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2014年5月13日 (火)

聖人の出生の秘密

出生の秘密なんてものは無いにこしたことはないが、最近はDNA鑑定で、出生の秘密が暴露されたりして、母親の過去の行状が明らかになっている例もある。子供にとっては、親は選べないが、ある日、突然の血のつながりある親の暴露は、育ての親との関係を微妙にする。子供たちの精神構造に微妙に影響していくことは確かだろう。

さて、それは聖人でも同じ様で、いろんな出生の秘密が暴露されている。明らかにするのがいいのか、悪いのか分らないが、秘密にされてきたが、内々噂にはなっていたことだろう。それでも、昔は、非科学的説明でも受け入れられたが、現在では、理解されがたいということだろう。

例えば、孔子は、正式な婚約に基づく子供ではなかった。つまり野合による出生としている。孔子は、このことをオープンにしているが、一生、これを恥じたという。そこから、彼のような考え方が生まれたと見ることもできる。

キリストは、マリアが姦通によって孕んだ私生児ということだが、教えでは、神霊と交わり生まれたとする。神格化するため、事実を隠そうとしたことが窺える。結果的に、父(てて)なし子の方を選択している。賤しい本当の父親の存在を抹殺して、キリスト教の価値を高めようとしたのだろう。

そして、仏教界の日本の高名な僧たちも、凡そ、そのようであったという。仏門に入った理由は様々だろうが、多くは、処置に困った子供の可能性が高い。すなわち捨て子が、止むなく仏道を選択したということだ。そして仏教は基本的に、禁欲主義だったから、高僧を聖人化する過程で、彼らの出生の秘密はベールに覆われる。代表的な例では次のようになっている。

◎伝教大師

   彼の母は、光明の神体が現れて教えを授くと夢見て孕んだ。

◎弘法大師

   彼の母は、天竺の聖僧が飛び来たって懐中に入ると夢見て孕んだ。

◎慈恵大師

   彼の母は、日の光が懐中に入ると夢見て大師を孕んだ。

◎恵心僧都

   彼の母は、聖僧が来て美しいタマヲ授くと夢見て孕んだ。

◎西行法師

   彼の母は、普賢菩薩から金剛経を授かると夢見て孕んだ。

◎円光大師

   彼の母は、剃刀を呑込んだと夢見て孕んだ。

◎解脱上人

   彼の母は、高貴なる僧が来て、懐中に入ると夢見て孕んだ。

◎泰澄禅師

   彼の母は、美麗な白玉が懐中に入ると夢見て孕んだ。

◎親鸞上人

   彼の母は、金光が三度、身体を巡って口に入ると夢見て孕んだ。

◎聖一国師

   彼の母は、明星の光を採ると夢見て孕んだ。

◎日蓮上人

   彼の母は、日輪が八葉の金蓮華に乗って懐中に飛びいるを夢見て孕んだ。

◎慈眼大師

   彼の母は、珍しい花を呑込むと夢見て孕んだ。

どれも非科学的で、笑いたくなるような表現。要するに、出世すると、過去は何かで覆い隠し、好いように見せたいということだろう。孔子のようにオープンにするのは、稀なようである。よくよく考えると、別に偉人になれなくとも、両親の下で、幸せに暮らす方が、子供にとって、いいことのなのだろう。

でも、片親だからと言って卑下する必要はない。心掛け次第で大出世する可能性もあるのだから。ただ、出世しても、妙に出生の秘密を隠さないで欲しい。妙な聖人化は、一種の詐欺行為に近いし、信頼性に欠ける。「みんな、悩んで大きくなった」でいいのだ。

*参考文献

宮武外骨 『面白半分』(河出書房新社)

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