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2015年4月30日 (木)

『オセロウ』再読

シェイクスピアの4大悲劇の一つ、『オセロウ』(*注1)を先日、再読した。テーマは男の嫉妬であろう。男の男に対する嫉妬、男の女に対する嫉妬が絡まって、物語は展開する。一般に嫉妬は女性の専売特許と見られがちだが、男の嫉妬は、陰湿で、すさまじいものがある(*注2)。

オセロウは、ヴェニス共和国に、あてにされる強い軍人ではあるが、ムーア族という黒人貴族という引け目を持つ。つまり、オセロウの自信とその裏にある劣等感がないまぜになっている。更にヴェニスの元老院議員の娘デズデモウナを妻に持ったことが、不安にさせる。彼女は、知性も美しさを持ち合わせた羨望の的であったからだ。

彼女の父親の反対はあったものの、彼女を獲得できたことで、一時的には優越感に浸れるが、周囲の羨望が気になる。そこに登場するのが、誠実のお面を被った、よこしまな男、旗手イアーゴーだ。

彼は、プライドが高く自尊心が強く嫉妬深い。自分の能力に対する自惚れもある。キャシオウが副官だが、あんな現場知らずの官僚より、本来は自分がなるべきだと思っている。それゆえ、自分の地位に対して強く不満も持っている。

オセロウに対しては、いろんな意味での嫉妬(権力、名誉、支配、異性獲得等)と人種偏見を感じている。そこで、彼は、迷いやすい人間の心を悪用して、オセロウの心の隙に迷いを吹き込もうと試みる。

デズデモウナが、オセロウの副官キャシオウと不倫していると偽の状況証拠を作り上げ、嘘をつく。疑いの種をばら撒かれて、妻に対して疑心暗鬼になるオセロ。それほどに男女の愛は脆いのか。

では、シェイクスピアは、嫉妬について、どのように考えていたのだろうか。物語の中に、オセロウの妻デズデモウナが夫の嫉妬に苦しむのをに見て、イアーゴウの妻エミーリアの言葉として、次のものがある。

「嫉妬する人は、わけがあるから疑うんじゃないんです。疑い深いから疑うんです。嫉妬は自分で生まれて、自分で育つ怪物でございますよ」

オセロウが妻デズデモウナに嫉妬するのは、旗手のイアーゴウの罠に嵌った結果だが、原因は、それだけではない。オセロウ自体に嫉妬に嵌りやすい資質を持っていたことは、見逃せない。

『オセロウ』は、この世の中の男をシンプルに表現しており、今でも通用する物語であるが故に、多くの人々に支持され続けているのだろう。

*注1

読んだのは、シェイクスピア『オセロウ』菅 泰男訳(岩波文庫刊)。この本では、『オセロウ』となっているが、一般には、「オセロ」表記が多い。

*注2

ただ、男は、嫉妬をエネルギーにして頑張るという面もある。だから、そのエネルギーを外に使えば、成功する。しかし、内に籠ると、イアーゴーのようになり、惨めな結果を招く。

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