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2017年1月 8日 (日)

エリザベート関係書籍を読んで

シェイクスピア関係の書籍の再読から始まり、かつて読んでいなかった彼の書籍も読み、あまり関心のなかったヨーロッパの歴史に少し関心が向くようになった。そこで、今回はエリザベート。宝塚歌劇や東宝のミュージカルで取り上げられている題材で、女性は詳しいようだが、全く存じ上げない人物だった。

まず、マリールイーゼ・フォン・インゲンハイム著、西田賢一訳の『皇妃エリサベート』を読んだ。これは彼女の前半生を描いたもので、史実に基づいた歴史小説。公演の下敷きになっているかもしれない。続編として、『ハプスブルクの涙』という書籍があるのだが、絶版らしく入手不可能。よって、後半生は分からず。他に、G・プランシェル=ビッヒラー著『皇妃エリザベートの真実』、とかマルタ・シャート著『皇妃エリザベートの生涯』という著作も、絶版で入手不可能。

そこで、ネットで検索して、M.シェーファー著 大津留厚監訳・永島とも子訳『エリザベート~栄光と悲劇』を入手し、大体の彼女の生涯を理解した。この本は、彼女の生きた時代背景についても記してあり、分かりやすい。訳者も書いているが、本の題としては、『エリザベートと、その時代』が相応しいかもしれない。

さて、そのエリザベート(1837~1898)は、ヴィッテルスバッハ家のバイエルン公の次女として生まれた。父親は、当時としては進んだ考えの持ち主で、絶対主義体制から、やがて民主主義の世の中になると予測し、共和制を支持していた。よって、子供たちにも、自由にさせていた。特に、エリザベートは、自由気ままに育つ。

そこに母親から、きちんとした昔風の教育を受けていた長女のヘレーネにハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフとの縁談が持ちあがる。ところが、彼は、ヘレーネに同行したエリザベートの自由さが眩しく映り、強い関心を抱き、結局、エリザベートを妻に迎えることになる。

ここからエリザベートの苦難が始まる。宮廷は、窮屈で細かな約束事に縛られる。特に叔母であり、姑にあたるソフィー大公妃とは強く対立する。自由気ままに子供時代を過ごしたエリザベートにすれば、とても受け入れられない環境だった。つまり、この感性や知性が、彼女を一生苦しめることになる。

逆に見れば、順応力が全く足りない。単に拒否するだけで、周囲への配慮も欠け、自分中心主義。それに変えようとする意欲も力も発揮していない。それは周囲から見れば、激しい感情のままに動く、我がまま、したい放題のお嬢様ということになる。時代とはいえ、それが彼女の限界であった。

別の視点で見れば、当時はハプスブルク家の衰退の終わりごろで、ウィーンは経済が勃興して人口が増え、市民社会が形成されつつあった。その中で、旧来の封建制度の価値基準に多くの矛盾が生じていたのも確かだ。そう考えれば、エリサベートは、その象徴であったと見ることもできる。

また、エリザベートは、民主化への理解は示しつつも、依然として旧体制の側にいた人であると指摘できる。それでも、変革の時代に、エリザベートは人を惹きつける魅力があった。まず美貌であったことが指摘できる。

ただ、彼女は市民社会を理解したわけでもない。あくまでも体制側の理解に限界はあった。よって頭では理解しても、行動には移していない。結局、変革期の時代が生んだ極めて複雑で数奇な運命を辿った人物と言える。それが現代のウィーンでも、人気のある人物であるようだ。その時代に生きなかったから、美化して憧れのような心情を持つのだろう。

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