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2014年7月17日 (木)

二つの「横笛」のこと その三

『平家物語』では、大変短く表現されているのだが、『御伽草子』では、若干脚色されて、少し長い話になっている。それでは、今回から、『御伽草子』では、横笛のことは、どのように描かれているだろうか、見てみようと思う。

時頼が重盛の命で、建礼門院の御所に行くのは同じだが、『御伽草子』では、重盛の手紙を横笛に渡して、「早くお返事が頂きたい」と伝えるのだが、同時に、恋慕の次の歌を彼女に授けたとある。

 秋の田の 刈りそめ武士の 身なりとも

   君が枕を 見る由(よし)もがな

これは手回しのいいこと。随分と前から、横笛に目を付けていたことになる。歌の内容は「取るに足りない武士だけれど、あなたと共寝がしてみたい」と直截的に告白している。これには、おぼこい横笛は、顔を赤くして引き下がり、建礼門院から重盛への回答は、他の者に委託している。よほど恥ずかしかったのだろう。

一方、時頼は帰ってからも、心ここにあらずの態。所謂、恋煩い。周囲は心配し、色々問いかけるが答えもしない。そこで乳母に尋ねさせると、さすがに気を許して、本当のことを語り始める。乳母は、建礼門院様の所へは出入りしており、お任せなさいと、和歌を詠んだ手紙を認めさせる。この辺の話は、少し時代を変えて落語でも、取り上げられる。

乳母は早速、横笛に会い、本題を切り出す前に、色々日本の古典をお読みでしょうから、次の手紙を解説してくださいと投げかける。なお、手紙の文章の中には、『源氏物語』、『狭衣物語』、『古今集』、『万葉集』、『伊勢物語』などの逸話を散りばめているらしいのだが、本文からは欠落している。

まあ、それほどに自らの知識を総動員して、ラブレターを書いた時頼が想像できる。その手紙に書かれていたのが、次の和歌二首。

 人はいさ 思ひも寄らじ わが恋の

   下に焦がれて 燃ゆる心を

 君ゆゑに 流す涙の 露ほども

   われを思はば うれしからまし

この手紙に対して、横笛は、得意そうに解説する。手紙の意味を解読しながら、和歌の解釈もする。一応、和歌を解釈すれば、最初の和歌は「あの人は、思いもよらないことだろう。私は恋心ゆえ、燃え上がって恋い焦がれていることを」てな感じかな。二首目は、「あの女性のために流す涙の一滴でも、彼女が流してくれたら、これほど嬉しいことはない」という同情を呼びたい女々しい感じ。

次回に続く。

 

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