ユーロの崩壊による輸出の減少は、ある程度、景気に影響を与える。だが、致命的なものにはならないだろう。

それより、むしろ今までの内需拡大策が必ずしも広く国民のためのものでないことも問題だろう。インフレを起こし、多くの国民の生活は苦しくなっている。むしろ、その方が中国にとってリスクであろう。

例えば、急速に高速鉄道を敷設したことも大きな疑問だ。結果的に大事故を起こし、富裕者も乗車するのに不安だろう。もっと地道に、広く国民に役立つ一般鉄道の普及に努めるべきではなかったか。あまりにも急激な発展は、彼らに反作用こそあれ、それほど望ましいものではないはずだ。

軍部主導の宇宙開発や大型空母の開発も疑問が多い。これは胡錦濤氏の軍事戦略に沿うものとは思うが、技術の蓄積を図り、将来、軍需から民需への技術転換を図ろうとしたものされる。だが、技術の寄せ集めでは、心もとない。これはモザイク技術と言われても仕方ない。そんなものは、遠くない時代に崩壊しかねない。ここに中国国家リスクがある。

更に問題なのは、中国の人口構造問題だろう。人口動態では、すでに高齢化現象が現れており、一人っ子政策で歪んだ人口構成の若者たちが高齢者をどのように支えていくかは重要な課題になる。社会保障問題は、人口が多い上に、システムが未成熟なため、大きな困難を抱えている。

また賃金上昇も、海外進出企業の撤退の原因になりうる。賃金の急激な上昇は、あまりにも急激に海外資本の投資を求めた結果だ。また多くの法的未整備も問題だ。いくら商習慣とは言っても限度がある。地方政府の暗い部分も指摘されており、進出しずらい状況は早期に改められるべきだろう。

一方で、失業者も多い。大卒の未就業者の拡大は社会不安を起こす。これは日本のそれと比べても規模が大きく、問題だ。結果的に、学卒格差という事態を招き、農村部との格差も含めて、多様な格差が社会を不安定化させる可能性もある。これらは何が原因かと言えば、先ほども少し触れたように、海外からの投資主導の行き過ぎた成長モデルだろう。中国経済には目が離せない状況が続く。

政治的には、共産党指導部の交代がある。国家主席が交替し、今後、中国の政権の雰囲気は変わる可能性がある。経済面が引き起こす不安定さから、政治面では、旧守派の勢いは増している。政策の大転換の可能性もある。政治的には、日中関係は不透明だ。ただ、これだけ経済的に深い関係になると、逆戻りにはできないだろう。そのことは中国の首脳も理解していると思う。

しかしながら、大きな問題を抱えながらも、中国は、まだまだ発展する余地は十分にある。マスコミ報道に惑わされずに実地に確認する作業が大切だ。中国は、米国同様、国の中に多くの国があり、状況は様々であるから。

ⅳ インド経済は、問題を抱えながらも順調に(概ね2011年と見方変わらず)

インドは魅力的だが、すぐ帰りたくなる、と言われる。それほど気象条件は厳しく、環境もよくない。しかしながら、裏を返せば、ビジネスチャンスが大きいということ。2011年で、100万人都市が52に急増している。かつての日本のように田舎から都市に若い人が流入しているのだ。

それに、世界最大の民主主義国家であり、ビジネスは体制の違う中国より、やりやすいはずだ。現在、12億人の人口を抱え、インド経済がピークに達するのは、2040年頃と言われる。まだまだ可能性が大きい。後10年もすれば、中国経済を追い抜くだろう。

日本とは、日印EPA(経済連携協定)は合意しているので、それも後押しする。実際は、それまでに、ASEAN経由の貿易で、進めていたので、大きな影響はないとも言われるが、インドに進出している諸国家との競争では、やりやすくなることは確かだろう。

特にインフラへの貢献は大きいはずだ。道路、電力、水、港湾、鉄道など。ただ、民主主義国家ゆえ、中国のように一気には進まないことも覚悟しておくことも必要だ。それでも、日本は、少しずつ貢献している。

例えば、デリーの地下鉄は日本の技術、維持管理、省エネで大きく貢献している。これを各地に拡げて、人の移動をしやすいようにすることは可能だ。鉄鋼産業も、鉄は国家なりではないけれど、日本の鉄鋼産業は、インドをアジアの供給拠点にすることもできる(但し、当面は、インド国内需要をこなすだけで精いっぱいだろう)。電力開発も、いろんな面で協力が可能だろう。

また、医療・衛生等も日本の進んだシステムを持ちこむことによって、社会を改善することに貢献できるだろう。インドは、あまりにも偏った薬品に頼り、薬品漬になっているという。日本も医療において薬品の依存度が高いと言われるが、インドは抗生物質等に偏っていると言われる。そのため病が複雑化している。また医師不足の解消のためには、遠隔医療システムの導入も考えられる。早く、適切な医療体制の構築が急がれる。

今後の問題としては、成長に伴うひずみが生じることだろう。例えば、都市と地方の格差は広がるばかりで、田舎は放置されている。また全国にインフレの問題は深刻だ。地方は、都市の発展伴うインフレの被害も蒙る。燃料価格の高騰は、一般庶民の生活は苦しめている。

また十分に、物が行き渡らない物流面のネックもある。流通改革が望まれる。また資源開発に伴う環境汚染問題や自然破壊等が問題になる可能性がある。進出企業は、地元の長期的利益を鑑みながら、利益の還元が求められる。インド政府は、一つ一つ丁寧に解決していく必要があるだろう。都市と地方の均衡政策は、必須だ。

このように、インドは、日本にとって、中国より大きなビジネスの可能性を秘めている。都市部への人口集中はこれからも進んでいくと考えられ、その整備も含め、ビジネスチャンスは拡大するだろう。

総合的に判断して、日本のビジネスの仕方は、インドと合うと判断する。特に製造業が日本とマッチする。実は、都市部には、地方から若者が来るが、仕事のミスマッチから適した仕事が無い。若年失業率は10%もある。彼らを製造業で使えば、雇用も改善にも貢献できる。適切な管理者を見つければ、信頼関係を強めて、アウトソーシングする関係になることも可能だ。そうすれば、中小企業でも進出が可能だろう。

それは、いかに国や地方自治体が、誘導していくかにかかっている。相互の人材の交流の機会の創造、ビジネススタイルについての相互理解、現地調査などの推進が求められる。そのようにして、インド進出については、彼らの知識を活用して、進出した方が効果的だろう。だが、やり方は日本経営的な進出が望ましい。彼らには受け入れに柔軟性があるから大丈夫だ。

また、より良いパートナーを得ることは、インドでも同様に大切だ。進出の成果はパートナー次第だろう。インド人は、哲学的に優れており、彼らと競争するより、その優秀性を活用することの方が望ましい。彼らからアイデアをもらえばいい。

そして、他国はインド住民の生活を無視した進出をしているところもあるようだが、進出させてもらうという気持ちは大切だ。問題点としては、英語と日本語の壁をいかに打ち破るかということだろう。そのためには、日本で、彼らが住みやすい環境を整えて、日本進出を促し彼らとの交流を深めるべきだろう。

なお、7月には大統領選が行われるが、実際の経済の運営は首相が行っており、大きな影響はないと判断される。2012年は、欧州経済の不振で若干影響を受けるが、基本的に内需産業が主体のため、今後も期待は大きい。

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2011年12月24日 (土)

2012年動向予測 国際編(二) 米国・欧州

2012年動向予測 国際編(一)の続き

ⅰ 米国経済は、2011年と基調は同じで、低迷継続。

基本的に、米国の衰退は避けられないのは2011年と見方は変わらない。長年の巨大な財政赤字、貿易赤字のツケがボディブローのように応えてくるだろう。これは少しの経済対策で解決できるものではない。日本同様、財政政策、金融政策、為替政策にしても満足のいくような対策は取れないだろう。

