『少年H』を読む
『少年H』の映画が公開されたらしい。そういうことで、妹尾河童著『少年H』を今、読んでいる。この作品が1999年に新刊として発表された時も話題になったが、基本的に流行本は追いかけないので、その時は購入しなかった。
今回、映画が話題になっているので、少し関心を持ち、本を購入してみた。妹尾氏の作品は数冊持っているが、それは舞台をはじめとして、いろんな観察を彼のイラスト付きのものが多い。今回は文字だけだが、結構、面白い。Hは彼の名前から取ったもののようだ。
話の中身は、戦前、戦中のことを子どもの目から見た日本の姿を描いている。妹尾氏は、昭和5年生まれだから、私の両親が話していたことと話題は重なる。それに彼は神戸出身だから、非常に身近な話題が多い。
ただ、妹尾氏の父親の国の状況判断の正確さには驚かされる。それは洋服店としてお得意様に外国人が多かったからだろう。それがゆえに妻が熱心なクリスチャンであることもあり、戦中には苦労される。それにしても、彼は、子ども時代のことを、よく記憶されているものだ。
私の両親は、確かに、戦前・戦中のことを話してくれたが、父は、戦争の話を避けるようにして、触れないようにしていた。理由は、戦前教育から戦後の民主主義教育への急激な変化に戸惑っていたのかもしれない。その差は、国を戦前から各種情報から客観的に見ていた妹尾氏との情報格差が生みだしものかもしれない(*注1)。
学校の先輩が、元軍人として満州から引き揚げされ、家に来られた時も、母や私は、彼らの話から一切遮断された。そして、後から、どういう話題だったかも伝えられなかった。非常に警戒的だった。戦前の悪い記憶が重しになっていたのだろう。
ただ、後年、亡くなる前、「中国や朝鮮は、日本のお陰で独立できたのに、最近の向こうの指導者は感謝の気持ちを示すどころか、恨み事ばかり言う。その点、毛沢東や蒋介石は、よく分かっていた。指導者のレベルが落ちると怖い」と言っていた(*注2)。
さて、そのことはさて置き、『少年H』は、至る所で、くすっと笑わせてくれる。今、ちょうど上巻を読み終えたところ。もしかしたら、映画も観に行くかもしれない。
*注1
但し、戦前まだ結婚していなかった母は、両親は商売をしていることから、親戚や多方面に交流があり、母は、国の状況を正確に把握していたらしい。若干、妹尾氏と状況判断は似ている。もっとも、多くの人は戦争に勝てるとは誰も思っていなかった。
*注2
更に記すと、両親は、戦前、日本が中国に進出したけれど、侵略はしていないという主張だった。戦争だから、立場が違えば、受け取り方は違う。それを最近の政治家は、ごちゃごちゃにして捉えていると怒っていた。ただ、私は、やり方が性急で、相手国に十分理解されないまま、やり過ぎたのではと思っている。だが、父の考え方は、そういう考えができる現在と、あの時とは状況が異なると指摘し、意見は平行線を辿った。
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