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2013年3月 1日 (金)

喚子鳥(よぶこどり)とは何か

今年も、もう今日から3月。早いなあ。そして、昨日から大気の流れが変わったのか、多くの鳥があまりやって来なくなった。彼らは季節を感じ取るのが早いから、季節の変わり目かもしれない。そういうと、鳥は、人々に春を告げてきた。春告鳥は、鶯のことだけれど、それはまだ鳴きそうにない。この辺では、毎年、6月ぐらいになって、やっと山から下りてきて鳴き出す。

さて、『万葉集』や『古今和歌集』にも取り上げられ、吉田兼好も『徒然草』で記している春を呼ぶという喚子鳥(よぶこどり)とは、どんな鳥なのだろうか。色々調べると、はっきりしたことは分らないようで、ヒヨドリ、カッコウ、ウグイス、ホトトギス、ツツドリの可能性があるという。

そして、この鳥は、古今伝授の三鳥と言われるらしい。三鳥とは、稲負鳥(いなおほせどり)、百千鳥(ももちどり)、そして喚子鳥。ちなみに兼好は、喚子鳥について、『徒然草』第二百十段に記しているが、それを挙げると次のようになっている。

「喚子鳥は、春の物なり」とばかり言ひて、いかなる鳥とも定かに記せる物無し。ある真言書の中に、喚子鳥鳴く時、招魂の法をば行ふ次第、有り。これは鵺(ぬえ)なり。『万葉集』の長歌に、「霞立つ 永き春日の」など、続けたり。鵺鳥も、喚子鳥の事様に通ひて聞こゆ。

彼によると、喚子鳥は春の鳥と伝えられているが何かは不明としている。そして鵺の可能性に言及している。では、鵺鳥とは何か。一般に鵺は、想像上の怪鳥とされるが、実際は、トラツグミのことらしい。トラツグミは、図鑑を見ると、ムクドリより大きく、腹の部分が虎斑模様になっているから、ついた名前。かつて見たような記憶はあるが、はっきりとは言えない。

この鳥は、「ヒィー、ヒィー」とか、「ヒュー、ヒュー」と鳴くらしい。これも記憶がある。多分、この鳥には接しているのだろう。この鳴き声が夜鳴くと不気味なので、鵺と名付けられたようだ。鳥にすれば迷惑なこと。果たして、喚子鳥はトラヅグミなのだろうか。もうすぐ、トラツグミに出会えるのだろうか。

*注

「霞立つ 永き春日の」は『万葉集』巻第一の五番にある長歌。「讃岐の国の安益の郡に幸す時に、軍王が山を見て作る歌」とある。

長歌

  霞立つ 長き春日の 暮れにける

  わずきも知らず むらきもの 

  心を痛み ぬえこ鳥 うら泣き居れば

  玉たすき 懸けのよろしく 遠つ神

  我が大君の 行幸の 山越す風の

  ひとり居る 我が衣手に 朝夕に

  返らひぬれば ますらをと 

  思へる我れも 草枕 旅にしあれば

  思ひ遣る たづきを知らに

  網の浦の 海人娘子らが

  焼く塩の 思ひぞ焼くる 我が下心

反歌

  山越しの 風を時じみ 寝る夜おちず

   家にある妹を 懸けて偲ひつ

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