更に金融関係は、ユーロにコミットしている部分も少なからずあるので、経済の足を引っ張るだろう。ただ金融関係を除けば、ユーロへの貿易比率は低く、あまり影響を受けないという見方もある。この辺は、見えない部分が多く、不透明だ。彼らは、他国に対しては透明性を主張するが、その実態は、彼らこそ不透明だ。これらがユーロリスクで炙り出される可能性は十分ある。金融関係が一部危うくなる可能性がある。

米国経済について、資本市場関係者は、たびたび景気回復を囃すが、米国市場は、残念ながら、需要は低迷し、弱いままだろう。失業率は上がり、国内不安は増加していく。景気が良くなっているという報道もあるが、それはスポット的で、根本的なものは何も解決していない以上、過大な期待はできない。

もちろん、いろいろ手を打つだろうが、効果的な手はない。出来ることと言えば、まず実業の分野を他国(例えば日本)と連携しながら、アジア市場を意識しつつ、強化すべき産業政策を明確にしていくべきだろう。その点、ユーロ企業は強かで、すでに日本に各種研究分野で提携も含めて進出すると表明している。

米国は、日本をアジアに対する軍事の足場としているが、産業分野の研究・開発における足場にしているとは言い難い。この点は、逆に言えば、あまり日本を評価していないのかもしれないが、アジアを攻略したいのなら、日本を基点とする戦略も有効と思うが、彼らは、どのように考えるか。

また内需的には、公共投資のような現業的な雇用を生む産業への傾斜政策が求められるかもしれない。米国は、日本と違い、広い国土を有し、自国の資源も豊かだ。例えば、シェールガスの採掘が技術的に可能になり、数年後には輸出可能になるかもしれない。埋蔵量は計り知れないくらいだから、米国が資源大国として生まれ変わる可能性がある。

それに、広大な未開発の地域開発余地は十分ある。人口は、移民が引き続き流入しており人口が増えるから、環境問題を鑑みながら、効率的な交通システムを作り上げる必要がある。そのためには、地域交通システムの確立が求められる。だから、日本で言う公共投資を増やせば、それなりに経済は活性化するだろう。

後は、海外の需要取り込みでは、日本同様、米国はアジア太平洋地域に期待している。それはオバマ大統領の発言からも明らかだ。アジア太平洋地域に関与することが、国内の雇用を生み出すと考えているようだ。日本は、米国と共同で、お互いの長所を活かしながら、アジア太平洋を開発していくべきだろう。TTP等を通じて、具体的に、どのように協力して開発していくかを共通認識とする必要がある。

政治面では、11月の大統領選については、気がかりなことではあるが、誰がなっても、大きく舵とりが変わるということはないかもしれない。現状、オバマ継続の可能性が高いのではないか。また、共和党が、上院、下院の両方を押さえる可能性が高く、そうなれば、ねじれは解消されて、(皮肉にも民主党の大統領だが)政策遂行が速やかになるかもしれない。

だが、今世紀はアジアの時代。もういい加減に過去の栄光は忘れた方がいいかもしれない。一歩引いて、世界を見る余裕も必要だ。何もかも、米国が関与する必要もない。今までは、米国は世界の超大国という自意識過剰のように思える。

もちろん、近い将来、米国の復活はありえないことではない。それなりの役割を果たすし、求められるだろう。それにユーロの劣化で、相対的に浮き上がることも考えられる。だが、最早アジアへのコミットなしでは、米国の成長もあり得ないのは確かだろう。

ⅱ 欧州経済、低迷基調変わらず。更に悪化。

ユーロは短期間に組織を拡大したことが禍を招いていると言われるが、今問題になっているギリシャは1981年、ポルトガルとスペインが1986年に加入している。加盟国が急拡大してのは、2004年以降のことだ。

これは当初から理念だけで走り過ぎたことがすでに問題を孕んでいたということだ。実務や運営について十分に検討されたのか疑問が残る。もちろん、米国からの不幸な事件もあった。リーマンショックがユーロ運営組織にひびを入れたのが実情だろう。これは仮に将来、アジア経済共同体を築く時も十分参考になる。

さて、ギリシャ問題については、いつデフォルト(債務不履行)を発表するかということに尽きる。 ずるずるユーロ各国の思惑の中で、対策を考えても妙案は見つからないだろう。そうなれば、欧州の銀行は、ギリシャなどの過剰債務国の債券を多く保有しているから、ユーロは、大きく傷つき、混乱する可能性が高い。

ただ、ユーロ全体でみると、十分な支援をする余力があるとの見方もある。他の国が支援できればいいが、自国は傷つきたくないから、余裕のある国さえ、支援をしない状況だ。問題は、彼らで解決してもらうしかない。ユーロ圏外の国の支援は不要だろう。

もちろん、デフォルトの連鎖という事態も考えられないでもない(ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリア)。また仮に、ギリシャがユーロ離脱すれば、結局、ユーロは解体ということになるかもしれない。そして、ユーロが暴落するシナリオがある。ただ、その可能性は低いように思う。

経済の実態は深刻だが、少し騒ぎすぎの感もある。ただ、かなりの部分で実態のない金融取引という虚業経済が蔓延った結果の反動が来ているのは確かだ。日本のバブル崩壊同様、経済が回復するには相当の時間を要するだろう。ユーロ経済には、しばらく期待できない。ここに無駄なエネルギーを投入することは避けたい。

日本は、貿易依存度が低い上、ユーロへの輸出に占める割合が10%弱だが、その比率の高い、ブラジル(18%)、中国(15%)、インド(15%)、韓国(15%)から間接的には影響は受ける。ただ、それほどに騒ぐ必要はない。ユーロ市場からは、早めに撤退すればいい。すでに片足は抜いているところも多い。

このように基本的に、老いた欧州は、大きく期待できる市場ではなくなりつつある。労働者の既得権が改革を阻む可能性が高い。彼らが国家の危機を感じるまで続くだろう。それに社会保障も重荷だ。社会保障関連ビジネスも順次縮小していくだろう。

結論として、2012年には、全体的に経済は更に縮小していくだろう。外部からは、ユーロ市場を含む西欧市場が当面(最低10年程度か)無くなったと考えた方がいい。現在は、キリギリス諸国が火事になっているのに傍観して、火を消さない状態が続いている。これが続けば、欧州は燃え盛って消えていく。すなわち幽霊市場になる可能性がある。

そうならないように、彼らの中から知恵者が現れるだろうか。しかし、どのように手を打っても、欧州は、しばらく世界の中で漂流する可能性が高い。

次回に続く。

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2011年12月23日 (金)

2012年動向予測 国際編 (一) 総論

2011年も、年末も大詰めになってきた。恒例の来年2012年の動向予測を、厚かましく出してみよう(笑)。但し、毎年のことだが、素人がやる占いみたいなもので、当たるかどうかはわかりません。占い感覚で、懲りずに予測してみよう。

前年同様、国際編と国内編に分ける。長文になるので、今回から、国際編を5回に分け、国内編は3回に分ける。興味のない方はパスしてください。

さて、2011年は、世界経済が張り子の虎であることが明確になった。日本は、東日本大震災と、福島原発の事故が起こり厳しい局面に立たされた。それらは国が多額の債務を抱える中で起こったので、非常に厳しい状況に追い込まれている。

この困難から、いかにして這い上がるかということは、非常に大変なことだ。それは国民一人一人が重い荷を背負っていることと言える。これを凌ぐには、国民の力を合わせて、一歩ずつ歩むしかない。

米国は、米国債の格付け低下により、ドルの信用力が低下した上、不況は進行し、「日本化」は避けられない状況だ。欧州はユーロが、ギリシャの不安定化に発し、デフォルト(債務不履行)により、ドミノ現象を起こしかねない状況になっている。

その中で、特に世界に大きく影響するものとして、ユーロが、本当に大変になってきた。予測されていたことが現実化しつつある。このトンネルを抜けるのは容易ではない。急激か、緩やかかどうかは別にして、これらの地域は、アップダウンしながら確実に落ちていくのは止められない。

2012年も、ユーロは更に悪化し、ずるずると不安定に展開され続けると見て間違いはなかろう。ユーロの悪化が、世界に多かれ少なかれ影響していく。日本も、もちろん、直接、間接に、その影響を受けるが、資本取引に関しては、ユーロからの撤退が望まれる。

