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2016年5月 2日 (月)

芳澤勝弘著 『白隠~禅画の世界』を読む

平成29年は、白隠禅師250年遠諱(おんき)とのことで、妙心寺はじめ禅寺関係者にとっては、大きな催しのようである。遠諱とは、白隠禅師のような禅宗中興の祖に対して、50年ごとに、深恩に報いるためということである。その割には、禅寺は檀家に対して、そのことを十分に説明していない。形式に走り、不活性な仏教界の表れだ。

それはそれとして、白隠の書籍としては、かつて『夜船閑話(やせんかんな、と読む)』と『遠羅天釜(おらでがま、と読む)』を読んで蔵書にもある。前者は、上巻では「内観法」と「軟酥の法」を紹介し、下巻では、藩主に仁政を説いている。後者は、具体的な内観法、動中の工夫を通し、人々に具わる自性を見届けよと説く。これは外国人にも読者が多い。

さて、先日、書店で見つけた芳澤勝弘著 『白隠~禅画の世界』(角川ソフィア文庫)を読了した。白隠は、独特の禅画を多く表している。日本禅を確立した白隠は、言葉をいくら重ねても理解が及ばないことを禅画にして示した。それは一般人にもわかりやすい面もあるが、深く考察しないと理解できない面もある。

従来、白隠の禅画を面白可笑しく理解していたが、この本を読むことで、多少、白隠の禅画に込められた意思をくみ取ることができたかもしれない。参勤交代など庶民を苦しめるとして批判した白隠。現実、生きるために庶民は、いろいろ手を尽くさなければならないが、お上の不作為が庶民を苦しめる。

それを彼が言わなければならないほど当時の経済は疲弊していたとも言える。その中で、庶民をどのように救っていくか、彼は考えたのであろう。まず為政者が庶民の生活実態を把握して、変わらなければならない。それを説くために、あらゆる手法を繰り出して、軽く批判しながら、あるべき世界を説いたのかもしれない。

もちろん、すべてが政治的意味を持つものでもない。いろんな古典の中から名句を引きながら、庶民にあるべき生活の姿も指南している。例えば、北宋の政治家で学者であった司馬光(司馬温公)の家訓を取り上げた、『福神見温公語図』というものがある。

 金を積んで子孫に遺すも、

 子孫は未だ必ずしも能く守らず。

 書を積んで子孫に遺すも、

 子孫は未だ必ずしも能く読まず。

 如(し)かじ、陰徳を冥冥の中に積んで、

 以て子孫久長の計を遺さんには。

また、『七福神寿船図』の賛には、次のように記されている。

 七福の種ねは何ぞと人問はば

 まず忠孝の二字と答へる。

 奢らざれば貪ならず、

 怠らざれば貧ならず。

 仕父母孝、大黒天神

 君に忠、親に孝有る人しあらば

 みの笠もやろ槌も袋も。

若干、封建社会の考え方が強いが、このようにして人々を諭したことが窺える。現代でも、色紙等に絵を描いて、警句のような文章を添えるものもあるが、それの原型とも言える。ある人には、うるさく聞こえても、ある人には心に響く。白隠は、相手を見ながら、いろいろ工夫したことがわかる。彼が、どういう言葉を選び、あるいは創作したかは、禅寺関係者以外も注目していいだろう。

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