巫女の神楽舞~『梁塵秘抄』
神社で、お祓いをお願いすると、巫女が舞ってくれる。神楽舞というものだ。巫女が神楽鈴を持って、音を鳴らしながら舞う。表現としては適切ではないかもしれないが、厳かではあるが、なかなか艶やかなものだ。
ただ、このことをからかったものが『梁塵秘抄』にある。『梁塵秘抄』と言えば、性格が相当癖があったと噂される後白河法皇が編纂したものだ。当時、今様と言われた庶民の歌謡を集大成したもの。でも、なぜ彼が庶民の歌謡に興味を示したのかは、よく分からない。
昨年の大河ドラマ『清盛』では、一つの見方が示されたが、要するに複雑な環境で育ったということだろう。歪められた精神構造の中で、唯一、落ち着かせる手段を今様の中に求めたのかもしれない。
それはともかく、彼が、『梁塵秘抄』の中で、巫女を少し、からかっているものを取り上げている。それが次のもの。
鈴はさや振る 藤太巫女
目より上にぞ鈴は振る
ゆらゆらと振り上げて
目より下にて鈴振れば
懈怠なりとて 忌々し
神腹立ち給う
藤太巫女のことは、よく分からないが、当座のアルバイト巫女のようなものを指すものかもしれない。鈴は目より上に持ち上げて振るものなのに、この巫女はだらしなく、目の下で振っているから、やりたくなそうに見えて、そんなことをしていたら、神さんの怒りを買うよと、周りが言っている感じ。多分、巫女が子供で、意味もなく、舞わされているのだろう。
念の為に記すと、最近の巫女さんは、そういうのを見かけたことはない。皆さん、凛とした感じで、厳かに舞われています。
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