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2014年5月 9日 (金)

他人の不幸と落語『胡椒の悔み』

お悔みの口上は、大体、「この度はご愁傷さまで、、、、」と語尾が曖昧に聞こえる程度になることが多い。あまり滑舌がよくても、この場合、変な感じになる。それに喪主には、ほとんど耳に入っていないだろう。よって長い口上は迷惑この上ない。

さて、落語に『胡椒の悔み』というものがある。あまり演じられてはいないようだ。内容は、いつも、げらげら笑ってだらしない男がいた。その男が家主のところに不幸があって、お悔みに行かなければならなくなった。どうやら親戚の若い娘が亡くなったらしい。

お悔みは人の死を弔うことだが、人間社会では大切なこと。目出度い結婚式には不義理しても、葬式には必ず参列せよとは、現役時代の教え。人間関係は、こういうことが重視される。尤も、それに付け込む輩もいるにはいるが。

さて、この男、思ったことをすぐ口に出す大バカ者。今回は、「なんで、そんなに若くて死んだりするんだ。よぼよぼの80歳、90歳になって死ぬのなら、まだしも、そんな若くて死ぬなんて親不孝者」とか言っている。おやおや、大丈夫かな。それに、この男が、お悔みに行くには、まず普段、笑い癖がついているので、お悔みに行くには、それを止める必要がある。

女房に相談すると、お悔みの作法を教えながら、胡椒を用意して、「家主の門のところで、胡椒を飲んで入りなさい」と教えられる。何とか、口上を覚えて、家主のところに行くと、既に一足先に、近所の婆さんがやって来ていて、しみじみとお悔みを長々と述べている。やっと婆さんが帰って行ったので、それではと、口いっぱいに胡椒を、ほうばって家の中に入った。

ところが、口の中がひりひりして、何も言うことができない。ようやく口上を述べるも、途切れ途切れで、ポロポロと涙を流しながら、ついに発した言葉が、「どうか助けると思って、水を一杯下さい」。茶碗に水をもらって、飲み干すと、「(口上も何とか言えて)ああ、これは、いい気持ちだ」

こういうタイプは、実際に居るし、誤解を招きやすい。悪気はなくても、一時的に他人を不愉快にする。性分というものは、なかなか直せないが、元々性根は悪くないので、周辺が、やかましく注意してやることが大切だ。

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