総合的に見て、世界経済は全般的に低迷を続けるだろう。従来、世界経済の転換点は2015年頃が予測されてきたが、若干早まった感じがする。2011年が転換点になった可能性がある。ただ、転換点は、一年というわけではなく、数年間続く感じだ。

結局、今後、破綻の連鎖、混乱、再生ということになるだろう。日本としては、アジアに基盤を確実なものとしながら、より多面的、重層的に展開することが望まれる。もちろん、それは楽な展開ではないだろう。ある部分は捨てる勇気も必要だ。

それには、日本人全体の意識を変える必要がある。ASEANプラス6かTTPとか言われるが、要するに、市場を環太平洋に拡げていく意識は、仮に海外と直接関わりが無くても、国民一人一人が持つべきだろう。環太平洋地域への日本の貢献が、これからの日本の将来を決めていくことになる。

それでは、以下に、感じた点を、記してみよう。便宜上、Ⅰ、国際経済、Ⅱ、日本の外交に分ける。

Ⅰ 国際経済だが、2011年同様、混迷する。むしろ混迷の度は強まる。

IMFは、2012年の経済成長率は2011年と比して、若干低下すると見ている。そうだろうか。そんなに甘くないと思う。欧米経済は、更に低迷が続き、破綻の連鎖の可能性も高い。急激に作り上げたモザイクのユーロの再生は不可能だろう。当面、ユーロ市場は消えたと思った方がいいかもしれない。ユーロは幽霊状態になる。

中国も人件費高騰もあり、インフレの問題もある。金利を上げてインフレを抑制すれば、内陸部のインフラ整備が遅れ、成長率に減速がかかる。欧米経済の悪化の影響を受けて、そのバランスに常に悩むだろう。2012年は、急激な経済低下はないものの、大きく捉えれば、早くも成長のピーク越えに差しかかる時期と認識し始めるだろう。

そして、その分、インド、東南アジアの成長率が高まる可能性が高い。ただし、インフレが、成長を抑制するのは途上国に見られる共通の現象だ。また逆にユーロの破綻による資本の流出は拡大する可能性もある。これらが成長の重しになるかもしれない。ブラジルは、輸出先の米国と中国の低迷が成長の足を引っ張る。内需は強いと見られるが、長期的な安定成長のためには、貯蓄率が低いのが課題だ。

ロシアは、ユーロの低迷に強く引きずられて、引き続き低迷するだろう。彼らはアジアへの南下を企み、中国との争いが起こるかもしれない。また、VISTA諸国家(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)は、不安定要因を孕みながらも、注目される場面が増えるかもしれない。台湾も、それなりの役割を果たすだろう。

個別に見ていくと、次のように予測される。

次回に続く。

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2011年12月22日 (木)

『播磨国風土記』を読む その十二 火明命のこと

久しぶりに、『播磨国風土記』の記事について触れてみよう。今回は、火明命(ほあかりのみこと)だ。彼は、大国主の子供とされる。ただ、『古事記』にも、『日本書紀』にも、彼の名はない。出てくるのは、この『播磨国風土記』のみ。果たして、彼はどういう存在だったのだろう。

どうも気性が激しく、荒っぽい子供であったようだ。これには親の大汝命(おおなむちのみこと。播磨の大国主命、つまり伊和大神 *注)も、手を焼き、遂に勘当して追い出そうとする。いつの時代も、そういう子供はいる。彼は案外、孤独だったのかもしれない。大汝命はたくさんの妻と子供がいるし、そうでもしないと、親から注目もされない。

すべての子供が、火明命のような行動を起こさなくても、多くの子供たちは、それぞれ、心の中では親に注目を浴びたいものだ。それが火明命の場合は裏目に出る。大汝命の怒りを買い、追い出され、捨てられる。

そのやり方は、因達(いだて)の神山まで、一緒に船で行き、着いたところで、すぐに火明命に水を汲ませにやらせる。彼が水を汲みに行っている間に、船は出港し、彼を置き去りにする。彼は、大いに怒り、風と大波を起こし、船が進まないようにする。

そして船は難破。船に積まれていたものが、各所に打ち上げられ、いろんな地名が付いたそうだ。それが、船丘(船が打ち上げられた)、波丘(船が打ち上げられたことによる波)、琴神丘(琴が落ちた)、箱丘(箱が落ちた)、匣(くしげ)丘(梳匣が落ちた)、箕形(みかた)丘(箕が落ちた)、甕(みか)丘(甕が落ちた)、稲牟礼丘(稲が落ちた)、冑丘(冑が落ちた)、沈石丘(沈石が落ちた)、藤丘(綱が落ちた)、鹿丘(鹿が落ちた)、犬丘(犬が落ちた)、日女丘(ひめぢ)丘(蚕が落ちた)。

十四の丘の地名になっている。いろんな人たちが現在の場所の特定をしているそうだが、まだわからない箇所もあるようだ。それにしても、いろんなものを積んでいたんだ。犬は分るとしても、鹿を積んでいたとは。何に使っていたのだろう。ちなみに、蚕(かいこ)が落ちたのが、現在の姫山で、姫路城がある場所。

このように船は難破させられて大変な目に遭うのだが、そのことを大汝命は、妻の弩都比売(ぬつひめ)に厳しく詰られている。「悪(さがな)き子を遁れむと為て、返りて波風に遭ひ、太(いた)く辛苦(たしな)められつるかも」と。

乱暴な子供に向きあこともなく、逃れようとして、追い払って捨てようとするから、子供の逆襲に遭い、却って、私たちは苦労を抱えることになったと。子供の心をどうして受け止めてくださらないの、というぐらいの意味だろう。

いつの時代も、子供を育てることは大変だが、親の思いと子供の思いは、ちょっとしたことで食い違いが出る。日頃から、親は自分の考え方を披露して、子供が独立しても、やっていけるようなコミュニケーションが大切だが、お互いの甘えから、ついつい、それがおろそかになり、子供が暴発して、親がうろたえるパターン。今も昔も変わらないようだ。古典も、いろいろ教えてくれる。

*注

私見では、大汝命は播磨の大国主命と思う。なぜ「播磨」の冠をつけたかというと。大国主命は、何代にもわたって名乗っていたと思われるからだ。播磨の大国主命は、先祖が出雲で国譲りをした後、反発して播磨国に逃れてきたとも考えられる。それが播磨国に、いろんな先進文化を伝えた伊和大神と同一人物と思う。 

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2011年12月21日 (水)

東証の甘い上場基準と維持基準

東証が平成24年3月から、上場基準を大幅に緩和するそうだ。また不良企業が多く上場するわけだ。仮にまともな企業であっても、現在は上場維持コストは馬鹿にならない。上場維持に追われて、経営者のあせりから経営は劣化していくだろう。

多分、新規上場までは証券会社が囃したてて、業績は上向きになり、上場時が株価のピークになることが十分考えられる。それはかつてベンチャー市場でベンチャー企業が上場した時と同じようになるだろう。

上場するには、それ以前に、上場維持体力がなければ、現実、維持することは難しい。拙速に上場を促す東証の姿勢は騙しそのものだろう。経営者を騙し、投資家を騙すという意味でだ。

最早、現在では上場のうまみは薄い。いろんな会計の縛りがあるうえ、いろんな義務も負わされる。そういうことでサービス系企業は、資本市場から撤退する動きも活発だ。本来、金融機関がきちんと融資しておれば問題ないことが、バブル崩壊で、金融機関が融資できない事態が続いたことで、資本市場に期待が集まったが、粗製乱造の上場で、上場市場の質が悪くなった。

その結果が、日本市場の低迷につながっている。優良企業でさえ、株価を引っ張られているのだ。今は、むしろ、上場基準や上場維持基準を厳しくして、日本の資本市場の質を高めるべきだろう。そうしないと、オリンパス、大王製紙の様な馬鹿な経営がはびこる。

