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2018年10月15日 (月)

利発な子ども~狂言『伊呂波』

最近、ノーベル賞を受賞された日本の学者(*注)は、子どもの頃、先生に納得いかないところは、いろいろ質問して、困らせたそうだ。教師より詳しく賢い生徒というのは、なかなか厄介な存在だろう。

狂言にも、利発な子供が父親を言いくるめるものがある。それが『伊呂波』だ。子どもには、教育を授けたいと思うのは親としての気持ち。成人した我が子を寺に預けて勉強させようとする父親に、子は必要ないと言う。

そこで、「白いものは何か」と子に問うと、「鷺」だと答える。では、「黒いものは何か」と問うと、「烏」と答える。それではと、いろは四十八文字を教えようと思い、「いろはにほへとちりぬるを、、、」を吟ずると、子は、一文字ずつ、教えてくれという。

ここまでは順調(笑)。そこで、親が「い」と教えると、子は、「燈心」と答える。なぜだと言うと、「藺(い。いぐさのこと)を引くと、燈心が出る」(藺草の髄を燈心にしたことから)と言う。まるで、一休さんの頓智。

次に、「ろ」を教えると、子は「櫂(かい)」と答える。また、なぜだと問うと、「船には櫓櫂がある」と言う。これも頓智、更に進んで、次に「ちり」を教えると、「お座敷に塵があるので、掃き集めて火にくべろ」言う。これでは、まるでなぞかけ。

親も呆れてしまって、「そういうのは走り智恵と言って、何の役にも立たない。ちなみに、「走り智恵」とは最近は、あまり使わない言葉だが、『広辞苑』に次のように示されている。すなわち、「はしりぢえ。先走りするちえ。物事をはやのみこみして考えの浅いこと」とあると。

そして、父は子に、口写し(言う通りに)で覚えろと命ずる(*注2)。ところが、子の方は、親が叱る言葉まで、覚えて、そっくり言い返す始末。最後には、腹を立てて怒る父親の口調まで真似る。ついには、父親は、子を引き倒すが、子も、それを真似て親を引き倒す。

まあ、このような子どもは、いつの時代にもいる。ああだと言えば、こうだと言う。大人になっても、それが抜けきらない人もいる。でも、子ども時代の基礎知識は、無条件に受け入れる方が賢明なのも確か。

将来、ノーベル賞を受賞するような子どもは、稀だ。稀な人が、その精神を続けて、成果を上げる。だが、一般社会では生きにくい。自分の子どもに、それを期待してはならないだろう。

*注1

映像から受ける、この学者のイメージは不遜に映る。それは彼の妻の様子を見れば分かる。もちろん、偉い先生には違いないだろうが、実名は記さない。世間ずれしてないとも思えないが、製薬会社と、いろいろ揉めているらしい。人間的に、あまり好きになれないタイプだ。もちろん、実際のことは分からない。

*注2

ちなみに狂言の世界は、口写しで教える。

*追記

以前取り上げた同じく狂言の『察化』と展開が似ている。

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