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2014年12月27日 (土)

STAP問題の教訓

理化学研究所の調査委員会が、「STAP細胞の正体は既存の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)が混入したものである可能性が非常に高い」とする結論をまとめた。これで、一応、STAP問題の幕引きをするようだが、果たして女性研究員の研究不正なのだろうか。ただ言えることは、研究に精緻さが欠けたことだろう。

凡そ、未知の研究には、不確かさが伴う。特に生物学の分野では、より一層それが指摘できる。相手は、ある意味、「動く標的」だ。つまり変化を続ける細胞相手が対象なのだから、掴みどころがない。今後の課題は、そういうところだろう。

彼女は、その仮説の素晴らしさが認められて、研究ユニットリーダーに抜擢されたわけだが、理研は、本当に彼女を支える方策を採っていたのだろうか。若干の疑問が残る。若い人を抜擢したなら、抜擢した人も、大きな責任を負う。それが組織として、足りなかったのではないか。別の視点で見れば、大学と違って自由闊達な組織が裏目に出たとも言えるが、それは組織の無責任に通ずる。

また、それを女性研究者の偉業として、大々的に報道されたことも不幸であった。女性研究者の抜擢の不幸と言えるかもしれない。それに研究者の身分保証がないことが成果という焦りを生んだのかもしれない。更に、理研自体の国からの予算獲得への焦りもあったと伝えられる。いろんなことが重なって、拙速な研究発表をして恥をかいた。これは彼女だけでなく、この研究所もそうだろうし、日本全体もだ。

この失敗が教えてくれることは、研究のような地道な仕事は、成果が出るのに数十年かかるということだろう。ウサギとカメの童話ではないが、研究者はウサギを真似するより、カメの意識が必要だろう。そのためには、国や企業や一般国民が、一定程度の「捨て金」を認め、基礎研究への理解が必要だろう。

*平成27年7月7日追記

少し前の記事で、理化学研究所松本紘新理事長へ毎日新聞が「研究不正防止改革」と題してインタビューしたものがあるので、一部記しておく。

◎「研究に携わる者は、科学者である前に人間でなければなりません。人間であれば、ある程度の共通の倫理観は必要です」

◎「ただし、どんな研究手法を正しいと考えるかには個人差や分野による違い、どちらが正しいか判断に迷うグレーゾーンもあります」

◎「理研改革の行動計画は、人間として当たり前にすべきことを研究に当てはめたらどうなるかという視点で策定され、その考え方を継承する」

◎「研究成果を発表する際、①共著者全員が論文の最終版を確認したか、②実験データは保存されているか、③他の論文からの引用が適切か、などのチェックシートで確認し、著名するルールを決めた」

◎「自分が常に100%正しいとは誰も言えない。無意識のうちに踏み外すことがないように改革を進めるのは、組織として当然です。またチェックを徹底することによって、本人が気づかないミスを発表前に見つけられるかもしれない」

◎「一方、改革を一気に進めると、皆は委縮してしまう。改革とは改善の積み重ねだと思っている」

◎「若手研究者が長期的なビジョンを持って長く勤められるポストや、何度失敗しても新しいことに挑戦する人を受け入れられるシステムを導入しなければならない」

◎「挑戦的な研究を実現するには、本人の気持ちが8割、周りの支援が2割。研究者は単なる知的労働者ではない。人間の将来がどうあってほしいか、というビジョンを持つべきだ。理想的な社会を描き、足りないものを実現するための研究をする。そうでなければ、ブレークスルーは起きない。本当に創造的なことをやるためには、素人でなければならない」

◎「現代科学は、全体として、立派な学問の木になっていますが、分野がどんどん細分化され、個々の研究者は枝の先の梢に止まっている。学問全体を広く見渡せるのは研究の素人である市民だと思う。研究者も素人の意識を持つべきだ」

なかなか、よく考えられていると思う。ただ、改革と改善は、根本的に違うと思うのだが、その点だけが引っ掛かる。改善をいくら積み重ねても、改革にはつながらない。以上の発言から見ると、真の改革は出来ない感じだ。やはり別途、新組織の発想も求められると思う。

*平成28年3月20日追記

報道によると、小保方晴子氏が発見した「STAP現象」が、アメリカの研究者グループにより2015年11月27日に、「ネイチャー・サイエンティフック・リポーツ」に報告されているとのこと。これは、作成と実験方法は異なるものの、小保方氏の「STAP細胞論文」の実験結果と似ているらしい。

となると、小保方論文を取り下げさせた罪は大きいということになる。論文構成上のミスを過大に取り上げ、大きな成果を潰したことにならないだろうか。

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