彼らと同じような経営資質のある企業はまだあるだろう。特にバブル崩壊後、公募増資した企業の時系列監査すれば、たくさんの企業があぶりだされるはずだ。東証の上場基準緩和は、そう遠くない将来、また同様のことが起こる可能性を示唆している。東証が身を正さないと、日本の資本市場の将来はない。

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2011年12月20日 (火)

“悲しき天使”を聴きながら

年末に聴きたくなる60年代の洋楽がある。その一つが、“悲しき天使”だ。メアリ・ホプキンがきれいな声で歌っていた。まだ小さい頃だったのに、よく覚えている。原題は最近知ったが、“THOSE WERE THE DAYS”だ。

邦題が、なぜ、“悲しき天使”かは少し、わかりかねるが、歌詞の内容は、若い頃、色々夢を見ていたのに、時間は、あっという間に過ぎ去り、昔の彼女には、自分同様、老いが迫り、孤独の色が濃い。でも、そんな彼女に対して、心の中の愛は変わらないよ、というような内容らしい。

過ぎ去った時を懐かしむのは、歳が行った証拠なのだろうが、時々、この歌を聴きながら、感傷に浸るのも悪くない。

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2011年12月18日 (日)

年金の賦課方式は改めるべきか

消費税問題で、橋下次期大阪市長が、年金は賦課方式から積立方式に改めるべきだと主張している。しかし、少し問題を単純化させていないか。彼にしては、一面的な見解と思う。

確かに、賦課方式は現役世代が、高齢者の年金を支える仕組みで、人口バランスが崩れると、現役世代への負担は大きい。多分、そういうところから、積立方式に変えるべきだと主張しているのだろうが、必ずしもベストとは言えない。

現在のデフレ状況が将来も続けば、現在の現役世代が高齢者になった時、積立方式が有効かもしれないが、それは必ずしも言えない。デフレとインフレは交互に来るもので、インフレの事態も想定できる。そうなれば、積立方式では、年金で、とても暮らしてはいけなくなるだろう。

本来は、インフレ時に税金を増税することが望ましいが、今は国の構造が過渡期であるため、当面の人口構造が続く限り、消費税の増税で凌ぐしかないのではなかろうか。賦課方式で不足するところを補うしかないように思う。

それは全世代で負担する消費税増税であったり、年金支給額の上限を設定したりすることだと思う。あまり議論を一面的に単純化させてはいけないと思う。

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2011年12月17日 (土)

消費税問題が喧々諤々だが

国は、消費税アップ問題で未だ揉めているようだが、消費税アップは、以前から指摘しているように、人口が逆ピラミッド型に移行している現在、ピラミッド型人口構成で考えた社会保障体制が維持できなくなるから、それを是正するためには、どうしても必要なことは明らか。

今、消費税を上げないと、近い将来10%アップとか15%アップとかになってくる。それでいいのだろうか。現役世代の負担を減らし、彼らの老後を支えるための負担は全世代で賄うしかない。それは応能負担とか、応益負担の論議を超えるものだ。

また、公務員の給与削減と議員定数削減と同時に進めなければいけないというが、本来別問題。確かに財政再建には、やり方によって効果があるが、民主党政権は、削減したものを他の予算に回そうとしており、それでは国債残高を減らすことにはならない。

公務員の給与削減と議員定数削減は、本来、直接、繰り上げ償還も含めて、国債残高を減らすことに使われるべきものだ。そうすれば、多くの公務員も国会議員も反対しないだろう。なぜなら、そうすることは、彼らにとってメリットがある。それは一般国民にとってもメリットがある。

だが、民主党が、現在のところ、そのような考え方を持っているとは思えない。それらから抽出した財源を他の一般予算に使う(振り替える)のなら、あまりいいやり方とは言えない。歳出削減にも寄与しない。それらの財源は国債残高を減らすためのリストラであるべきだ。

与野党ともに、社会保障・消費税問題と、公務員の給与削減と議員定数削減は切り離して考えてもらいたい。一緒にすれば、進めるべきことが進まず、ますます国難が大きくなるだけだろう。

*平成27年6月21日追記

残念ながら、自民党政権になっても、同じ様な問題を起こしている。消費税増税分は、全額、社会保障の充実に回すとしていたが、実際は部分的にしか配分されておらず、全く関係のない法人税減税の財源に回されている。

そうでなくても、輸出企業は、消費税分を還付されており、何をかいわんやである。円安と消費税還付及び法人税減税で輸出企業を太らすだけだ。その分、法人税収が増えたとしても、それが社会保障に回される保証は何もない。

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2011年12月16日 (金)

池田輝政と督姫 その四

池田輝政と督姫の結婚を、現代で例えたら、どのようになるのだろう。老舗の中小企業の、お坊ちゃんだが、大きな失敗があったものの、番頭の御蔭で、本人の努力もあり、何とか事業を持ちこたえ、大企業に発展させた苦労人の社長と、財閥令嬢の結婚ということになるのだろうか。

そういった婚姻で、督姫は、親が家康ということで、気位高く生きていたことは想像できる。世間知らずの、お嬢さんによくあることだ。また周囲も、そのように仕向ける。彼女に仕えていた古手の召使は、ある時、この夫婦の前で、「ご当家が今あるのは、督姫様が、興し入れされたためです」と言った。これには、さすがに無礼極まりないと輝政は抵抗したようだが、彼は実際は、そのようであるとは認識していた。

しかし、督姫のいないところで、老女に「督姫の前で、あんなことは言ってくれるな。ますます、つけあがって、夫婦仲が難しくなるではないか」と言っている。男の面子を潰すような老女の発言には反発したわけだ。わかるわかる(笑)。

但し、輝政も、自分の意見を通したことがある。彼には前妻の間に、長男の利隆がいる。そして、督姫の間には、忠継がいた。督姫は、自分の子供を姫路城主の後継にしたかったが、それは叶わなかった。もちろん、これは輝政だけでも押し通すことができなかったのだが。

実は、督姫は自分の兄、すなわち秀忠にも、その意を伝えている。しかしながら、徳川家は、家康の意向で、長子相続を決めている。平和な時代には、それが望ましいとした。それは三代将軍家光を決める時も、最終的に、そのように判断している。

というわけで、秀忠にも、忠継を後継に推すことは断られる。そこで、とった彼女の行動が、女の浅はかさというべきものだ。いわゆる「毒饅頭事件」だ。すでに、輝政は亡くなり、利隆が姫路城主になり、忠継は岡山城主になっている。彼女も、そこに一緒に付いて行っている。

そこに、利隆が、ご機嫌伺いに行ったところ、ここをチャンスと見て、彼を亡き者にしようとする。手段は毒饅頭だ。ところが、居合わせた侍女が、手文字で利隆に知らせ、忠継も、母親が兄を毒殺しようとしていることを知って、咄嗟に、その饅頭を頬張る。督姫は、それを奪い取って口に入れるというような修羅場。結果的に、忠継も督姫も、亡くなる。

督姫の自分の産んだ子供に対する愛情は分るが、人間としての教養に欠けていたことは明らかだ。でも、その気持ちは分るという女性は多い。その辺は実際に腹を痛めて子供を産む女性と、客観的に判断する男の差かもしれない。

この夫婦が幸せであったかと言うと、輝政は、あまり楽しくない家庭生活のため、仕事に没頭して、その憂さを晴らし、督姫の方は、あまり自らの才覚で夫を盛りたてることもなく、単に家康の娘だということで、無駄な一生を過ごしたのかもしれない。お金持ちの家に生まれるというのも、大変です。やはり平平凡凡でも、暖かい家庭が一番ですなあ。まあ、彼らのお陰で、現在の姫路があるわけだけれど。

終わり。

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2011年12月15日 (木)

池田輝政と督姫 その三

家康の意向を知っていたかどうかわからないが、督姫は、そんな輝政のところに嫁ぐ。もちろん、輝政の動きを監視できる多くの召使を連れて姫路城に入る。彼女は播磨御前と呼ばれるようになる。家康の後ろ盾を明らかに意識したものだ。虎の威を借りる狐同様で、嬶(かかあ)天下であった。

