« 大学教授という名称 | トップページ | 池田輝政と督姫 その一 »

2011年12月12日 (月)

源九郎狐と刑部大明神

源九郎狐というものがある。大和にいて、いたずら好きの狐だったという話が伝わる。当時、狐は、まだ人々の間に溶け込んでいた動物であったのだろう。人間と狐の関わりは深かったようで、狐が大蛇を退治した話も伝わる。

なぜ源九郎狐かというと、義経が兄、頼朝と争っていた時、稲荷すなわち狐に幾度も助けられ、義経の源九郎の名を贈ったからという。『義経千本桜』では、親狐の皮で作られた初音の鼓を慕って、持ち主の静御前のもとに佐藤忠信に化けて出て来る話になっている。

ところで、この源九郎狐は、姫路の刑部(おさかべ)狐と兄弟ということになっている。刑部神社については、姫路ゆかた祭りについて記した時、若干触れたが、ここで刑部大明神について、再度記しておこう。

刑部大明神は、姫路城内本丸に祀られてある。刑部大明神の御神体は老いたメスの白狐だそうである。オスではなくて、メスなのだ。源九郎狐の姉ということになっている。だから兄弟というより、姉弟が正しいようだ。

以前にも触れたが、姫山には、刑部親王が、光仁天皇の后との密通を讒訴されて、配流された。その時、娘の富姫も一緒に来ている。刑部大明神は、娘 富姫が、汚名を被せられ、屈辱の中で亡くなった父の魂を鎮め祀るためのものだった。もともとは富姫刑部両社であったという。祭神は専女(とうや)神、又倉稲魂(うかのみたま)てある。

ところが、どうしたことか、姫路の東にある、なき本の六百歳の白狐およし狐というものと一緒にされてしまった。ここら辺の経過はよく分からない。後年、西鶴は、この辺を脚色して、刑部狐を神の使いとしとての白狐だとしている。白狐は源九郎狐の姉で、白い狐の中に富姫がいたという設定である。

歴史的な言い伝えでは、源九郎狐は危機にある時、どこからともなく現れて、救ってくれるというイメージだ。だが、その正体は立場上は助ける立場でないのに、敵側を助けたため、名を隠したのではないか。

それでも、源九郎狐は時代とともに、伝説の神に祭り上げられてしまう。西鶴の解釈は別にして、そういうことを考え合わせると、庶民は、刑部大明神を祀るとともに、白狐およしに、自らの救いも一緒に求めたのかもしれない。混合されたのは、そういう事情ではないだろうか。

 

|

« 大学教授という名称 | トップページ | 池田輝政と督姫 その一 »

姫路と播磨」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 大学教授という名称 | トップページ | 池田輝政と督姫 その一 »