散ってしまった梅の花と漢詩『夜坐』
やはり昨日の強い雨風で、ついに梅の花が散ってしまった。今年は咲くのが遅く、桜の咲く時期になって、開花して、そして、散って行った。なんとせわしないことよ。あの花の散り方は、桜と似ているような感じもする。散る時は、皆、同じなのかもしれない。それは人間も同じかも。
さて、漢詩にも、そういう梅の花が散ることを題材にしたものがある。それは鄭有極によるもので、『夜坐』というもの。以前、同じ題で、藤田東湖のものを取り上げた(2010.10.21付)が、詩の内容の雰囲気は異なる。なお、鄭有極は、南宋の詩人、鄭会のこと。有極は字(あざな)である。朱熹に学んだという。
江梅 雪を欺きて 樹槎牙たり
梅片は飄零し雪片は斜めなり
夜半 風と和して窓紙に到る
知らず 是れ雪 是れ梅花
いつものように解釈を楽しむと次のようになるだろうか。
「枝が筏(いかだ)のように入り組んでいる野梅の花が、まるで雪が降るかのような真似をして、花は散り続き、雪のように斜めに降り注いでいる。夜中に、風と一緒に窓辺にやってきたが、それが雪なのか、果たして、梅の花かは分らない」と。
流風の家の梅は一本しかないので、とても、このような情景は感じ取れない。でも、散りゆく感懐だけは同じだ。
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