さらに池田家の重臣で輝政と関係が深く、今は三木城主の伊木忠次は家康と気脈を通じており、姫路城の家老の息子の伊木忠繁を通じて、姫路での出来事は、こと細かく家康に連絡が入り、また家康の意向は随時、忠次に連絡が入る状況だ。

多分、輝政は養子の様な扱いを受けたであろう。ただ、彼は、そういうことは多少苦痛に感じていたかもしれないが、それらを忘れるように、播磨入りすると、早速、当時三層の姫路城の改築に取り組む。それだけでなく、町割りもして、整然とした城下町にしていく。

彼の本心は分らないが、姫路城から飾磨港に通ずる運河も作ろうとする。これは家康に対する意趣返しとして、秀頼を盛りたてるつもりであったかもしれない。ここら辺は、家康と輝政の微妙な葛藤が感じられる(なお輝政の父と兄は、かつて徳川軍と戦い戦死している)。

だが、家康は老獪である。輝政に加禄するとともに、子供にも加禄し、百万石の大名にしてしまう。周囲から、身動きできないように縛ってしまうのだ。そのような重苦しい環境の中、彼は十数年、ハイペースで播磨地区で活動し、姫路城を中心に町づくりに心を傾けた結果、寿命を縮めてしまう。現在の西播磨の原型は彼が作り、後世の者は、その恩恵を受けている。

次回に続く。

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2011年12月14日 (水)

池田輝政と督姫 その二

池田輝政と督姫の仲介をしたのは秀吉だ。それは家康を何とか繋ぎ止めたいとする秀吉の策略の一つだ。何せ輝政は秀吉の養子同然、督姫は家康の次女。バランスは取れている。これは確かに秀吉が生きている内は、有効な手立てであった。

しかしながら、秀吉が亡くなると天下の形勢は違ったものになる。元々、家康は自分が天下を握るべきだと考えていたし、ある意味、庶民出身の秀吉を、今は太閤と言えども見下していた。ただ、彼の思考は柔軟だ。利用された人間を逆に自分の立場から再利用する。それが池田輝政であった。

関ヶ原の戦いで大勢は決まったと言っても、秀吉の子供の秀頼は大阪城にいるし、遠方にやった秀吉の子飼いは皆、秀吉の恩顧の者たちだ。そもそも、関ヶ原の戦い自体、官僚の石田三成たちと加藤清正などの前線で戦ってきた武人との争いに、付け込んだのが家康であろう。家康としても、とても盤石な体制とは言い難い。

そこで、旧秀吉体制を牽制する勢力として、姫路城に楔を打ち込む必要があった。姫路城からは、西側の秀吉子飼いの武人たちが変な動きをしないように監視できる。大阪には、彼らと連絡するのをチェックできる。

問題は誰を城主にするか。家康子飼いの武将を城主にすることもできるが、旧秀吉側を刺激すると厄介なことになる。そこで選ばれたのが、秀吉の養子とも言われた輝政、妻は自分の娘だが、問題がないだろう。家康にすれば、娘を通じて、秀吉に恩顧を感じている輝政をいかにコントロールするかに頭を捻ったに違いない。

次回に続く

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2011年12月13日 (火)

池田輝政と督姫 その一

関ヶ原の合戦後、姫路城城主になった池田輝政の人生も希有なものであろう。彼は姫路城の改修工事を8年にわたり続け(*注)、町割りも含めて、現在の姫路城を作り上げた。彼は静かな人だったらしいが、流風には建築設計者のようなタイプを想像させる。

永禄7年(1613年)に、織田信長の重臣、池田恒興の次男として、尾張国清州城で生まれた彼は、幼名を三左衛門という。この名前は、後年、彼が姫路で開発した飾磨港まで通ずる運河(濠)に、その名前を現在まで残している。

彼は、当初、親と共に、信長に仕えるようになるが、信長が明智光秀の裏切りに遭い、殺されると、父兄と共に、長年の付き合いから秀吉に仕える。1583年には池尻城城主になる。ところが、小牧・長久手の戦いでは、あろうことか、父と兄が戦死してしまう。そういうことで、家督のお鉢が回ってきて、相続することになる。

その後、美濃国大垣城城主、岐阜城城主になる。彼は秀吉の下、ほとんどの戦いに参戦している。そういうことで、秀吉に可愛がられ、1587年には羽柴氏を与えられる。秀吉にすれば、養子のような扱いだった。1590年には加増されて、豊橋にある吉田城の城主になり、これはまさに、豊臣一族に準じる扱いであった。

そして、秀吉の計らいで、家康の次女、督姫と結婚することになる。両者とも再婚である。輝政は、最初、糸姫と結婚して、糸姫は、長男、利隆を産んだが、産後の肥立ちが悪く、結婚生活の継続が不可能になり、離縁している。督姫の方は死別であった。この結婚が、輝政に、いい意味でも悪い意味でも大きな転機になるきっかけを与える。

*注

改修工事に必要以上に時間がかかっているのは、途中で、幕府の方針で、他の城の改修工事も手掛けざるを得なかったからだ。

次回に続く。

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2011年12月12日 (月)

源九郎狐と刑部大明神

源九郎狐というものがある。大和にいて、いたずら好きの狐だったという話が伝わる。当時、狐は、まだ人々の間に溶け込んでいた動物であったのだろう。人間と狐の関わりは深かったようで、狐が大蛇を退治した話も伝わる。

なぜ源九郎狐かというと、義経が兄、頼朝と争っていた時、稲荷すなわち狐に幾度も助けられ、義経の源九郎の名を贈ったからという。『義経千本桜』では、親狐の皮で作られた初音の鼓を慕って、持ち主の静御前のもとに佐藤忠信に化けて出て来る話になっている。

ところで、この源九郎狐は、姫路の刑部(おさかべ)狐と兄弟ということになっている。刑部神社については、姫路ゆかた祭りについて記した時、若干触れたが、ここで刑部大明神について、再度記しておこう。

刑部大明神は、姫路城内本丸に祀られてある。刑部大明神の御神体は老いたメスの白狐だそうである。オスではなくて、メスなのだ。源九郎狐の姉ということになっている。だから兄弟というより、姉弟が正しいようだ。

以前にも触れたが、姫山には、刑部親王が、光仁天皇の后との密通を讒訴されて、配流された。その時、娘の富姫も一緒に来ている。刑部大明神は、娘 富姫が、汚名を被せられ、屈辱の中で亡くなった父の魂を鎮め祀るためのものだった。もともとは富姫刑部両社であったという。祭神は専女(とうや)神、又倉稲魂(うかのみたま)てある。

ところが、どうしたことか、姫路の東にある、なき本の六百歳の白狐およし狐というものと一緒にされてしまった。ここら辺の経過はよく分からない。後年、西鶴は、この辺を脚色して、刑部狐を神の使いとしとての白狐だとしている。白狐は源九郎狐の姉で、白い狐の中に富姫がいたという設定である。

歴史的な言い伝えでは、源九郎狐は危機にある時、どこからともなく現れて、救ってくれるというイメージだ。だが、その正体は立場上は助ける立場でないのに、敵側を助けたため、名を隠したのではないか。

それでも、源九郎狐は時代とともに、伝説の神に祭り上げられてしまう。西鶴の解釈は別にして、そういうことを考え合わせると、庶民は、刑部大明神を祀るとともに、白狐およしに、自らの救いも一緒に求めたのかもしれない。混合されたのは、そういう事情ではないだろうか。

 

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2011年12月11日 (日)

大学教授という名称

昔は、末は博士か大臣かと、子供に期待したものだ。それほどに、博士とか大臣は、一廉の人物と見られた。ところが、戦後は、大臣にしても資質に問題がある人物でも、大臣になっている。最近も、人間としても深みが足りないと思うことはしばしばだ。それは多くの失言がそれを物語っている。

大学の教授にしても、研究心があり、時代の先を行く、頭のいい人を想像するが最近はそうでもないらしい。論文を一本も書いてなくても、教授になれるらしい。一体、大学の教授の資格は、どのようになっているのだろう。研究心もない人でも、その地位が得られるということだろうか。大変おかしなことだ。

