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2016年5月19日 (木)

サイボーグ美人~『長谷雄草子』より

最近は、日本の女性も美しくなった。以前に記したように、栄養が行き届き、言葉遣いや品性の方はともかく、見てくれはよくなったことは確か。更に、整形手術はともかく、化ける技術も向上した。

古典でも、造られた美人の物語がある。女性の、いいとこ取りをした、言わばサイボーグ美人だ。まあ、男の妄想の物語とも言えるのだが、それが、『長谷雄草子』という物語にある。長谷雄とは、紀長谷雄(849~912)のこと。れっきとした歴史上の人物で、学問・技芸に優れていたという。物語の方は、ご存知の方も多いと思うが、備忘録的に記しておく。

中納言の長谷雄が内裏に向かおうとした時に、ひんぴん卑しからぬ見知らぬ賢そうな男がやって来て言うには、「暇つぶしに、双六をしようと思ったが、適当な人物が見当たらない。そこで、あなた様しかいないと思い、訪ねて参りました」と。

少し怪しいと思いつつ、長谷雄は、その高い自尊心に動かされ、挑戦に応対し、朱雀門の上で対戦することになる。難しいと思われた朱雀門の上にも簡単に上り切り、そこで、男が持ち出した条件が、長谷雄が負ければ全財産差し出し、勝てば絶世の美人を提供しようというものであった。

危ない条件とは思うのだが、自信家であった長谷雄は、無謀にも、その条件を呑み対戦。ところが、長谷雄は連戦連勝。ついに男は鬼の本性を出すが、結局、男は敗戦。後日、約束通りの女を差し出すという。

長谷雄は、多少怪しみながらも、今か今かと女を受け入れる準備をしていたところ、その男が約束通り表れ、女も同道していた。そして、その容姿を見ると、この世のものとも思えない美しさ。長谷雄も一瞬、ぼうっとしてしまうほど。

長谷雄が言うには、「本当に、この女を差し出すのか。返さなくてもいいのか」と。それに対して、男は、「約束通り差し出します。但し、条件があります。それは100日を過ぎないと関係を結んではなりませんということ。それを守らねば、後悔されますぞ」と言う。

男が帰り、女をつくづく見てみると、見目麗しく、性格もよく、気立てがいい。男との約束を守ろうとしたが、80日を過ぎるころに、もう辛抱ができなくなって、女と関係を結んでしまう。そうすると、どういうことか、女は水になって、流れてしまった。

後悔した長谷雄が、それから数か月して、内裏から出て、帰る途中、例の男が鬼の形相で「約束を守れる男と思っていたのに」とやって来て、長谷雄はぶるぶる震えながら、「北野天神、助けたまえ」と祈念すると、「まったく、しょうもない奴だ。とっとと失せろ」と言って、消えていった。

実は、この男は、朱雀門に住む鬼であった。美女は、いろんな死体から、いいところだけ取り上げ、集め、それを人の形に造ったものであった。100日過ぎれば、人間になり、魂も落ち着く予定であったが、想定外のことが起こり実現はしなかった。

ちなみに、この話の終わりは、「いかばかりか悔しかりけむ」となっている。それは長谷雄が約束を守れず、折角の女を得られなかったことだろうか。それとも鬼がサイボーグ実験を成功できなかったことだろうか。作者は、明確にはしていない。

紀長谷雄は、今でいえば、優秀な官僚か学者。この物語は、どんな優秀な人も、プライドをくすぐられると弱いということを示し、危険な賭けをしてしまう。そして、どんな男も美人には弱いと、作者が冷やかしているように思う。

*参考

 出典 『御伽草子』より。

*追記

鬼が、女性のいいとこ取りをして人間を造ったとしているが、八方美人じゃないけれど、中途半端なものができたのではと思う。確かに、将来は、男の妄想そのままに美人ロボットとか、遺伝子組み換え技術を駆使しして、サイボーグ型美人が出ないとも言えない。

でも、いつまでも完全なものはできないだろうし、それは期待しない。まして、男に合わせて、性格が、その都度、変わるなんてものができたら、気持ち悪いとか言いようがない。やはり、相性がよければ、多少の欠点はあっても、生身の女性が宜しい。

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