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2013年9月 1日 (日)

『少年H』を読了

昨日、妹尾河童著『少年H』下巻を読み終え、通巻読了した。戦前、戦時中、そして戦後のことを少し記してあるが、時代の雰囲気をよく表していると思う。もちろん、戦前の状況は、もっと、どんよりとした息苦しい時代であったと想像できるが、それを、あまり見せないようにしておられる。辛いことも多かったと思うのだが、努めて、明るく振る舞っている。

印象としては、妹尾河童氏は、ある種の天才だと思う。もちろん、多かれ少なかれ成功者によくあることだが、自慢話的に記しているから、そう捉えられるのかもしれない。だが、そのことを割り引いても、彼は優れた人であることに変わりない。一連の彼の著作と合わせて見る限り、現象や人の観察力が鋭い。一瞬で、相手の特徴を捉えてしまう。

これはおそらく、彼の父親の影響が大きいのだろう。もちろん、現代の若いイラストレーターの方々も、もちろん、観察力に優れた人は多い。ただ彼の場合、相手の外観の把握だけに満足せず、会話を通じて、瞬間的に内面までも、踏み込んでいく。そしてそれを素早い行動につなげていくことが、彼を特徴づけている。割と相手に先入観を持たず飛びこんでいる。そういう行動様式が、更に能力を発揮させている。

しかしながら、戦後は、その感性の強さから来る反抗期からか、ノイローゼになり、自殺も考えられた時期もあったようである。自殺を実行したものの、生き残ったため、これは「生きろ」という天命を感じて、新しい人生を始められている。それが画家の小磯良平氏に、サブビジネスとして看板業をやっている画家を紹介され、彼の、その後の人生を決定づけていく。

彼の戦争体験を描いた、この書籍は、原爆マンガ『はだしのゲン』ほどメッセージ性は強烈ではないが、当時の時代の雰囲気を通じて、どのように自分の人生形成をして行ったかを、うまく描いておられると感じた。

*追記

この本が子どもたちにも、読みやすいかもしれない。この本には、全てルビがふってあるので、小学生低学年でも読めるかもしれない。ただ、時代の深刻さは、この本だけでは、実感として伝わりにくいかもしれないが、それなりに読ませる価値はあるだろう。

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