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2017年8月19日 (土)

狂言『茫々頭』を読む

若い頃、髪質が固くて、朝に少し手入れをするが、毛が立つのを修正できずに、出社したところ、先輩女子社員から、「あんた、頭茫々やで、なんとかしい」と言われたことがあるが、馬耳東風で対応(笑)。そのため、その後も、いろいろ嫌味を言われた。

さて、狂言にも『茫々頭(ぼうぼうがしら)』というものがある(和泉流では『菊の花』)。登場人物は、主人と太郎冠者。そして、ほとんど太郎冠者の一人語りだ。主人に無断で出かけた太郎冠者。主人はもちろん、叱ろうとする。ただ、彼が京都見物に行っていたと聞いて、許して、都の様子を聞き出そうとする。

ここから、太郎冠者のおしゃべりが始まる。北野から祇園に向かう途中に、道端で見事な菊の花が咲いているのを見つけたので、一折折って、茫々の頭に挿していく。しばらくすると、美しい上臈が通りかかる。

その上臈から、次の歌を詠みかけられる。

「都には 所はなきか 菊の花 茫々頭に 咲くぞ乱るる」

上臈はからかったのだが、これに対し、太郎冠者は次のように返す。

「都にも 所はあれど 菊の花 思う頭に 咲くぞ乱るる」

これには、上臈も、少し感心し、田舎人なのに面白い人だと言われて誘われる。誘われるままに、祇園の野遊びについて行く。ところが、太郎冠者は入り口近くの上座に座らされたと言う。主人は、どうも話を聞くと、周りに緒太の金剛(緒の太い草履)がたくさんあったと言うから、そこは靴脱ぎだったはずと推定。

そんなことは知らない太郎冠者の前を、酒や魚を持って、どんどん運んでいくだけ。太郎冠者の方は、ほったらかしで、ちっとも接待されないことを怒り、帰ろうとすると、下女が追ってきて、「返せ、返せ」と言うので、腹立ちまぎれに持ってきた他人の緒太の金剛を返したと主人に話して、叱られる。

この狂言の面白さは何だろう。まず京都人が田舎人を見下していることだ。京都人は常に「格」を争う(位取りのこと*注)が、今回も、その例。上臈は、冷やかした歌を相手は分からないだろうと思っている。ところが、案に相違して、太郎冠者は歌を返した。

そこで、誘いをかけて試してみる。案の定、田舎者の太郎冠者は上臈の真意を理解せず、のこのことついて行く。そこで、冷たくあしらって、分からせようとする。ところが、太郎冠者の方は、もてなしとはどういうものか知らず、上座と勘違い。

漸う上臈の誘いが嘘だったと気づき、腹立ちまぎれに、他の客の緒太の金剛を持ち出して、下女と大騒ぎ。要するに純朴な田舎人と、いけずの京都人の対比を狂言にしたものと見える。

*注

京都人はプライドが高いので、相手より常に上位であると思いたい。仮に、トータル的に相手の方が優れていても、相手の欠点・弱みを探し出し、自らの優位性を確認する。

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