よくわからないけれど、大学の粗製乱造の結果、教授職もそのようなのだろう。私たちは、その名前に惑わされてはいけない。彼らの実績を確認して、より分けて人物を見る必要がありそうだ。彼らをリストラすることに躊躇してはいけないだろう。

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ジャージで寝る

ここ数日、あまりにも寒いので、少し大変。冬は苦手だ。それでも、昼間は体を動かすので何とかなる。問題は就寝時。入浴後、湯ざめしないようにして、すぐ羽毛布団に毛布を被せて寝る。足元が寒い。パジャマの足先から、風が入る感じで寒い。

あれこれ考えていたら、若い頃、冬の昼間、ジャージ姿で室内をうろうろしていたことを思い出し、もしかしたら、あれを着用すればいいかと思って、寒い中を起きて、押入れから懐かしいが、最近は着用せず、処分予定のジャージを発見。それを着て、再度寝ると、しばらくして、暖かくなってきた。

なぜかなと思っていたら、ジャージはパジャマと違って、足元が締っている。これで身体とジャージの間に熱が溜まるのだろう。素材の違いがあるかもしれない。それでも、寒いことは寒いのだが、やっと眠りに就いた。これで、古いジャージも再利用されて、処分することなく、しばらく、流風の身体を温めてくれる。不要なものは、割と何でも処分する方だが、考え直さねば。

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2011年12月10日 (土)

特定検診は必要か

毎年4月になると、特定検診受診券が役所から送られてくる。特定検診は、以前問題になったメタボを無くそうとする検診なのだろう。ただ、メタボが必ずしも悪くないと発表されて、その意味は薄れつつある。少し肥え気味の方が長生きするのだ。

ところが、この受診をしないと、やいのやいのと督促の葉書が来る。早く受診せよ、ということらしい。ただ、流風はかかり付けの医院で定期健診を受けており、本来必要がない。そのことを説明しても、それとこれとは別という。

どうも、受診しないと、役所の実入りが悪くなるような感じがする。特定検診の対象は40歳から74歳までだが、本来、健康診断を受けるかどうかは自己責任だ。役所から、あれこれ言われたくない。

医療機関は、検査データを参考にして、『病名』を作り出す。本人は、何ともないのに、病気にされ、更なる精密検査や薬が処方される。これが高齢者医療の費用が拡大している原因ではなかろうか。

もちろん、重篤な病気を発見する場合もあるから、健康診断は全く無意味ではない。でも、それは、せいぜい60歳までの現役世代に限るべきだろう。それ以後は、自己責任にすればいい。ある程度の年齢になれば、自分の体の状態は自分で判断できる。

そういうわけで、メタボの検診は全世代で全く必要がないだろう。メタボの定義も曖昧なままだ。となれば、全く税金の無駄遣いだ。やり始めたら、なかなかやめられない官庁の体質が見られる。今後、厚生労働省は、予算縮減に伴い、予算の組み替えが求められるだろうが、メダホ検診は優先順序から外すか、廃止すべきだろう。浮いた予算は、他の予算に計上できるではないか。

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2011年12月 9日 (金)

宇宙と人間

科学がこんなに進歩しても、分らないことは多いようである。分らないことが多いから、科学者の知的好奇心を刺激する。

たとえば、宇宙はアメーバの形をしているのではないかと言う人がいる。未だ確認されてはいないが、仮説としては面白い。凡そ、宇宙は、そんなところかもしれない。そういうことが、仮説の検証として、事実かどうか確認したいと思うようになる。

しかしながら、宇宙からすれば、地球は、その構成要素の一つに過ぎない。だから、その役割を損なえば、宇宙全体が崩壊するのかもしれない。そういう意味では、人間とは、地球にとっても、宇宙全体にとっても、極めて危うい存在だと分る。

科学者の知的好奇心を満たすために、宇宙に行って喜んでいる人々がいるが、あまり宇宙開発など、やらない方がいいのかもしれない。現在やっていることは、宇宙の環境破壊と言えないこともない。ロケットを打ち上げ、成層圏を破壊し、宇宙に異物が入り込む。そして、バランスを崩せば、地球自体も危うくなる。

私たちは、どうすればいいのだろう。

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2011年12月 8日 (木)

政党の私物化

どうも国会の議論を聞いていると、自民党、公明党は、選挙だけに関心があり、国民のための政策論争になっていない。特に公明党はひどい。質問者のレベルが低すぎる。他に適切な人はいないのかと思ってしまう。

更に気になるのが、彼らが政権与党であった時の主張を曲げて、民主党政権と争っていることだ。これは政党の私物化と言えるだろう。本来、彼らが政権を握っていた時の間違った政策やおざなりにした政策が、現在の日本の国家財政を揺るがせているという反省がない。

民主党も政権を握ってから、そのマニュフェストの矛盾に気づいた人たちは、それを修正しようとしている。それも野党と同じではないかと言えないことはないが、政権側は、常に現実的路線でなければならないから、野党とは立場が違う。

そのことが理解できない一部民主党の議員たちは、マニュフェストと違うから国民に説明できないと政府を攻撃するが、それは選挙で勝てないと思うからであろう。凡そ、議員はすべての国民を代表しているのだから、選挙などのことを考えず、国民にとってベストの政策を遂行するよう努力すべきなのだ。

ところが、民主党も、小沢氏は選挙のみに関心が行き、こと経済財政政策に関しては、頓珍漢な発言が多すぎる。保守勢力の意見を代表しているのかもしれないが、国を取り巻く環境を考えると、彼らの意見には首肯できない(*注)。

一つ間違えば、野党や民主党の小沢氏グループは、政党を私物化しているように受け取られかねない。党を離れ、本当に国のための議論を行うべきだろう。

*注

小沢氏は外交には詳しいが、経済にはあまり詳しくないように思う。結果的に、選挙民におもねる発言をしているのは問題だ。最早、彼の政治手法は、今後、通用しない。そろそろ引退を考えられた方がいいかもしれない。彼は、政党助成金、小選挙区制、民主党政権など、色々課題はあるにしても、それなりの実績をあげられている。晩節を汚すべきではないだろう。

*追記

政党の私物化というと、政治資金の私物化として捉えられることが多いが、ここでは、政党に所属するとはいえ、国会議員が、本来の使命を忘れ、政党の僕になってしまっていることを非難した。

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2011年12月 7日 (水)

喫茶店について、うだうだと

毎朝、寒い日が続いている。やはり温かい飲み物はありがたい。緑茶、コーヒー、紅茶、ウーロン茶、はと麦茶、ココア、蜂蜜レモン、ショウガ湯、甘酒など、色々試す。外に出ると、最近は、あまり利用しなくなった喫茶店だが、たまに利用する。うだうだと、取り留めもなく、喫茶店について記す。それが本日の気分(笑)。

残念ながら近所にはなく、駅まで出ないと、お気に入りの喫茶店はない。よく行く喫茶店は、昔からあるタイプの喫茶店、後はスタバ、ドトールが多いようである。喫茶はハンバーガーショップでもできるが、どうも入りにくい。客層に違和感がある。以前、プリペイドカードを頂いたことがあるが、利用はしなかった。

やはり喫茶店は、落ち着けるところがいい。だけど、そういうところは、時たま利用するが、コーヒーの味はたいして変わらないのに概して高い。昔は音楽喫茶などもあったが、最近はあまりない。若い頃は、一杯のコーヒーで、店には迷惑だろうが、どれだけ長く粘るかという楽しみがあった。今は粘る意欲もない(苦笑)。

ということで、最近は、スタバ、ドトールに行く。ただし、スタバは商品の割に、値上がりして価格が高いので、あまり行かなくなった。客層も、最近は、どこか合わない。接客もイマイチだし、設備の定期的な更新もされていないに様に感じる。接客は、マニュアル通りにやっているのだろうけれど、何か違和感がある(ただし、店によって、多少、印象は異なる)。

