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2015年12月30日 (水)

人情話~落語 『芝浜』から学ぶ

今回は、大晦日も近いので、本年最後の記事として、人情話の落語 『芝浜』を取り上げてみる。度々、高座で演じられる、この話は、三遊亭圓朝が、三つのお題、「酔っ払い、芝浜、革財布」に対して、即席で作り上げたと言われるのだが、彼の全集には残っていない。よって真相は不明。

魚屋の金さんは、これといった道楽はない。ただ、酒を飲むと、だらしなくなり、仕事にも出掛けない欠点があった。よって、暮らし向きは、大変厳しい。借金も増えるばかりだ。女房は、耐えきれなくなって、度々泣きながら意見をするのだが、金さんは、聞く耳を持たない。

ついには、夜逃げしなくてはならないような事態に追い込まれる。ここで、やっと金さんも目が覚め、金毘羅様へ酒を断って、働こうという気になり、女房も喜ぶ。翌朝、早く起きて、買い出しに出かけるが、女房が時間を間違ったらしく、まだ夜が明けきらない状態。

そこで、浜辺に下りて行って、顔を洗っていると、足元に金財布が落ちていた。それを、早速、懐にねじ込んで、帰って中身を見ると、びっくり。二分金で五十両入っていた。これには、金さんも大喜びで、近所の友達を集めて、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎを敢行。

みんなが帰ってしまうと、酒に酔って、金さんも、そのまま寝てしまう。そして、目が覚めたのが日暮れ時。女房に、起こされて、「お前さん、あんなにどんちゃん騒ぎして、一体、酒屋への支払いは、どうすんの」と言われる。

「どうすんのと言うが、あれがあるだろう。芝浜で拾った、あの五十両が」。「へえ、そんな、お金、どこにあるんですかい」。「お前に、預けたじゃないか」。「いいえ、私は預かっていませんよ。お前さん、夢でも見たのでは」。

金を拾ったのが夢で、酒を飲んだのが現実なら、その差は大きい。酒の酔いも吹っ飛び、「何、それは大変だ」と大騒ぎ。ところが、これがきっかけになり、金さんは、ぷっつりと酒を止める。人間、何が、きっかけになるかわからない。その後は無我夢中で魚屋の商いに精を出し、その結果、得意先も増え、生活も、少しずつ安定する。

そうこうするうちに、あれから三年目の大晦日。新年を迎えるため、畳も新調し、夫婦仲よろしく、茶飲み話を始める。そして、三年前の夢の話も出てくる。ここで、女房が本当のことを話す。「お前さん、三年前、芝浜でお金を拾ったのは、夢ではなく、本当だったんです」。

続けて「しかし、それを猫ばばすれば罪になるし、それに、あの金があれば、なおのこと、お前さんは働かなくなる。そこで、大家さんと相談して、お上に届け出た。ところが一年たっても、落とし主が現れないので、お金は下げ渡しになりました」

「今まで、お前さんを騙して申し訳ありませんが、そういうわけがあったので許して」と手をついて詫びる。これには金さんも、びっくりして、女房の心がけに感謝して喜ぶ。そこで、女房は、「今日は、おめでたいから、お前さん、一口やっておくれ」と言うと、金さん「それじゃ、一杯。いやいや止めておこう。酒を飲んで、それがまた夢になっては困る」とオチ。

現代で言えば、拾得物に対する姿勢の話と言えようか。苦しい時は、目の前のものに目が眩むが、それを思いとどまり、正しい手続きをし、拾得物を下げ渡されても、それを夫に告げず、夫の立ち直りを確認してから知らせた賢妻ということだろうか。

貧しいと、見たこともないような、お金を持ったりすると、日頃、持ちなれないものだから、あっという間になくなってしまう。これは、今にも通ずる話だろう。若くして、ボーナスのようなものを分不相応に、もらっても、直ぐに使わずに、一年くらい寝かせてから、使い方を考えた方がいいのかもしれない。滅多にないだろうが、宝くじのようなものに当たってもそうだろう。

でも、この落語は、基本的に、きちんと働いて稼ぐことが大切と説いていると思う。お金を得る厳しさを知り、きちんと管理すれば、お金に、お金がついてくる。それには、正しい生き方・姿勢が求められるということだろう。そうすれば、突然のラッキーな出来事にも、冷静に対処できるということかもしれない。

*追記

この落語は、三代目桂三木助が得意としたという。芸術祭奨励賞も獲得している。このため、他の落語家も、彼があまりにも上手なので、演ずるのを遠慮したという話もある。

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