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2012年2月11日 (土)

謡曲『室君』について その一 概要

兵庫県たつの市に室津という漁港がある。この近辺で取れた魚は大変おいしい。室津は、昔、波が静かで、当時の船の寄港先となっていた。所謂、五泊(*注1)の一つとされる。かつて朝鮮通信使の接待も、ここでなされたという。それで、多くの人が行き交った。

そういうわけで、港には女ありということで、ここ室津にも、多くの遊女が存在した。それを題材にした謡曲に『室君』がある。室君とは、遊女の長のことである。伝説の美女で、最初の室君とは友君のこと(*注2)で、元々は木曽義仲の第二夫人で山吹御前と呼ばれた。

彼女は、子供を失い、無常感を感じ、室津(兵庫県たつの市)で、亡き子供を弔うことになる。そこで後、遊女になったとされる。それが室津が遊女発祥の地と呼ばれる由縁である。謡曲の内容は次のようになっている。

播州室津で、賀茂明神に仕えている神職の者が、天下泰平を祝って、神前に囃す御神事を執り行うため、彼が宰領して、室君達を白拍子の姿で、船に乗せて、神楽を奏する。

これにつられて、室の明神が現れる。女体で韋提希夫人ということになっている。彼女は、天竺摩訶陀国王頻婆娑羅の夫人である。阿闍世王の母、釈尊の信者であったが、仏となって、我が国に垂迹(じゃく)して、賀茂の明神として現れる。すなわち、室の明神=賀茂の明神=韋提希夫人ということになる。それは友君ということになるのかもしれない。

*注1

五泊とは、「摂津播磨五泊の港(略して、摂播五泊の港)」のことで、行基が開いたとされる。

  河尻泊(現、尼崎市)

    大輪田泊(現、神戸市)

  魚住泊(現、明石市)

    韓泊(現、姫路市飾磨)

    室生泊(現、たつの市室津)

*注2

室君と友君は異なると云う見解もある。友君が木曽義仲の第二夫人で山吹御前で、遊女の起源とするもので、室君は、その後に出てくる別人だとするものだ。

ただ室君というのは、人の名ではなく、遊女の長のことを指すとすれば、友君は初代室君であったと考えられる。その後、遊女の長は代替わりするので、室君は次々と変わるということになり、そこに混乱が感じられる。

 

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