それに比べて、ドトールは、どの店も、接客に安定感がある。一部、不愉快な店もないではないが、流れるような接客で、大方の店で苦痛は感じない。接客も安定しているだろう。それに価格も安い方だろう。価格に対して、ほどほどのコーヒーの味と接客。それが安心感を生む。

話は変わるけれど、少し前のことだけれど、そのドトールの店で、隣のお婆さん三人組の内、おしゃべりな方と、たまたま話す機会があったけれど、彼女らがおしゃべりできる空間があまりないとぼやいていた。田舎から出てきたときは、ここで時間を過ごすそうだ。

春から秋にかけては、屋外で、いくらでも駄弁る場所はあるが、さすがに、この時期はそういうわけにもいかないということのようだ。それで喫茶にかける予算は1日200円程度らしい。なるほどね。金が余りかからず、おしゃべりできる空間か。女性らしい。

流風は、以前は、喫茶店で読書ということも多かったが、最近は減っているかもしれない。どちらかというと、夏場の利用の方が多い。この寒い時期は、暖房の効いている喫茶店に行くのもいいが、風邪をうつされても困るし。でも、喫茶店は気軽な交流の場。今後も、無くなることはないだろう。それぞれに頑張ってほしいものだ。

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2011年12月 6日 (火)

報道の劣化

報道が劣化している。これは、以前、福島でも、大臣の一部のどうでもいい発言を取り上げて、大臣を辞任に追い込んだことあったが、あれは福島にとって、何のプラスにもなっていない。政局にされて、復興予算の通過が遅れている。尻馬に乗った多くの報道機関も批判されるべきだ。

今回も、琉球新報は、オフレコの良しあしの問題は別にしても、ルール違反して、オフレコの内容を報道し、政界を混乱させている。沖縄のためにも決してプラスには、ならないだろう。このようなことをすれば、本土の沖縄に対する感情が却って悪くなることぐらい予測がつかなかったのだろうか。

報道は、何も得た情報をすべて、そのままに伝えればいいものではない。元ネタの裏にあるものを十分読み取り、社会的影響を十分考えて報道すべきだろう。確かに記者クラブ等悪弊はあるにしても、報道のレベルが劣化していると思う。

それはまず記者教育が十分でないのだろう。以前、首相に対する、ぶら下がり記事があった(現在の野田首相は断っている)。小泉元首相が、人気取りのために始めた慣習で、横行したが、記者のあまりにも無知な質問に唖然としたものである。

一体、この人たちは政治について学習しているのか。まるで小学生のような質問だった。いや、それ以下の質問も多かった。そのようなやり取りで報道を汚していいものだろうかと、よく思ったものだ。政治記者はこれら新人に限らず、後に政治解説している者も含めて、レベルが低い。狭い了見で、政治を見ている節がある。

報道は知的レベルでの競争でなければならない。事実報道は必要だが、その裏にあるものを十分忖度して、得た情報を取捨選択しなければならない。また、オフレコのルールが業界のルールにしても、守るのが嫌なのなら、業界から足を洗い、表の報道はあきらめて、裏報道に徹するべきだろう。報道のあり方について、騒動を起こし、一般国民にも不信感を持たせた琉球新報の罪は重い。

*追記

もちろん、沖縄問題について、オフレコにしても、軽率な発言をした官僚の表現能力のなさには幻滅せざるを得ないのは確かだ。とても教養のある人物とは思えない。

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2011年12月 5日 (月)

刈萱上人の無常観

僧の中には世の無常を感じて出家された例が多い。刈萱上人もそのようであったらしい。今回は、流風の覚えとして、刈萱上人・石童丸親子の物語を記していく。彼は、元々、筑前の国司で加藤左衛門尉重氏という人であった。ある時、世の無常を感じて、家を飛び出し、京都、法然上人のもとを訪ね、出家する。その後、高野山に赴き、仏道修行に励む。

家族は、妻や娘は、ほったらかしにして、出てきている。ところが、彼の出家後に、妻の千里御前は男の子を産む。彼は、どこに行ったかわからないので連絡はできていない。子供は石童丸と名付けられ、父は亡くなったとして養育していくが、風の便りで、重氏が高野山で修行していることが分かる。

そこで、千里御前は高野山に、石童丸を連れて元夫を訪ねて行く。千里御前は石童丸に、刈萱上人が父親であることを告げていない。高野山は女人禁制。仕方なく、石童丸に手紙を預け、刈萱上人に会いに行かせる。しかし、重氏は、千里御前から、手紙で、石童丸が、彼の子供であると告げる内容であったにもかかわらず、父子の名乗りはしない。

石童丸は、手紙を届ける役割を終え、高野山を下りて、宿所に戻ると、母の千里御前は亡くなっていた。子供を父親に届けた安心感からか、あるいは女手一人で生き抜くことに絶望したのかもしれない。やむを得ず、彼は筑前に帰るのだが、ここでは姉も亡くなっていた。石童丸は無常を感じて、再度、高野山に入り、刈萱上人に弟子入りを願い、仏道の道に入る。

石童丸は、ついに刈萱上人が父親と知らず、30年修行する。しかしながら、刈萱上人の方は、親子の情愛断ちがたく、このままではいけないと思い、一人で信濃に行き、善光寺近くに庵を営み、善光寺如来に導かれて地蔵菩薩を刻み、ここで没する。後、石童丸は、刈萱上人が実は父だと知り、信濃に向かい、同じように、地蔵菩薩を刻む。これを刈萱親子地蔵と言うらしい。

一応、刈萱上人・石童丸親子の物語は、以上のようになっているのだが、石童丸が、母親と姉を急に失って、無常を感じたことはわかるのだが、刈萱上人がなぜ無常を感じたのか。これについては、嘘か真か、分りかねるが次のような話がある。落語のネタにもなっている。

昔、加藤左衛門尉重氏という殿様が、奥方と側室が姉妹のように親しくしているので、喜んでいた。ところが、ある晩、二人が向かい合って、双六に興じていたが、まどろんで、突っ伏していた。その様子は、二人の髪の毛が、蛇みたいに絡み合い、火を吐いて争っているのを隙見して、女心の怖ろしさを知る。そこで無常を感じて出家したというのだ。

人が無常を感じるのは、いろんなきっかけがあるだろうが、重氏の場合は、日頃から、奥方と側室の間に流れる微妙な雰囲気を感じていたのだろう。それにしても、彼は、どこに無常を感じたのだろうか。自分では、どうすることもできない現世の重苦しさを感じたのだろうか。

昔から、殿様には殿様の悩みが、金持ちには金持ちの悩みがあると言われる。庶民からすれば、想像しがたいことだが、人は、その存在について、いつも疑念を抱いているのだろう。なぜ自分は存在しているのかと。そして、無常観に襲われるのだろう。

ただ人間は、生まれ落ちたときから、それなりの使命や宿命を帯びている。彼らは、どうすることもできないと感じて、出家という方法を選んだが、無常を感じても、それを楽しむ気持ちを持ちたいものだ。無常も人間が生きていく上では仕方ないのだから。

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2011年12月 3日 (土)

藤の前の悲劇

今回も、播磨と関わりのある人物について、触れてみよう。それは藤の前の悲しい話だ。彼女は、別名、顔世御前(*注1)ともいう。彼女は、塩冶高貞の妻だ。塩冶高貞とは、浄瑠璃や歌舞伎では、『仮名手本忠臣蔵』に出てくる塩冶判官のことだが、実際の話とは全く違う。

『仮名手本忠臣蔵』では、実名を使えないから、『太平記』から、この人物の名前を借りてきたに過ぎない。『太平記』に記されている藤の前の話は次のようになっている(若干、流風が脚色)。

藤の前は、後醍醐天皇のお気に入りの官女で、弘徽殿の局とも呼ばれた(*注2)。大変な美人であったらしい。後醍醐天皇は隠岐に流されるが、その時にも一緒に連れて行っている。それほど愛した官女なのだ。

