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2012年8月 2日 (木)

第42回(2012) 姫路城薪能『杜若』と「東下り」

明日の平成24年8月3日から、5日まで、恒例の姫路お城まつりだ。今年は63回目。ゆかた祭りと異なり、開催日は、毎年異なる。一応、土日に合わせているようだ。その中で、催されるのが、薪能(たきぎのう)。姫路城の三の丸広場、特設舞台で、8月3日午後6時30分ごろから演じられる(雨天の場合は、会場を変更して、姫路市市民会館)。

今年の能は、『杜若(かきつばた)』と『鞍馬天狗』。その内、『杜若』(*内容は参考参照)を今回、取り上げてみる。ちなみに、能の『杜若』は、ちょうど、最近、業平について、記してきたので、ちょうどいいタイミング(笑)。『杜若』については、学生時代、「東下り」という題で、古文で習った記憶がある。『伊勢物語』の九段にある話だ。能の『杜若』は、この話をベースにしている。

多くの方がご存じだろうが、念のために概略を記すと、失意の業平は、友人たちと、東国に安住の地を求めて出かけていくが、誰も地理に詳しくない。結局、迷って迷って、三河の国の八橋というところに行きつく。

その沢のほとりに、一服しようと、馬を下り、乾飯を食べていると、美しい杜若が咲いていた。そこで、業平に、杜若の五文字を各句の頭に置いて詠めと促すと、業平は次のように詠んだ。

  から衣

  きつつなれにし

  つましあれば

  はるばる来ぬる

  旅をしぞ思ふ

『古今集』四百十番にある有名な歌だ。「唐衣を着慣らすように、長年連れ添ってきた妻を都に残して、遠い国に、はるばるやってきた旅だが、深く身にしみることだ」という感じ。この妻が誰を指すかは、彼がかつて愛した、今は后の高子と考えられる。業平は高子に未練がいっぱいだね。これは男にありがちなことだが(笑)。

*参考

うまくまとめられた薪能のパンフレットのあらすじを元に記すと、次のような内容である。

一、都から東国へ向かう旅僧が三河の国までやってくると、杜若が今を盛りと咲いている。

二、花を眺めていると、杜若の精が里の女の姿で現れる。

三、旅僧が、「ここはどのような場所か」と尋ねると、里の女は、「ここは『伊勢物語』で有名な三河の国八橋で、業平が、東下りの途中で、和歌を読んで所だと言う。

四、更に、この八橋に心を留めた業平は、すでに昔の人になってしまったが、杜若の花だけは、業平の形見のように、変わることなく、今も見事に咲いているのだと、と言う。

五、やがて日が傾くと、女は自分の庵に案内し、泊まるように、旅僧に勧める。

六、旅僧が寛いでいると、女は、美しい冠と唐衣を身にまとった姿となる。

七、粗末な庵に住む女が、立派な衣服を持っているのを不審に思った旅僧に対して、実は、唐衣は、業平が愛した高子の后のもので、冠は業平の形見だと言う。

八、そして、自分は本当は杜若の精だと告白する。「業平は、極楽の歌舞の菩薩が仮に、この世に生まれ変わり、身を現わしたのであり、その業平が歌に詠んでくれたお陰で、草木までも成仏を得ることができた」と語る。

九、そして、伊勢物語に書かれた業平の多くの物語を語り、冠、唐衣の美しい姿でゆかしく舞う。

十、夜が白々と明け始めると、「草木国土悉皆成仏」という経文の通り、自分も成仏できるのだと喜びながら言い残して、杜若の精は消えていく。

*追記

業平からみの能としては、他に『雲林院』というものがあるが、こちらの方は、創作が強く、若干、『伊勢物語』を逸脱しているように感じられる。いずれ、関心が向けば、記してみたい。

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