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2016年1月12日 (火)

大岡昇平著 『証言その時々』を読了

以前、大岡昇平の本として、『俘虜記』を取り上げたが、今回は、 『証言その時々』(講談社学術文庫刊)を読了した。この本は、彼の戦争観のすべてが記されている。当然、『俘虜記』の一部も載せてある。1937年から彼が亡くなる前年の1987年まで、戦争に翻弄された一般国民の視線で、後世の人たちへの遺書にも聞こえてくるものだ。

明治維新頃から、日本は列強の植民地政策に怯え、対抗処置を講ずるべく、各種手を打った。それは行き過ぎた過剰防衛のこともあったし、結果的に侵略に及ぶこともあった。基本的には、資源のない国なので、戦略的行動が求められたが、日清戦争、日露戦争は、どうにか切りぬけられたが、国も国民も疲弊した。

もうこれ以上、戦争はできない状態であったにもかかわらず、軍は暴走して、戦略も戦術もなく、多くの国民を死地に追いやった。彼が言うには、この体質は、戦後も改まっていないと指摘する。

例えば、何も考えず、米国の言うことに従っているが、危険なことだ。彼は次のように言う。「アメリカの政策というものは、自分の国に利益を生むものならば、何をやってもいいという極端なエゴイズムに支えられている」と。

この傾向は現在も変わっていないだろう。スローガンとして、民主主義の拡大とか一神教であるキリスト教世界観による世界統一と言うが、所詮、ビジネス拡大のための手段に過ぎないことは明らか。そのために、世界を混乱させている。

これとは別に、次のようなことも指摘している。ヒットラーを生んだのは誰かと。

「(戦犯裁判でドイツの弁護人は言っている)ドイツ人が有罪なら、ヒトラーの意図を知りながら、再軍備と資金と資材を提供したアメリカは有罪ではないかと叫ぶ。1939年ドイツと不可侵条約を結んでヒトラーの仕事をし易くしてやったソ連は如何。チャーチルは1938年に“現代にはヒトラーのような鉄の意志の持ち主が必要だ”と言ったではないか」と。

現在も、多くの大国は、同盟国や途上国の為政者に罠を仕掛けている(*注)。そして、対象国内が混乱すれば、それに乗じてビジネスを展開する。このように国には、罠が多く用意されている。国際情勢を、一面的に報道するマスコミにも警戒が必要だ。国政、外交は、深い思慮と慎重な運営が求められる。

国民も、気をつけなければならない。国の方針が全て正しいとは言えない。彼は忠告する。「『管理』ということばは、『独裁』のいい換えにほかならない」と。国民が、何も考えず流されていると、それは、多数決独裁につながり、性急な結論を出す戦前の慣習「問答無用」の強行採決につながっていると。

総体的に、彼は日本の政治の将来に悲観的だが、現代の政治家の方々は、彼の批判を謙虚に受け止めるべきだろう。それは一般人も同様だ。若い人たちにも、十分参考になるだろう。

*注

同盟国だから、罠を仕掛けないというのは甘い。同盟国だからこそ、仕掛けやすい。そして、日本の自民党のように、米国資金で作られた政党は、真意を知らず米国の意のままになりやすい。それは過去の首相経験者に聞けば分かるだろう。

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