後醍醐天皇は隠岐から脱出を図るが、それを助けたのが、塩冶高貞だ。彼は、名和長年と千騎で駆けつけ、幕府軍を破り、天皇を無事、京に送り届ける。ところが、天皇には、渡す礼が何もない。そこで、自分の一番のお気に入りの藤の前を、褒美として下げ渡す。

褒美と言えば聞こえはいいが、天皇も、そろそろ藤の前に飽きがきていたのかもしれない。昔は、自分の女を臣下に下げ渡すということがよく行われたようだ。鎌足も、鏡王女を天智天皇から下げ渡されている。女性を奴隷や物のように扱うのは、当時の時代性というものだろう。彼女らには、名前も与えられていなかった。

塩冶高貞は武骨で田舎者だったが、藤の前を大事にし、大変愛した。藤の前も、それに応えるように、天皇からは一方的に愛を受けるだけだったが、素朴な高貞を本当に愛した。おそらく、この時期が、両者にとって、一番幸せだっただろう。

ところが、幸せは、残念ながら長続きしない。というのは、政局が慌ただしく変化したからだ。すなわち、楠正成も、新田義貞も足利軍に負けて、戦死する。後、後醍醐天皇も亡くなる。1336年に室町幕府成立。世は足利の天下。

この足利幕府の成立に大きく貢献したのが、高師直(こうのもろなお)。彼は実質権力を握り、暴政を始める。街に繰り出し、度の過ぎた荒淫のやりたい放題。これは、まるで盗賊と同じ。それを恐れるように、周囲も、おべっか連中に囲まれる。

ある時、ある侍従が、戯れに、藤の前の評判を話すと、忽ち関心を示し、熱を上げる。恋文を吉田兼好に頼み、恋文攻め。吉田兼好も、よく引き受けたと思うのだが、権力者の前には、膝まずかざるを得なかったようだ。

ところが、彼女は、無礼極まりないと、いつも、それを突き返していた。これに怒った師直は、兼好を首にして、薬師寺公義に、和歌を一首作らせて送る。

   返すさえ 手や触れけんと 思ふにぞ

       わが文ながら うちも置かず

これには、思わず使いの者に次の歌を返す。それは『新古今和歌集』にある寂蓮の次の歌。不倫をたしなめるような内容だ。

     さなぎだに 重きが上の 小夜衣

       わが褄ならぬ 褄な重ねそ

これには、高師直の周囲も困ってしまって、止めさせようと試みるが、ますます熱が上がるばかり。周囲は、彼の熱を冷まさせようと、今度は、藤の前が入浴している所を覗き見させる。実態を見れば、多分、幻滅するだろうと判断したのだが、意に反して、更に燃え上がってしまう。火に油を注ぐ結果になったのだ。思い込みが激しいと、そうなるんだろうね。

ついに、彼は、何が何でもと手に入れようと思い込み、彼女の夫の塩冶高貞を無実の罪で消し去ろうとする。それを察した高貞は、京から逃げ、山陰道から本国の出雲に向かう。妻の藤の前は、別ルートで、二台の牛車仕立ての輿で、二人の子供たちと一緒に、寺社参りの形にして、若者20人ばかりつけて、山陽道を西に逃げていた。

ところが、追手に、播磨の豊富まで来て、追いつかれ囲まれる。そこで、藤の前と子供は近くの堂に逃げ込み、火を放つ。実は、子供は、ある僧に託して逃がしている。藤の前は、炎の中で、一族の家来、村宗に胸を突かせ、村宗も自害して果てる。

後、彼女が自害した跡地に堂が建てられ、「焼堂」と呼ばれるようになるが、その際、焼けただれた彼女の念持仏の如意輪観音像(一寸八分)が見つかる。それが姫路市豊富町酒井にある円通寺(曹洞宗)に安置されている。なお円通寺とは彼女の法名「水月院円通妙王大姉」から採っている。

*注1

顔世御前という名は、『太平記』には見られない。この名は、後世、歌舞伎や浄瑠璃にする時、便宜的につけられた名だ。

*注2

弘徽殿の西の台とも。彼女は、後醍醐天皇の外戚の早田宮(さわだのみや)の娘と伝えられる。

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2011年12月 2日 (金)

平清盛と神戸 その十二 その他の地区の観光スポット

最後に、平家関係の、その他の地区(神戸市以外含む)を紹介しておこう。

●布引の滝

清盛の滝見見物の折、同行の難波経房が源義平の霊に報復され、雷に打たれたという話がある。

神戸市中央区。新神戸駅からロープウェイか歩く。

●腕塚神社

平清盛の弟、文武共に優れていた忠度(ただのり)は、一の谷合戦に敗れ、落ちのびいていたところ、源氏の武士、岡部六弥太忠澄と組み合いとなり、忠度が、岡部六弥太忠澄の首を切り落とそうとした時、彼の家臣が駆けつけ、腕を切り落される。最早、これまでと思った忠度は念仏を唱え、討取られる。その塚が残る。彼は風雅の人で、藤原俊成に師事した。

  さざなみや 志賀の都は あれにしを

   昔ながらの 山桜かな

なお、彼の腕塚胴塚は、地下鉄海岸線、駒ヶ林駅近くに、別々にある。

明石市天文町。山陽電車 人丸前駅すぐ。

●平知章の碑

壇ノ浦の海に沈んだ平家の総大将の知盛の息子、知章の碑がある。彼は、一の谷の合戦で、父を救ったという。妙泉寺に墓がある。

長田区北町。高速長田駅から徒歩約3分

●満福寺

清盛の創建といい伝えられる。塀が亀甲形の石で築かれている。

長田区。市バス「本庄町」下車、東へ3分。

●監物太郎の碑

平知盛の家臣である監物太郎が知盛の嫡男、知章を救おうとして、討ち死にしたのを偲び、地元の人によって祀られている。

高速長田駅から徒歩約3分

●石水寺

京都南禅寺の末寺。一の谷の合戦の時、この周辺でも、戦いが繰り広げられ、名谷(みょうだに)には、戦死者を弔う石碑が500基以上あるらしい。この寺内には、清盛の孫の師盛を弔った塚がある。見学は随時、現地で申し込み。

地下鉄名谷駅下車、山陽バス乗り換え。奥畑下車、徒歩約5分。

●丹生(にう)神社

清盛が福原遷都した時、ここを比叡山になぞらえて、日吉山王(ひえさんのう)権現を祀って、山荘から、烏原川沿いに、山に登って、神社に月参りしたと伝えられる。明治以前は、日吉神社と呼ばれていた。

北区。神戸電鉄有馬線箕谷下車。衝原行きのバスに乗って丹生神社前下車。丹生山(たんしょうざん)の登山口にある鳥居をくぐって、しばらく行くと宝物殿がある。そこには、清盛が寄進した「当山景画大幅」がある。予約すると観覧できるそうだ。

神社は山の頂にあるので、ここから約1時間程度かかる。それなりの覚悟をして、行く必要がある。

●太山寺

平家一門が納めたという法華経など全32巻が伝わる。国の重要文化財に指定されている。

西区伊川谷町。地下鉄西神・山手線学園都市前下車、徒歩約25分。

●善楽寺戒光院

大化年間に創建されたものだが、消失したため、清盛が再興した。明石市で一番古い寺といわれる。清盛の死後、清盛の供養塔が立つ。清盛の甥の忠快法師が建立したもの。高さ3.36m。

兵庫県明石市。明石駅より神姫バス大観橋下車、徒歩5分ほど。

●長楽寺

高倉天皇が皇子誕生を祝い、清盛に命じて、一体地蔵尊を安置させた。それが当寺の本尊である延命子安地蔵尊である。

兵庫県加古川市。JR宝殿駅より神姫バス西牧行き、長楽園下車徒歩20分。

*追記

以上、平家、主として平清盛と係わりのある地を、流風なりに選定して記してきた。ただし、もっと詳しいことは、ネットで『神戸源平物語』を参考にしてください。

  『神戸源平物語』  http://feel-kobe.jp/genpei/shiseki02.html

今回で、一応、「平清盛と神戸」の記事は終了します。後日、また気づいたら、追加の記事を書き込みます。

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