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2016年8月10日 (水)

演劇の世界の厳しさ~映画 『喝采』より

『喝采』というと、私の頭に、まず浮かぶのは、ちあきなおみさんが歌った『喝采』だ。この歌は、偶然、彼女の経験と重なったものという。だから、本来は歌いたくなかったらしい。でも、いい歌だと思う。彼女は最近は見かけないが、どうされているのだろう。

さて、映画にも、『喝采』というものがあることを最近知った。1954年の制作だから半世紀以上前のもの。演劇で生きる世界の厳しさを映画にしたものだ。それは日本の演劇界でも同様だろう。しばらく主演をはっていた俳優や女優が、いつの間にか消えていく。次から次へと若手が出てくるので、多くの人々の記憶から失せていく。そういう怖さがある。

主演は、ビング・クロスビー、グレース・ケリー、ウィリアム・ホールデン。もともと舞台劇だったらしい。かつてミュージカル・スターとして活躍していたフランク・エルジン(ビング・クロスビー)は、自らのちょっとした不注意で、子供を交通事故で失う。

その責任を強く感じ、それ以後、酒に溺れ、それが影響してか演技にも精彩がない。よって、出資者や演劇評論家の目も厳しい。ますます自信喪失し、少しノイローゼ状態。そこに、かつての彼の演劇に強い魅力を感じていた若き演出家バーニー(ウィリアム・ホールデン)から新作舞台の出演要請が入る。

彼は自信がないので一旦断るが、子供の事故以後も献身的な若い妻ジョージー(グレース・ケリー)の説得を受けて、止む無く挑戦することに。ただ、うまく行かない。バーニーに、その理由として、妻のジョージーが子供の事故以来、何度も自殺未遂を起こし、それに悩まされていると言う。

そのことに怒ったバーニーは、ジョージーに厳しく当たる。実は、これは彼の彼女への思いを隠すものでもあった。しかしながら、何回か厳しく当たったところ、フランクの言っていることが嘘で、真実がわかり、バーニーは、ジョージーに同情し、思いの枷が取れてしまい、ついにキスしてしまう。

このことがあり、彼女は、長い間、夫に愛されてなく、女を取り戻し、彼によろめく。そして舞台の方はというと、本来、心優しいフランクは、主演なのに、その名の通り、周囲に威張ることなく、気軽に脇役等に声をかけ、多少の失敗も慰めるほどなので、評判はいい。

そういうこともあり、彼は舞台感を取り戻し、周囲の頑張りもあり、段々喝采を受けるようになり、舞台は成功する。そうなると、出資者や評論家も、言うことが変わり、態度がコロッと変わる。演劇の世界は喝采がすべてなのだ。

そして、フランクは、薄々ジョージーとバーニーは年齢も近く、お互い好き同士とわかっていて、彼らに直接、今後のことは君たちで判断してくれと、静かに去る。しかしながら、貞節が強い田舎娘のジョージーは、バーニーを残し、フランクを追いかけていく。

映画の原題は、なんと、THE COUTRY GIRL だ。つまりバーニーがジョージーに強く感じた思いを題にしている。突然キスされて、少しよろめくが、自分の役割をしっかり認識して、夫を今後も支えていくと覚悟した貞操堅固な女性という意味かも。

逼塞して零落したフランクに愛されることもない妻のグレース・ケリーとキスされてよろめき女を取り戻したグレース・ケリーの落差は大きい。この辺の女性心理を、演出も彼女の表情もうまい。

それはそれとして、演劇者は大変な仕事と思う。私生活も大きく演技に影響する。自己管理だけでは済まない。家族、周辺まで含めた支えが必要。ストレスもたまると思う。それに人の評価は水物。いつまでも高い評価を受けられるとは限らない。

でも、彼らはきっと喝采の瞬間が忘れられないのだろう。どんな仕事も大変なことは大変だが、私には絶対無理(笑)だと感じさせる映画です。

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