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2015年10月17日 (土)

秦郁彦著 『南京事件』を再読

中国がユネスコに、南京事件を巡る資料の「記憶資産」への登録を申請し、登録決定の報道があった。日本政府は、犠牲者数について日中間の見解に大きな相違があり、認められないとして、ユネスコに強く抗議している。

今回の、ユネスコを巡る日中間の認識の違いについて、過去に読んだ書籍、秦郁彦著『南京事件~「虐殺」の構造』(中公新書刊)を再読した。南京事件について記した書籍は多いが、この本が、比較的客観的に記されていて、一般人にもよくわかる納得のものだろう。南京事件について、あまり知らない若い人たちも一読して欲しい。

大体、中国が言っている「南京大虐殺30万人」というのは、当時、日本軍が戦っていた国民党が、欧米諸国に対して、でっち上げた宣伝工作であったことは確かな事実だ。それを現在の中国共産党政権が、何の再調査もなく、この数字を使っていることは一般国民から見ても違和感がある。

当時の中国共産党は、日本軍と戦っていなかったし、日本軍は国民党と戦っていた。日本軍は、中国共産党と組んだこともあるぐらいだ。ところが、南京事件のきっかけとなったのは中国共産党が強く関与している。すなわち、毛沢東が日本軍に対して、ゲリラ闘争を指示したからだ。これに対して、日本軍は、疑心暗鬼になった。

更に不幸なことに、当時の南京駐留の日本軍は、トップが病気のため不在で、ゲリラ闘争に対して、統制が、かなり乱れたと指摘されている。満州から中国本土(漢民族からすると満州は異界の地だから、中国本土ではない)への進出は明らかに侵略だが、各地では、日本軍は粛々と進軍し、治安が乱れていた各地では、むしろ歓迎されたぐらいだ。それほど、日本軍は、統率され、警察能力が高かった。

だが、南京では、不幸にも、統制が乱れた。ここで、日本軍は、ゲリラと非戦闘員の一般人の区別ができなくなり、多くの犠牲者が出たことは確かだろう。だが、その実数は、多くの研究者が調べた結果、非戦闘員の民間人の死者は、最大12000人(最小3000人)程度だと言われている。もちろん、戦闘員は、この数字には含まれていない。彼らを含める(南京周辺の死者も含める)と、最大40000人程度になるかもしれない。

日中間で、被害者の数の見方は違っても、南京事件は、日本軍の中国侵略の中でも、最も恥ずべき事件で、日本軍が暴走し、多くの中国民の被害者が出たことを日本国民は忘れてはならないだろう。

*追記

日本軍が南京事件で起こした残虐な行いは、東南アジアでも、理由は違うが同様のことをしている。また、満州での行いも、誉められたものではない。それは、以前にも取り上げた五味川純平著 『人間の條件』に見るように、現在の価値観では測れないが、戦争のためとはいえ、多くの人々を苦しめている。一体、あの戦争が、何だったのか、冷静に総括する時期に来ていると思う。歴史的事実を否定しても、何も生まれないのは明らかだ。

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