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2017年6月 4日 (日)

映画『アラビアのロレンス』を観る

2017年5月21日に、米国トランプ大統領は、中東のリアドで、イスラム諸国家50か国の指導者に対して、IS掃討に関して、「これは善と悪の戦いだ。よりよい未来はあなた方がテロリストや過激派を掃討して初めて訪れる。奴らをやっつけてください」と発言したらしい。

中東の複雑な歴史を作ったのは、戦前のイギリスやフランスだ。特に、英国の三枚舌外交は、現在の中東の混乱の原因を作った。戦後は、米ソが石油資源を巡って争って介入した結果だ。そこには、イスラムの宗派の対立や部族間の対立が付けこまれた要因とも言える。

さて、映画『アラビアのロレンス』は、音楽こそロマンチックだが、その内容は、史実に基づいた戦争映画である。すなわち、当時、対立していたイギリスとドイツとの争いが中東で起こったということだろう。

オスマン帝国は、ドイツ側であったので、そこにアラブとの対立を利用し、送り込まれたのが、英国の陸軍将校のトーマス・エドワード・ロレンスだ。彼は考古学者でもあった。すなわち、インテリ軍人。

彼はファイサル一世に取り込み、アラブを英国的に理解しようとする。そのため、彼らのため(実際は英国のため)に様々な工作をオスマン帝国に対してする。それは成功するが、アラブ人は、精神的に疲労し、またまた部族間で収拾がつかなくなる。

ロレンスは、英国人でありながら、両方の立場を超えて理解しようとしたが、自身の中途半端な立場に、困惑する。それに英国の矛盾外交に踊らされたファイサルは大アラブ王国を目指していた。

そこで、アラブ反乱を指揮した白人のロレンスの存在は目障りになった。他方、英国陸軍にとっては、大アラブ王国を支持するロレンスは邪魔な存在になっていた。彼の悲劇は、以前取り上げた日本陸軍支那通と似通っている。

相手国に入り込むには、彼らを理解しなければならないが、所詮、自国の国益とのバランスで苦しむことになる。結局、誰にも信用されず、自国人でありながら、相手国人にもなれず、不安定な身分。

ロレンスは、帰国後、不幸な亡くなり方をしているが、それが彼の生涯を象徴しているように描かれている。1962年のイギリスの歴史映画で、一応、客観的に捉えている。ただし、実際は、ロレンスは、アラブのためにではなく、終始イギリスのために働いている。ある意味、この映画は美化されている。

それでも、約226分の長編映画だが、よくできたものだろう。監督は、デヴィッド・リーン。主演はピーター・オトゥール。音楽は、モーリス・ジャール。第7回アカデミー賞受賞作品でもある。若い方々も、この映画を見て、中東の複雑な事情を学習するのも悪くない。

*追記

日本の政治家が、こういう知識もなく、中東問題に対して、中途半端なコメントをするのは止めて欲しいものである。妙に中東関係者を刺激するだけで、日本には何のメリットもない。

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