夏到来~何橘潭の漢詩 『春を傷(いた)む』を読む
ここ数日、日差しも強く、暑い日が続いている。春を惜しむ意味で、何橘潭(かきつたん)の漢詩 『春を傷(いた)む』を取り上げてみる。何橘潭は南宋の詩人で、何応龍のこと。
荷葉初めて浮かむ 水上の銭
柳花飄(ひるがえ)り尽く 岸頭の綿
知らず 春色何れの処にか帰す
青山に向かひて杜鵑(とけん)に問わんと欲す
「荷」とは、蓮のこと。「飄」とは、つむじ風のこと。「杜鵑」とは、夏鳥のホトトギスのこと。全体の訳としては次のようになるだろうか。
「蓮の葉が水の上に浮いて、銭が浮いているような感じ。岸の柳の綿のような花は、強い風のために悉(ことごと)く散ってしまった。一体全体、春は、どこへ行ってしまっのだろうか。山に向かって、ついに貴様の出番がやってきたかとホトトギスに聞いてみようと思う」ぐらいの意か。
確かに去ってしまうと、人間というものは、懐かしく感じるものかもしれない。その繰り返しで季節は巡る。
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